表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/34

5

馬車に揺られる中、アルフォンスは自分の中に違和感を感じた。

急激な眠気を感じ、そのまま意識を失ってしまった。

「小僧、目を覚ませ」

声をかけられ、目を開けると、目の前にドラゴンがいた。

「お前、グラドか?」

「姫の身が危ない。なんとかしろ」

「そうは言っても、馬車で最速で飛ばしているんだ。これ以上のスピードは出ねーよ」

「貴様が、もっと我の力を引き出せていたら、空を飛べたのに、」

「そんなことできるのか、なら、やってくれ」


「辞めといたほうがいいぞ」

「だれだ、ってあんたさっきの!どうしてここに」

「まぁ、まぁ、お前のスライムに食われたんだ。仲良くやろう。もはや、敵意なんてねーよ」

先程の妨害してきた冒険者だ。

「おれはローゼ。これ以上魔人化を繰り返せば、自我を失うぞ」

「自我を、失う??」

「ちっ」

「あぁ、俺をやった時、半身がほぼ魔人化してた。つまりは、もうお前の体の半分近くは、その龍が主導権を握ってんのさ。あと、もうすこしの解放で、お前とその龍の立場は逆転する」

「おいおい、ぽっと出の分際で何を適当なことを」

「さっきの魔人化。坊主。てめぇの感情のぶれもあるかも知れないが、想定以上身体が魔人化してだろ」

「たしかに」

腕だけを使うつもりが、半身が暴食竜となっていた。


「勝てたか。腕だけの力で。こいつは、強かったぞ。」

「あぁ、そうだ。俺は強い。あのコロシアムの町で竜の称号を得るくらいには強いさ。まぁ、カリカリすんなよ。暴食の魔竜。あんたは姫さんを助けたいんだろ?おれはむしろ、あんたらの協力者さ」

「協力者?」

「あぁ」

彼はアルフォンスの魔手甲を見た。

「その家紋。いや、マークに縁があってな。勇者の、仲間に……あぁー。助けられたことがあるのさ」

「なる、ほど」

「お前の記憶を覗かせてもらった。暴食龍、デュラハンの剣技、コロシアムの体術、暴食龍の胃袋にあった様々な魔物の残骸、お前の創作意欲と刀鍛冶の里の技術。全てを繋いで消化し昇華してやる。お前はひとつひとつを懸命に磨いてきたようだが、個々にバラバラな力として使ってんのさ。だから、強さにムラがあんのよ」

「どうして、いや、どうやって。」

「コロシアムの体術に剣技を加えれば、威力は高まるし。その辺の《最適化》は俺の得意とするところさ。なにせ、俺はこの力で魔王と。いや、時間が無いんだったな。お前の学んだ全てをひとつにする。デュラハンの足運びの際に、マジックブーストをかけて、つま先に魔力を集中しながら地面を蹴ってみな」

訝しげながらもやってみる、と。

「うわぁ!」

その場ですっ転んでしまった。だけど、

「ものすごく跳んだな」

暴食龍は面白なげに評価。

「上手くコツを掴めよ。少年。ここは精神世界。ある程度融通はきく。お前が1人じゃなくて、2人いて、それぞれが修行できたら、どうする?」

「それはすごいことだけど」

「そうさ。半身がスライムになりかけのお前なら、イメージできるんじゃないか?自分を増やすイメージだ。」

次々とアイデアを出す男。暴食龍は複雑な気持ちでそいつを見ていた。魔王を次々と倒していって人類の英雄になった男。自分と相打ちになったこの男。この場にいるということは、そういうことなんだろう。こいつは人間の姿をしてはいるが、かなり魔物に近づいている。

「おい、ゆう……」

言いかけた言葉を奴は制しし、にやりと笑って、自分の足を指さす。さらさらと、足先が砂のように崩れていっていた。

「わずかな時間、付き合ってもらうぜ。あんたらには、静かに暮らしてほしかった。その想いは変わらない。だから、おれの分身にかける。」

この言葉は暴食龍の頭に響いた。アルフォンスには聞こえていない。

「なるほど、そういうことか。」

奴のない片腕。スライムによる分身体。記憶を失った勇者。アルフォンスの本体は。

「これ以上の推察は野暮か」





「失敗は出来ない。もう、俺様には後がないんだ!!」

屋敷での戦闘は壮絶を極めていた。飛び散る骨。散った無数の骨がさらに攻撃を仕掛けてくるしまつ。

「なんで、あちらが、焦ってるのでしょうか。焦りたいのはこっちなんですよ」

「100パーセントが打てない、な☆ララどうにかならないか」

防御に魔力を回している分、マズルはイライラしていた。

「なんで、この骨の礫をよけれてるんですか。変態ですか」

呆れながらも、同意した。ララも魔力で鎧を強化していたが、このままでは、無駄な時間が経過してしまう。

「マズルさん。賭けに出ます」

「お!秘策かい☆」

「いきます」

義手の各所に散りばめた魔石を核にして、魔力を練り上げる。さらに練り上げた魔力を大剣に纏わせる。

「突撃槍!!改!!」

そのまま大剣をぶん投げる。

「おらあああああ!!」「力技かい?!」

「なに!!くそっがあああああ!!」

瞬時に骨を集結させ、防ごうとするが、威力が高く、次々と骨の壁を突破していく。

「お情けでナルシ家に入った下女の分際で!!舐めるなぁ!!」

骨の壁を何重にも重ね、クッションのようにして、衝撃を殺す。

大剣はフォースの目の前の最後の骨の壁を前に、地に落ちる。

「はっ!所詮下女!」

「女性に向かってその言い方は失礼だ。……彼女はすごいぞ!!君の一瞬の隙を作ったのさ!!!」

その声はすぐ目の前、骨の壁1枚隔てたところから、聞こえたのだ。

剣闘士(グラディエート・)(バスター)!!」

轟音と共に解放された魔力が四男を襲う。

「くそっ、がぁ!!」

身体をねじり、直撃をかわそうとする。衝撃が来る右半身に骨の鎧を集中させる。これなら、致命傷にはならない。ここさえ乗り越えればやつらは、魔力切れを起こすだろう。

「俺様の、勝ち……」

その首筋には、黒塗りの刃。

「ナルシ流暗殺術。朧突き」

音に紛れ、ララは距離を詰めていたのだ。鮮血が飛び散る。

「かひゅ」

「あなたたちの元メイドより、伝言です。『クソ喰らえ』」

「か、かは、ばかに、する、な、」

「ララ!離れろ!!」

取り出した瓶を一気に飲み干す。

「ナル、シ家に失、敗は、ない。『餓者餓者髑髏』」

全身を食い破るかのように、骨が溢れ出す。

「マズルさん!」「ララ!」

2人が同時に叫ぶが、骨が触れ合う音に、かき消されてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