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私の心臓(ハート)はスライムビート  作者: お花畑ラブ子
剣闘士の町マスルリア
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 採寸をして二日後。2人は義手を取りに来た。無骨だった部分も丁寧に塗装されており、艶やかな光沢が朝日を浴びて輝いていた。

「これは、また不思議な感覚ですね。腕が蘇ったような。しかも、これって」

「体にきちんと合うよう調整しなければ、なかなか馴染みません。逆に身体のバランスを損ねたりすることもよくあります。腕は保証いたしますよ。気づかれたように、触覚も伝えれるようになってます。」

 ララは義手で様々なものを触り、その感覚に静かに涙を流した。

「えぇ、驚きました。」

「義手の扱いについては既に教えてある通りです。ここからは実際に体を動かしての実践いたしましょう」

 そう言うと彼女はスカートの裾をめくり上げた。彼女のスカートの中には、たくさんの武器が収められていた。その中から彼女は2本の短いナイフを取り出した。

「日常生活をおくれることと戦闘はことなります。一瞬の遅れが命とりになりますゆえ、今から、組手を行うことにしましょう。」


 闘技場内。マズルのプライベートルーム。見るも巨大なバーベルでマズルはリフトアップをしながら、話しかける。冗談みたいな大きさではあるが、彼はゆっくりと持ち上げる。

「27....フィーネちゃん。そろそろ28.....君があの時に出した砲撃が....29......自在に出せるようにならないとね☆30.....ふぅ」

 マズルの元で修行を始めて丸2日経った。あの壁を消し飛ばした一撃はあれ以来出ていない。

「フィーネ。護身のためなら、もっといい方法があるだろうによ。」

 半ばあきれたように呟き、彼女に調整した魔銃・赤鷲を渡す。

「いつでもどうぞ☆」

 笑顔のマズル。試行錯誤を繰り返し、様々な戦い方をぶつけている。マズルは彼女の戦いのセンスはまだ荒削りながら、認めていた。

 フィーネは両足にスライムを纏わせて、何やらブツブツいいながら、銃を構えていた。

「反動を抑える、魔力を鋭く絞るように、スライムくんたちと呼吸を合わして、意識をわけて」

「……君の力を存分に解放して大丈夫だよ。俺は死なない。遠慮することはないんだよ☆全力で来な!遊ぼうぜ」

 両手を広げる

「変に煽んなよ。フィーネ、この戦闘バカのいうことなんて」

「………全力」

 今でさえ全力だと思うのだが、彼の眼には何が写っているのだろう。

「君は優しい。あの少年を慮っているのだろう。彼には悪いが、役不足だ。……弱い。君の稽古には僕みたいな強さをもつ者がふさわしい☆」

 フィーネはめらりと心の奥底が揺れるのを感じた。

「……アルの悪口を言わないで……」

 銃が魔力にあてられ、カタカタと手の中で暴れるのをしっかり握り、マズルを睨みつける。

「言わないで!!」



 コロシアムの地下では命懸けの鬼ごっこが繰り広げられていた。4本の剣が過ぎ去る。

「ふんぬらあああ!!」

 生傷の数が数え切れない。

「ヒャッハーアルフォンス!今日こそてめぇは血祭りだぜ」

「いんやああああ!!」

 たくさんの剣闘士に追い回されて俺はこの2日間どつき回されていた。


 そんな様子をトレーニングをしつつ、横目で見ている者がいた。現役の剣闘士たちだ。彼らの中でも話題になっている。


「グァッハッハッ!若さは取り柄だな」

 豪快な大柄の男は嬉しそうに言う。

「どうだ、新入りは」


「まぁ、ただのガキだにゃ。良くも悪くも。よく逃げ出さないにゃ。まぁ、なんでも女の子を守るんだって昨日は言ってましたけどにゃ」


 頭に猫耳を生やした少女。いや、少年。どちらにも取れる中性的な彼(彼女?)は言った。

「女を守るぅ?剣闘士をバカにしてるのか?ぶち殺してやりてぇ」

 仲間の剣闘士は嘲る。

「グァッハッハッ!いやいや、見所はあるぞ。タフじゃねーか?2日前から追い回されてんだろ?それ以外ただの召喚士見習いって感じだが。うちの見習い剣闘士どもは何人かバテてやがる。」

