10 コロシアム予選
ついにコロシアムが開かれる日。あのお爺さんが現れて一言。
「ずいぶん可愛がられたようだね」
「どこがですか!」
ずいぶんとどつき回されたね。の間違いじゃないか。
「痛っ!」
振り向くと、地下のトレーニング場にいた剣闘士たちがいた。彼らも午後に行なわれる本戦に出場するため、出で立ちが違う。
「いやいやアルフォンス殿の頑張りに皆が答えた。みんなありがとう。今日の打ち上げはここにいる彼の奢りだ。」
「は、ちょ!」
剣闘士たちの歓声があがる。
「なんてこと言うんですか!」
「優勝すれば賞金が出る大丈夫だよ。君はなんのために戦っているのかね。金のためか」
「違います!違いますけど。ちゃんとマズルを倒したら、修行してくれるんですか?」
「ん?修行なら、終わっているさ」
「はぁ?」
「日常を修行とせよ。マズルの言っていたことだ。修行を修行と思うなかれ、常に実戦の中で真価は磨かれる。剣闘士たちのお陰で君はずいぶん戦えるようになっただろう?」
おじいさんは楽しそうに言った。
「ただ、内に眠る力に気をつけなさい。アルフォンス殿の活躍を楽しみにしているよ」
おじいさんはそういうと去っていった。
この1週間それぞれの場にいたため、ずいぶんフィーネやララさんに会うのは久しぶりな気がした。物思いにふけっていると背中を思い切りぶち叩かれた。
「行ってこい!若僧!負けたら容赦なくぶちのめしてやるからな」
「グァッハッハ!結局全員とやり合ったとは大した玉だぜ」
「だが、あんなものを召喚札に入れて喜ぶとはお前もかわりものだな。こちらとしては雑用が1つなくなり助かったが」
「予選を通過すれば、俺たちのいる本戦に上がれる。マズルを倒すのは俺だが健闘を祈るぜ」
彼らと会えてよかった。俺は学んだことを胸に会場に向かう。
「教えてもらった召喚札!上手く使いこなしてみます!」
コロシアムの受付ロビーにつくと、1週間前にみた観客口とは違い、殺伐とした雰囲気。思わず生唾を飲み込む。この町の見習い剣闘士、異国の剣士、怪しげにぶつぶつつぶやく魔術師。ざっと20人ほどこの場にいた。
しばらく受付で待っていると、フィーネがやってきた。こちらを見ると嬉しそうに笑顔になって手を振っている。俺も久しぶりにフィーネと会い、手を振ったが、後ろに立つ男に若干顔がひきつる。
「フィーネちゃん!最後の1発までよく頑張ったね!諦めない心が大事なの、さ☆トーナメントで待ってるよ☆」
ウインクをするマズルにたいして
「はい!頑張ります」
「けっ、なんだか、嬉しそうだな。フィー」
「?アルに会えて嬉しいよ。マズルさんめっちゃつよくて、1発しか当たらなかったよ。次こそは当てる!」
やる気を見せるフィーネ。なんだかモヤモヤするな。俺の心臓のスライムも気が気でないようだ。
な、なんだ。あの男は馴れ馴れしい。
姫をあんな風に、ちゃん付けだと
「ほら、行こうぜ、フィー。」
「あ、ま、待って」
トテトテとフィーネはついて行く。そんな2人を送り出すマズルをポンは意地悪そうにつっつく。
「かっこつけてんなー。回復弾ぶち込んでやるから医務室にきな。」
「ははは。さすがに見抜かれてるか☆」
「なーにが最後の1発までだ。普通何発も銃弾うち込まれて平気な顔してるほうがおかしいからな」
「いやいや《マズル》はそんなことでは倒れないのさ☆今日僕は父を超える。父の成し遂げれなかった100勝を飾ってね☆父の墓前に報告するのさ。今日で来るのは最後になるよ。次のマズルは俺だってね☆」
彼はウインクをした。
「これは坊ちゃん。こちらにいらしたのですか」
向こうからやってきたメイドは裾をつまんで挨拶をした。
「やぁ、ルル。君のいない地下は殺伐としたものだったさ。やぁ、ララちゃん。彼らは今受付にいるよ」
「ありがとうございます。お世話になりました。ルル。お陰でこの腕を使いこなせそうです。」
「お気をつけて。まさかあなたがコロシアムに招待されるなんて」
ララとルルが手元に届いた招待状を見て驚いていた。なんでも、この町に来た時に受けた試験で優秀な成績を収めたためと書かれていた。
「正直こういったものは得意では無いのですがこれからの路銀に優勝賞金を使うことができたら皆さんのお役に立てるかもしれません。」
握手を交わして別れたララもアルフォンスたちと合流した。
「ははっボロボロだな。お互いに」
「わ、わたし、だいぶ強くなったよ!ララさんもその腕素敵だね」
「ありがとうございます。だいぶ上手く使えるようになりました」
「よし!じゃあいこうか」
『さあ!やってまいりました!マスルリア名物コロシアム!今回のルールはバトルロイヤル!!立っているものが1人になるまで試合が続きます。場外か戦闘不能になるか。予選には28名の猛者たちがひしめいております。大金と栄誉を勝ち取るのは誰だ!!しあーい、開始!!』