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「フィーネさん……」

「はぁ……。変な魔法を使うやつだったな。ま☆フィーネちゃんには悪いけど、アルフォンスは気絶しているし、僕はこのまま旅に出させてもらうよ」

「な、助けに行きますよ」

「あいにく僕は彼女に対して命をかけるほどの義理は無いよ☆あの男の魔法はやばい。」

「見損ないました、マズルさん!」

「どうとでも言えばいいよ☆」

彼はゆったりと伸びをする。

「そんなに弱い方とは思いませんでした。」

「…………うん?」

彼のストレッチの手がとまる。

「弱くて臆病者であんな、優男に負けてしまうのが、コロシアムの最強なんですか?」

ぴきぴきと笑顔の額に青筋が浮かぶ。

「ララって言ったっけ☆そのやっすい挑発に乗ってやるよ……覚悟しとけよ」






ある屋敷の食卓にナルシ家の兄弟が集まって食事をしていた。カチャカチャとナイフやフォークの音がする。長男があっけらかんと笑った。

「フォー。お前の尻拭いしといたぞ。魔王の娘も確保したし、あのララっつう面汚しも、釘をさしておいた。」

「あ、兄上ありがとう、ございます、ひっ」

彼の頭のよこにナイフが刺さる。

「ナルシ家の人間を無闇に増やしすぎなんだよ、父さんは。僕らみたいに、勇者の血がちゃんと流れてないと、認めるべきではない。そうだろ?フォー。こんど、お前が自慢してたコレクション見せてくれよ」

「は、はい……」

「勇者は強い。かっこいい!無敵だ!最高だ!そんな我らこそ、この国をまかされるべきだろう。……だから、次は失敗とか許さないからな」

彼はフォークを弟の目のすぐ前まで突き刺そうとする。

「は、はい!!」

「それでよし!あ、リースはよくやったな!叔父さんの仲間を捕まえたんだ!」

うんうんと頷いた。

「That's Right!大戦鎚は逃がしましたが、エルフの方はなんとか。やはり、魔王の研究の成果ですね!POWERFUL!ねぇ!my sister!」

食事をしつつも、手元にあったノートに次々と数式を描いていた女は、うっとおしそうに手をふった。

「静かになさい。まだまだ遠いわ。2人ともまたレポートお願いしますわ。エルフは色々な魔法を知ってますわよね。少しお借りしても?」

「Of course!」

「我々の計画もかなり、いいとこまで来てるからね!父さんから手紙を預かった。各自しっかり目を通すように」

彼らはテーブルにあったろう付けされた手紙に手を伸ばす。

「さて、仕上げといこう!」




「フィーネ!!」

アルフォンスが目を覚ましたのは、かなり、日が昇ってからだった。どこかの部屋の一室のようだった。

「……歯ぁ食いしばりなぁ!!」

ドスの効いた声の後に顔面に衝撃。鼻から血があふれだす。

「あがっ!!」

「ちょ、姐さん!!」

「抑えて抑えて」

冒険者の3人組だった。挑発の女の両脇を2人が必死に止めている。

「おい、アルフォンス。ちょっと部屋の外にいてくれ」

「姐さんと話すっから」

「てめぇ!フィーネをまんまと、カッ攫われやがって!!なにしてやがんだ!!」

どくん。フィーネが、攫われた。

「アルフォンス!!早く部屋出てくれ!!」

「ほら、行った!行った!」


ドアの外で壁にもたれ、そのままズルズルと床に座り込む。

「………グラド。フィーネは無事か」

姫は、特殊な結界の中に居るようだ。我の片割れの反応もたどれぬ。

「……責めないのか」

責めてどうなる。虚ろな貴様を責めても気は晴れぬわ。


ジャンとケンさんがポンさんをなだめてくれたようだった。あの後の話を聞き、フィーネは連れ去られ、ララさんとマズルは、フィーネ救出に出発したようだった。俺をこの3人に託して。マズルとポンさんは幼なじみらしい。

「なんで、おれはここに」

「……足でまといになるからだってよ」

ポンさんの一言が胸を重くした。

「で、お前はどうするんだ」

「どうするったって……俺は……弱い、し、」

「てっめぇ!!」

また、熱くなったポンさんを必死に抑える。

「待て待て待て待て、アルフォンス。てめぇはその程度のやつなのかよ」

「……あぁ、あぁ!そうだよ!」

「ちょっとばかし、喧嘩に負けて、仲間から見限られて、その程度で、てめぇは折れちまうのか」

「何がいいたい!コロシアムの戦いを見ただろ!!フィーネもララさんも強い。当然マズルもだ。あんな強いあいつらが、手も足も出なかった。俺が行ったところで、フィーネは、帰ってこない……」

「……おい、ジャン。はなせ。」

「姐さん放したら、アルフォンスをぶん殴るでしょうが。」

「……てめぇはフィーネがどんだけ、無謀なことをあの小さな体で頑張ってきたか分かってんのか!」

「あいつには、才能がある……」

「……フィーネは、んなこた言わなかったぞ。マズルに挑んでは負け、挑んでは負け。最後の一瞬まで挑みつづけたさ」

「見てたさ」

「いいや!お前は見てねぇ!あのコロシアムの1幕だけじゃねぇ!てめぇら一人一人が、修行してたとき、あの1週間、マズルに挑み続けた!だから、あいつは、フィーネを認めた。あの口下手で、本心を見せないマズルがだ。」

「フィーネが、マズルに、挑み続けてただと」

「たった1度負けたくらいで、力の差を感じたくらいで諦めるなんて、お前らしくもない。いいか!アルフォンス!お前がフィーネを思っているように!あいつもお前を想って戦ってたんだ!」

「っ!」

「弱い?才能がない?黙ってろ!いま、そうじゃねーのなら、あいつに、フィーネに、恥ねーような!強い男になってみせろよ!アルフォンス!!」

ポンさんは掴みかかっていた手を下ろした。


「…………ポンさん、力を、貸してくれない、ですか」

「たりめーだ!かわいい弟子を取り返す。」

「当然俺たちも力を貸すぞ、アル!」

「……ありがとう、みんな。ララさんたちを直ぐにおいかける!!」

すぐに旅の荷物を掴んで、町を出る。目指すは北!スライムの反応が消えた北方を目指す


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