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私の心臓(ハート)はスライムビート  作者: お花畑ラブ子
剣闘士の町マスルリア
14/34

8 それぞれの修行

「かかってこいやああ!」

 広い見習いの稽古場で、叫んだが、反応はない。各々がトレーニングを行なっている。恥ずかしくなっていたたまれない。

「おいおいにーちゃんここは遊び場じゃねーんだぞ」

「すっこんでな。トレーニングの邪魔だ」

 ゴツい筋肉の二人が立ち塞がった。なんだよ。この筋肉。これで見習い。だが。おれはフィーネに負けてられない。

「よしっ!まずはあんたたちだな。起動!ライト!!」


 さすがに炎で焼くわけにはいかない。

「水の魔石!!」


 ぼよん


「ふぇ?」

 指の先に集まった水はブニブニしていた。まるでスライム。てか、スライムじゃん!


「がっはっは!何じゃそりゃ!てめぇ、召喚士テイマーか?くそザコやん」

「ふっはっは!こいつ、スライム出しやがった!はははは!」

「坊主、家で寝てな。スライムなんてザコお呼びじゃねーんだよ」

 は、恥ずかしい。さっさと消しておれもトレーニングしようか。


 人間どもが舐め腐りおって

 癪だが、力を貸そう。

 あの人間どもを殺せ


「いや、だめだって」

 指先に集まる魔力を消そうとするも、さらに魔力が集まり、スライムが大きくなる。

「さっきからなにをぶつぶつ言ってやがる。さっさとそのザコモンスターを消せ」

「やってるよ!」

 だが、指先のスライムはいうことを聞かず、そのまま飛び出て、馬鹿にした剣闘士を吹っ飛ばした。

「ってぇな!なにしやがる!」

「いや、おれのせいじゃない!」

「お前以外誰がいるんだよ!!」

 振りかぶってきたゲンコツに思わず身を屈める。水の魔石に反応して手のひらからスライムが形成され、そのゲンコツが弾かれる。

 ぼにょん

「ぬわ!」

「これって」


 ここまで、弱体化しているのか

 人間一人殺せぬ

 自由に動けず

 魔力の少ないこの小僧の心臓として

 生きねばならぬのか

 ならぬ

 断じてならぬ

 宝を守らねば、約束のため

 我が半身も姫に力を貸している。

 この小僧が成長すれば

 魔力も増え、自由になれる可能性もあるか


「小僧」

「うわ!スライムがしゃべった!」

「契約だ」

「は?いま?」

 三人がかりの剣闘士の攻撃をぎりぎりかわしながら叫ぶ。

「貴様が姫を守ると誓うかぎり、我の力の一部を貸し与えよう。貴様は姫を守るか」

「あ?姫?フィーネのことか?あいつを守るために旅に出てるんだ!守るにきまってんだろ、うわぁっと!」

 横薙ぎの剣をかわす。

「よし。姫に不必要と思われた時、貴様の心臓を喰い、魔力も根こそぎ持っていく。貴様の全身我の物だ。よいな」

「はっ?いまめちゃくちゃ怖いこと言わなかったか?って、ひぃ」

 太い腕のラリアットが掠め、壁に叩きつけられる。

「ごほっ!ごほっ!わかった。契や……」

 フィーネの顔が一瞬よぎる。


 契約はちゃんと考えないといけないよ


「いや、だめだ!命かけるんだ。お前の力全て使わせろ。俺たちの間に秘密事もなしだ。んんん!死ぬ!死ぬぅ」


「……姫さま。賢くなられて。我は感激です。あぁ、素晴らしい!」

「契約するなら早くしろ!」

「うるさい小僧だ。昔から気に入らなかったのだ。姫とイチャイチャと!まぁ、良い。我に触れよ」


「「契約だ」」


 ぶにょん ぼにょん


 奇妙な音が聞こえる。

 両手の魔手甲にグローブ大のスライムがまとわりついている。


「なはははは!だっ、だっせぇ!」

「ひ、ひ、わらわせんな、ひひ!」


「かませ、小僧」

「あいよ」


 そいつらの横っ面をぶん殴る。

 ぼにょん

「おらあああ!」

 ぶにん

「……なんのつもりだ」

 一切ダメージがないみたいだ。

「ぷはははは!!おい!いってやれ!意味ねーから家に帰りなって」

「気持ちわりぃな!」