 大男はやれやれとため息をつく。


「興味はないな」

 静かに語った男は逃げ惑う子供にたいして、それ以上の興味はなく、黙々とトレーニングを続けた。


「なっちゃいねぇ、なっちゃいねぇ。マズルを倒すなんて息巻いちゃいるが、よぇーのなんだの」


「……」

 コロシアムの名闘士の1人。

「おい、馬鹿ども。やめろ」

 アルフォンスを追いかけまわしていた集団はあっという間に静かになった。

「あ、ありがとう、ございます。」

「助けたわけじゃない。マズルをやるのは俺だ。」


 静かに聞いていた男が、反応する。まずいと思った周りの面々は必死にとめる

「兄貴!まだアイツはガキですよ」

 立ち上がった彼の顔半分にはゴテゴテとした刺青がしてあり、異様な雰囲気を醸し出していた。

「ガキだろうが赤子だろうが、関係ねぇ。マズルに手を出すなら、捻り潰す。アイツは俺の獲物だ。おい、おれの召還札デッキ持ってこい。」



 出会いは人を成長させ、更なる飛躍を魅せる。



 ある街の酒場。アルフォンスの父親は酒を飲んでいた。

「久しぶりだな。会いたかったぜ【魔道書庫】」

「わたしは会いたくなかったさ【大戦鎚】。お前からの知らせはいつもわたしの心をざわつかせる。まぁ、故郷は残念だったな。ナルシ家の連中はえげつないことをする。」

 若い整った顔立ちのエルフだった。耳が長く、聡明な眼差しは澄んだ氷のようだった。

「まぁ、予想はしてたがな。あっという間に刀鍛冶の里は壊滅した。まぁ、あの子らのために作った隠れ里さ。15年も守れた。役目は果たしてくれた。」

「……やはり。悪い知らせだ。はじめのプランは潰えたか。」

「穏やかに生きてもらうことは諦めちゃいない。ただ障壁があるだけだ。力を貸してくれないか。」

「甘すぎる。甘い夢だ。他の仲間たちにも断られたんだろ?わざわざわたしの所に来るなんてな。魔王の子など火種にしかならん。殺してしまえば苦労しなくて済むだろうに。あの子らも嫌な思いや辛い思いをはしなくて済む。それで、魔王の身体は」

「半分くらいは採掘を済ませたが、奴らの手にわたっちまった。人を避難させるのに時間を使ったからな。……早いな。」

 おもむろに、巨大な槌に手をかけたかつての仲間を見て、杖を掴む。

「そとの連中は?嫌な気配だ」

「ナルシ家の下女だ。あの子らを暗殺しようとしてきたから、この辺りの全員連れてきた。まぁ、さすがにやり過ぎた。このままじゃ、俺やあんたの技を盗まれちまう。」

 酒場を取り囲むように、メイド服の女たちが各々違う武器を持ち、待ち構えていた。

「ご当主さまの意志の元」「ご当主さまの意志の元」「ご当主さまの意志の元」「ご当主さまの意志の元」「ご当主さまの意志の元」「「ご当主さまの意志の元」」

 彼女たちの声が聞こえてくる。

「はぁ、お前、トラブルを。マズルが聞いたら、なんていうか」

「アイツは、なんも言わないな。」

「だろうな。甘いお前のことだ。あの娘たちをどうするか困り果てたのだろう」

「ぐっ」

「図星か。凍れ。《ケツテイ 二ウヨ ノリオコ》」

 彼女が杖を振るうとメイドたちはその場で氷漬けにされてしまった。

「殺さないなら殺さないで考えろ。んで、あれはなんだ」


 パチパチパチ

「Excellent!!さすが元勇者のパーティメンバー!!お初にお目にかかる、ナルシ家、本家三男リース=ナルシです。」

「おい、大戦鎚、拠点を変えねばならなくなったではないか、氷漬け《リオゴキカ ノリオコ》」

 瞬時に冷気が怪しげな男を凍らせにかかる。彼は

 「wonderful!!エルフの魔法はいつ見ても美しい。王国騎士団魔法の守式 魔鉄壁。と、こないだ収穫致しまして」

 彼はハンカチの様な布を取り出し、

 「炎蛇《ビヘ ノナウヨ オノホ》」

 炎のムチを片手に魔法を弾いた。

 「エルフの魔法を人間がだと。貴様ッ。われらの魔法を」

 「えぇ、頂きました。まだ少しですが、近々我が弟が、剣闘士の街で大量に力をつけると息巻いていましてね。私も兄の威厳を保つため、大変なのですよ。」

 「あー、なるほど。目をつけられていたわけか」

 「very Good!素材として申し分ない。魔法も、魔王の心臓の情報も、あの解剖のしがいがありそうな子供たちも、全て私が貰い受けたいのです!」


 ナルシ家の人間が剣闘士の街にいるのか。面倒なことにならなければいいが。死ぬなよアルフォンス。

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