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竜の眠る村4 女騎士の実力

「行こう。アイツより先に家に帰る」

「いえ、あなたはここで待っていてください。危険です。」

「危険がなんだ!家族の危機なんだ!」

「分かっています。ですが、アル殿は戦闘は素人。正直足でまといです。」

きっぱりと彼女は告げた。

「なっ」

「それでも行きたいですか?」

「あぁ、行く!行かせてください!」

「分かりました。…条件があります。時間が惜しいのでお家に向かいながら話をしましょう」

ララさんにもいくつかの品を渡して、俺の案内で最短ルートで家へ向かう。スライムは肩に乗せた。

「アルフォンス殿、道すがらあなたに簡単な魔法をかけようと思います。移動しながら聞いてください」

「?」

「相手が魔法を使う以上、生身のままでいるのはあまりに危険です。」

「いや、おれ魔法の訓練なんてしたことなくて」

「大丈夫です。特殊な例を除けば魔力がない人間は稀有です。大なり小なり魔力はあります。この魔法はただ魔力を纏うだけです。それだけでも生存率はあがります。騎士はこの技を筋肉や神経に意識させて、超人的な動きをします。が、そこまでは求めていません。わたしの魔力であなたを包みます。…魔身(マジックブースト)。このまま物陰で隠れていてください。」

彼女が俺の肩に手を触れて呪文をささやく。

なにやら重さのない水に包まれているような不思議な気持ちになる。肩にいたスライムは魔法に弾かれてしまい、俺にさわれないようだった。

「おぉ」

「魔力をもつものに作用します。魔物もそうですね。隙をみてフィーネさんやお父様に触れてください。そしたら、この魔法は触れた相手にも作用します。私が多少暴れても大丈夫でしょう。お二人の救出を頼みましたよ」


庭に縄で縛られた親父と女の子がいた。親父は静かに目を閉じており、フィーネは震えていた。

「野郎…」

2人の前には腕組みをした女とその子分の男が1人いた。2人は何やら会話をしているようだった。

「ほんとに来ますかね」

「やつは騎士だ。もしも民衆を見捨てるようだったら、騎士の名折れだぜ。」

「あの嬢ちゃんがお前たちの狙いなのか。俺たちは関係ないだろ。解放してくれ。俺はただの鍛冶屋だし。そこの女の子はただの村人だ。」

「まぁまぁそーゆーなって。おれらだって。こういう事は性に合わないんだ。だけどよ今回の仕事はミスができねぇ。より確実な方法をとらせてもらうぜ」

「ただの鍛冶屋?よく言うわ。だってあんたは……」

言いかけた矢先に、女は振り向く。

「騎士団攻式二の陣、鋭槍!」

剣を抜き、ララさんは飛び出した。

「マジックブースト」

魔力を足に集め急接近する。

「おいでなすった!!」

髪の長いリーダー格の女は、直ぐに気づくと、ホルスターから二丁の拳銃を抜いて、応戦する。ララさんは弾丸を鞘と剣で弾き、距離を詰める。

「ジャン!油断すんなよ!!相手は団長クラスだ!」

「姉御!分かってやす!重力(グラビティ)!」

男が手をかざすと、ララさんが後方に吹っ飛んだ。


見張りが戦闘に参加した隙を見て人質の二人がささやきあう

「た、助けかな。おじさん、助けが来たよ。あの騎士様、わたし、昨日助けた騎士様だ」

「フィーネ、いつでも逃げれるように準備しとけ」


「うぉ!なんだ!」

山道を先程の男が走って表れ、合流する。

「遅いよ!ケン!」

「あ、アイツ!先回りしやがったのか!姉さん!!こいつら!妙な道具使います!気をつけて。一人百役(ぼっちーず)!!」

20人ほど同じ顔の男が現れる。

「騎士団攻式三の陣、兜割り」

ララさんの構えが変わる。腕に魔力を集め、豪快に分身体を一撃で沈める。一斉に襲いかかる男たち。

「騎士団守式三の陣、笹舟」

鞘と刀を二刀流のように持ち、全身に魔力を流す。攻撃をいなし、かわしつつ、次々に足や腕を突き刺していく。突き刺された分身体は消えていく。

「ケン!きばりな!」

二丁の拳銃を連射する。ララさんは鞘で弾き、左右に動き、狙いを外す。

「ちっ!」

女は全弾を打ち尽くした。カチカチと音のなる銃。


「……すげぇ」

物陰から見ていても分かる。ララさんは強い。自分が足でまといと言われたときはカチンと来たが。

でも、こんなにつよいララさんが、一度負けてるのか。

「弾が切れても、魔力があんのさ!」

彼女が引き金を引くと、さきほどまでとは違う発砲音とともに、ララさんの身体が大きくのけぞる。肩に被弾した。

「魔法弾!?」

「オラオラオラオラ!」

鞘が弾かれ、装飾の宝石が、弾け飛ぶ。威力が違う。

「…貴様」

?なんだ。ララさんの腕から、黒い煙のようなものが出てる?


「おいっ!こっちを見な!」

「ひっ」

銃口を人質に向ける。

「…突槍!!」

構わず突貫するララさん。踏み出した足は大地に大きな踏み跡を残す。

「ちっ!」

一陣の風のあと、彼女の首先には剣が向けられていた。

「…あたしらの負けだね」

彼女は拳銃を離し、両手をあげる。

「そうですね」

そして、そのままララさんは剣を突き立てた。

「か、ひゅ」

「姉さん!」「姉御!」

一定のリズムで血が噴き出す。子分たちが首を押さえるが、血は止まらない。


「えっ?」

「なにを驚いているのですか?さ、早くお二人を助けてください。」

草むらから出たが、目の前の光景が信じられなかった。

「あ、アイツに戦う意志なんてなかった。なんで」

「そうですね。…彼女の弾丸が当主様から頂いた剣に傷をつけた、からですね」

「それだけで?」

「えぇ、万死に値します」

ララさんは変わらぬ柔らかな笑みを浮かべながらいった。なにか違和感を感じる。黒いモヤがララさんを包んでいる。

「おぃ、馬鹿息子。その女から離れろ。甲冑で外からわからないか?その女の腕は呪われている。()()()()()()

親父が言っていたのはそういう意味だったのか。

「失礼な言い方ですね。呪いではありません。愛ですよ。当主様からの愛です。」

彼女が腕の部分の鎧を外すと、呪符の刻まれた包帯が巻かれた腕が現れたのだ。親父が腹立ち気にうなる。

「ナルシ家と聞いて、嫌な予感はしていたが。倒した相手の力を奪う魔具。大方、移送中の騎士を殺して、その技と甲冑を奪ったんだろうよ」

ララさんが?そんなことを?まさか!

「さすがに王国騎士を相手取るのは骨が折れましたが、手に入れたものも大きかった。当主様へ感謝です」

彼女はうっとりとした表情で言った。

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