 打ち込まれた剣闘士は青筋をたてながらいった。自分でも青ざめたのがわかる。やばい。殺される。

「馬鹿か。小僧!魔力をこめろ」

「っ!!ぬあああああ!!」

 手甲の魔石が光り輝くと、殴った剣闘士を部屋の端まで吹っ飛ばした。

「まじかよ……」

「我の身体は物理を弾く。打撃は跳ね返す。魅惑のぷるるんボディだ」


 がらがらと音を立てて崩れるトレーニング道具に一同の視線があつまる。

「え、えっと……やほ」

「ぶち殺せ!!」

「ひぃぃぃ!!」



 地下のトレーニング室へ降りる男女の影があった。

「おいおい。あたしを呼びつけるなんて。どういった領分だい?せっかく楽しい気分だったのに台無しだぜ」

「まぁまぁ!僕に会えたんだから、ね☆最高の1日じゃないか!普段は女の子たちが、僕を取り合うのに。君と2人きりなんて知れたら、さ☆」

1人は剣闘士の若者、もう1人は冒険者の女だった。

「けっ。色男は大変だねぇ。色恋沙汰で刺されたりしたらいいのに」

「刃が通ると思うかい?無傷だったよ☆」

「刺されたことあるのかよ!あたしは仲間たちと今から飲むんだよ。」


 この笑顔がムカつく。昔はよく泣いてた情けない奴でまだ可愛げがあったのに。


「う~ん。彼らかい?剣闘士になれなかった落ちこぼれたちじゃないか☆」

「あ?本気で言ってんのか?」

「君なら分かるだろ?」


 凄まれて肩をすくませるマズル。彼の個室の前につく。メイドが恭しく礼をする。


「はぁ、んで、コロシアムで魔銃を使うようなもの好きはどこなんだ。見込みなかったらスグ帰るからな」

「あぁ、僕もはじめはそのつもりだったんだが、楽しくなってきてね。あ、そこでのびてるよ」

「まだ、まだ……もういっぽ、ん、あれ、ししょう……」

「フィーネ?おい、フィーネ!!」

 ボロボロになりながらも、まだ、手を伸ばす彼女を指さしながらいった。

「な、面白いやつだろ☆」

「バカヤロウ!!」

 そんなマズルをポンはグーで思いっきり殴った。フィーネは意識を失ったみたいだ。

「おい、そこのメイドちゃん、すまねぇが回復魔法使えるか?あたしも簡単な治癒の魔弾なら扱えるが。くそアイツら連れてくれば良かったぜ。おい、フィーネ。しっかりしろ!」

「いやぁ、効くね☆君のゲンコツは!はっはっは!」

 頭を撫でながら悪げなくマズルは言う。

「君が来るまで意識があった。とりあえず合格としとこうか。僕は優しいからね☆」

 そんな彼をポンは銃で撃つ。

「ひほいやないは☆」

 銃弾を歯で受け止めてマズルは白い歯を見せて笑う。

「何が合格だ。やり過ぎだよ。ちっ。アルの奴はどこにいってやがるんだ。」

「やり過ぎなものか。真剣には真剣で返す。それがマズル流だ、ぜ☆」

「馬鹿いってないで、あんたも手伝いな!」

「やれやれ☆犬レベルから、熊レベルまで上げろって馬鹿な願いごといい出したんだ。無茶は当然だぜ☆」

「だからってここまでやるかい!」

「いいんだよ。追い詰めないと、本気の力は出ない。それに見てみなよ」

 彼が指差したその先の壁は大きくえぐられ、向こう側が見えていた。

「なんだよ。これまるで抉りとられたみたいに」

「彼女の最後の一撃さ☆少し期待できるだろ☆」


 コロシアムのメイン道路から少し離れた場所にある店に。ララとルルはいた。2人は古びた店で、義手を探していた。

「え、えぇっと。本当にここで大丈夫なんですか」

「えぇ。旦那様のイチオシの店です」

「いら、いら、いらっしゃ、い」

 歯が所々抜けたおじいさんがカタカタ震えながら笑いかけてきた。

「メイン道路の店は王都からやってきた支店も多く、あなたの情報がすぐに回ってしまうことでしょう。安心してください。腕は確かです。わたしもここでいただきました。」

 彼女が袖をめくり手袋をはずすと機械仕掛けの義手があった。

「わたしも腕に呪いを受けていました。魔力で動く義手です。日常生活やお仕事に支障はありません。昔、ナルシ家の本当の姿を知り、腕を斬り感染症にかかり死にかけた私を救ってくれた旦那様には感謝しかありません。」

