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龍の眠る村3 発明少年と一人百役

「く、私がついていけば、良いのだろう。この子は関係ない。」

 後ろ手に縄で縛られる俺たち。

「ガキがいっちょ前に刀なんて持ちやがって。これはいただくぜ」

「あ、返せよ!それは、おれがコツコツ作って売った金で買ったんだ!」

「うるせーよ」

「ぐっ」

 思いっきり殴りやがった。口の中に血の味が広がる。

「姉御によれば、あのオッサンも口が堅いらしいからな。息子を見せれば考えがかわるだろうよ」

 ララさんは人質を思って、観念してるようだが、俺は違う。

「……おじさん。うんこ踏んでるぜ」

「あ?」

「ララさん!目を瞑って!!」

 下を向いた男。右の踵を素早く2度地面に押し付ける。カチッという音。

 つま先の中に仕込んだゲキコウホタルの発光成分が混ざりあい空気にふれて、ものすごい光を放つ。

「うぉ!目が!」

「こっち!!」

 腰の小瓶を2つ取り出して、栓を抜く。片方の水を注ぎ込むと大量の煙が吹き出す。メカクシ大ヤモリの鱗に水を与えると大量の煙を吹き出す。

「煙幕だ」

 ララさんの手を引いて、森の中に入っていく。この辺りなら、たしか。小さな池の近くの秘密基地へ向かう。

 フィーネと遊びながら作った場所が森の中にはいくつかある。ここには、工作道具や試作品などがある。ナイフを取り出し、互いの縄を切り、使えそうなものを片っ端からカゴやポケットに詰めていく。その手をつかんで、止められる。

「なんであんな無謀な真似をしたんですか」

 ララさんは怒っているようだった。

「何も言わず私を差し出していれば、あなただけでも逃げれたでしょうに」

「ララさん!あんたはまっすぐすぎる。あのまま連れていかれて、大人しく親父やフィーネが解放されるとでも?」

「それは」

「急いで親父のところに戻って、フィーネや親父を助けないとアイツが100人もいるなら勝ち目はないけど、ララさん仲間を呼んでください。おれができるだけ時間を稼ぎますから」

 しかし、ララさんは首を横にふった。

「この辺りには騎士団の駐屯地はありません。私も一緒に戦います。」

「でも、2人だけで」

「100人も相手する必要はおそらくありません。アルフォンス殿は魔法使いと戦いをされたことはないでしょう」

「えぇ、まぁ」

 せいぜい村の子供とのけんかくらいだ。

「魔法使いとの戦い方はまず、相手に魔法を使わさずに制圧するのが基本です。あの手の魔法は魔力の消費が激しい。大量の魔力があるようには見えませんでした。おそらく我々を拘束したら、魔法を解除していたはずです。2つ目は相手が魔法を使いはじめたら、敵の魔法陣を破壊することです。魔力を魔法陣に流すことで複雑な魔法を使えることが多く。杖にはたくさんの魔法陣が刻まれています。だけど、今回のケースでは杖はありませんでした。おそらく彼のバンダナかなたに魔法陣が刻まれているでしょう」

「なぁ、そこまで分かっているなら、もしかして、おれがやらなくても」

「えぇ、まぁ、その、捕まったあとに、人質の場所を確認して」

 余計なことしてしまったのか。俺は。

「えっと、まぁ、あ、そうだ。さきほどの閃光と煙幕は凄かったですね。あれも、発明品ですか?」

「えっと、まぁ、こっちの靴のほうはともかく、カクシヤモリはただのモンスターの習性です。洞窟で素材が取れないと作れないので数はありませんが。」

「洞窟?」

「え、えぇ、うちの裏山が鉱山になっていて様々なモンスターの素材が埋まってるんです。」

「洞窟でモンスターの素材が埋まってる?そんなことがありえるんですか?」

「え?でも、親父や皆は鉱山で採れた鉱石や素材で刀を作ってて。それが普通だと聞いていますが」

 なんだ。ほかの地域では違うのか。

「ん、なるほど噂は本当だったんですね。私がこの辺りに来たのは、その噂の真偽を確かめにでして。この地は、15年前の勇者様が、七大魔王が一角、『暴食龍』を討伐された場所でもありますし。ありえなくは無いと。この1件が片付いたら、是非その洞窟を案内して頂けますか?」

「え、えぇ、いいですよ」

 なんだなんだ?勇者?魔王?どうしてそんな話が出る。親父たちはなんで、俺にその話をしてくれなかったんだ。

「くっ!魔物め!こんなところにもぐりこんで」

 現実に意識が戻される。

「あ、待って!そのスライムは味方です」

 フィーネによく懐いていたスライムが、そこにはいた。彼はフィーネがよく座っていた場所に潜り込んでいたようだ。

「アル殿離れて!其奴は魔物です!」

「ララさん大丈夫です。もう10年近く一緒にいますけど、襲われたことなんて一度もないんですから。お前も一緒にくるか?」

 俺は手を差し出した。スライムが腕をつたって肩にのる。ひんやりとした感触がのこる

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