 彼女はそう言って手袋をはめた。

「計測が終わりましたらあなたに起こったことを教えていただけますか?店主様、一部屋お借りしてよろしいですね。秘密の話をしたいのです」

 2人は奥に通されて、店主が様々な魔法をかけたあと、話を始めた。

「当主様に言われて数年第4騎士団にいました。ある日、王都の外の任務に行ってくれと。刀鍛冶の里にいる戦士様のことと、魔王の心臓のことを知りました。そのためには、制約の多い王国騎士団ではいられない。ある事件の実行犯となり、王都を離れ任務につくようにと言われました。」

「なるほど。」

「そして王都の外にいくと、護衛についていたはずの冒険者たちから攻撃を受け、同じく護衛についていた騎士が応戦しました。腕が熱くなり、意識を失い、気がついたら、フィーネどのの治療を受けていて、冒険者たちはおらず、騎士たちは重症でした。フィーネさんの治療を受けて、彼らは帰りました」

「私の時と同じですね。あの呪符には、持ち主の意識を乗っ取り、凶暴になる作用があります。また、倒した相手の技や記憶を盗む力があります。そうして完成した呪符はナルシ本家の者の力として使われるのです。」

「あなたが、濡れ衣をかぶったのは、7大魔王の1人の使っていた神器が盗まれた事件ですね。ナルシ家は以前から魔王関連の魔道具や神器をあつめていたのですから。」

「なぜそんなことを」

「簡単です。次なる魔王になるか、魔王に気に入られるか。どちらかでしょう。神器は魔王を封印し倒す可能性があるもの。やり方はいくらでもあります」


彼女はしばらくだまった後話し始めた。


「あなたさえ良ければ、旦那様の元一緒に働きませんか。そして、ともにナルシ家に復讐しませんか」

 ルルはそうささやくように、告げた。

「わたしは、復讐はあまり考えていません。ですがわたしはあの二人の平穏な暮らしを奪ってしまった責任があります。彼らが穏やかな暮らしを取り戻すまでは、わたしは彼らのために働くつもりです」

 ララはそう告げた。ルルは落胆するわけでもなく。次のように話した。

「そうですか。分かりました。あなたの意思を聞けて良かった。あなたには義手の使い方や戦い方を教えるよう旦那様から言われています。わたしの全てを教えます。ぜひ、あなたの望みを叶えられますように」

「ありがとうございます。まさか同じ境遇だとは」

「これも何かの縁。仲良くしてくださいませ」

 ルルは部屋にある受話器をとり、外へと連絡をとった。しばらくすると店主がやってきて、いくつかの義手を見せてくれた。機械仕掛けのもの、本物そっくりなもの、魔物の腕、ひとつに目が止まった。白い義手に所々魔石がはめてあった。


「……これは」

 店主がルルに説明をする。

「こちらは先日、魔法都市から輸入された1品で、あちらの魔法騎士マジックナイトに愛用されてるそうです。魔力を貯める魔石があるため、使用者の魔力切れや魔法の詠唱中でも使用可能で、魔石の効果を使えば短時間ですが、何倍もの力を出すことも可能だそうです。しかも、見た目よりもかなり頑丈だそうです。」


「これに、します」

 大戦鎚さんから預かった大剣は、私を生かすために作られていた。幅広の刃は死角をフォローし、盾になった。だが、この腕があれば、さらに色々な事ができそうだ。



タイトルを変更したいが、良い題名が思いつかない。みんなはどうやってタイトル決めてるんだろう。

└(:3」┌)┘))ジタバタ


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