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私の心臓(ハート)はスライムビート  作者: お花畑ラブ子
剣闘士の町マスルリア
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6

墓地にて老紳士は話しを続ける。

「おそらく、お父上は先代のマズルに鍛えてもらおうと思っていらしたようだね。マズルとアルフレッドは長きに渡ってライバル関係だった。剛力のマズルと技巧のアルフレッドどちらが強いかは当時よく酒場の話題になったもんでしてね。そんなライバルだからこそ、息子を託そうと思ったんじゃないだろうか」

あ、そうだと、老紳士は手をうった。

「わたしも先代のマズルと仲が良かった。彼のしていたトレーニングを一部。君に伝授してもいい。いや、君たちに」

「おぉ!それはありがたいです!」

手紙の相手が亡くなっているなんて、親父は悲しむだろう。だけど、まだ、糸は繋がっている。

「場所をかえようかの」

老人が向かった先はコロシアムだった。

「ここの地下には鍛錬場があってから見習いの剣闘士が体を鍛えておる。市民の同伴があれば旅人でも使える設備だから、遠慮なく使いなさい。じゃが、まずは、うちの町の剣闘士たちを見ていきなさい」




「くそっ」

ポンは道端にあった箱を思いっきり蹴飛ばした。

「すまねぇ姉御」

「すんません姐さん」

付き従う2人はひたすら謝っていた。

「だぁ、あのガキ!!許せねぇ!!てめぇらもいつまでもウジウジしてんじゃねーよ!くそ!報酬も未払いでほんとに貴族なのかっての!!」

「しっ姐さん聞こえますぜ!」

「あ?あたしらも今までいろんな危ない橋渡ってきたじゃねーか!いまさらビビるもんなんかねーよ」

「あのギルドマスターが下手に出てんですぜ。よっぽどの大貴族なんでしょうよ。それよりもあの依頼。あの子たちのことっすかね」

「はっ!気に食わねぇ!気に食わねぇ!気に食わねぇ!」

イライラしてるポンに対して、子分のふたりは顔を見合わせる。

「あ、そうだ!姉御、今回はあっしらが迷惑をかけちまいました。だから、久しぶりにコロシアムへ遊びに行きませんか?」

「そうですよ。今回は俺たちが全て奢りますから。ね!」

3人はコロシアムへ向かう。


コロシアムは、歓声に湧いていた。

「さぁ、今回トーナメントを勝ち抜いてきた挑戦者は2人!Aブロックからは機械都市メカニズからやってきた。バルロス卿!!若干21歳にして名誉騎士ザナイトの称号を得ています。メカニズの出身らしく、発明品を使っての参戦だ」

片眼鏡オラクルをかけた銀髪の男。波がかった髪型に、長身の痩せ型の体型。長いコートを着ていて、手は袖の中で見えない。

「BブロックはマスルリアNo.3人気の剣闘士!!剣牛プロインテ!!攻防バランスのいい剣闘士として知られています。2回戦目での剣闘士トリムとの戦いは素晴らしかった。」

30代半ばのたくましい筋肉の男右肩には、大きな刺青がある。

地元の剣闘士が勝ち上がった為か歓声がもりあがる。


「決勝に勝つと現在の王者マズルとの決闘のチャンスが、あ、ちょっと!マズルさん?!」

「まどろっこしいのは、なしだ!お前ら2人同時に相手してやるよ☆」

「んのばか、また段取り無視しやがって。どうする、若いの?」

頭を搔く剣闘士はため息をついた。

「私の発明品が注目されるならなんでも。現チャンピオンはあのマズル氏のご子息。七光りには負けませんよ」

「おい、ばか!それは禁句だ!」

マズルの目が細くなる。

「いーねー☆威勢のいい挑戦者だ!宣言しよう!観客のハニーたち、この2人を3分で沈める。応援よろしく☆」

観客の声援、特に女性陣が一層大きくなる。観客席では、アルフォンス達が、老人の計らいで観戦していた。

「今日はプロインテか。あやつも良い剣闘士だ。ベテランだな。ぬ、どうされたか?アルフォンスどの」

「べつに、なんもないです」

あのキザ野郎はなんだか、気に食わない。

「さぁ、決勝戦はこの円形のステージで行われます。負けを認めるか。場外への押し出しか、武器を使用不能にするかで勝敗が決まります」


「試合開始っ」

バルロスは袖から円形の刃物を射出する。すぐに走り出すマズル。

「ははっ☆」

難なく、剣で弾く。明後日の方向に飛んでいく。バルロス卿は想定していたのか。さほど気にせず、そでからガトリングガンを出し、撃ちまくる。

「あの弾はゴム弾になっており、当たると非常に痛いです。」

「遅い、ね☆」

一気に距離を詰めるマズルに、プロインテが横から剣を振り下ろす。マズルはさらに足に魔力を込めて加速し、避ける。

「逃げな!わけぇの!」

「私は町の命運をかけて、ここに来ました。逃げる訳にはいかないのだよ」

バルロスはそでから白い液体を噴射する。

「トリモチ大作戦!!」

一歩二歩と歩みを進めようとするマズルは、次第に足を絡め取られ足が動かない。

「もらったぁ!」

前方からバルロスが電ノコを、背面から先程の円形の刃物が戻ってくる。凶器に挟み撃ちにされる。

「避けられるもんなら避けてみな」

「3割ってところか、な☆」

剣に魔力があつまる。

「3割、剛剣・マズル☆ソード」

ふざけた名前ではあったが、横ナギに振り切った剣圧はすさまじく、飛んできた刃物は吹き飛んでしまった。

足が動かないまま、すぐに今度は正面をむく。その目には殺気があった。バルロスにだけ聞こえるように呟く。

「……」

「ひっ」

「さぁ、まずはこいつから、おわらせよう、か☆5割、剛剣・マズル☆ソード!」

電ノコがバラバラに砕かれ、バルロス卿は場外に吹き飛んだ。


「おらああああ」

プロインテも背後からおそいかかる。

「プロインテさんもご苦労さま☆お子さんは元気?」

「あぁ、お蔭さまでな!ちっ、相変わらず当たらねぇ、避けんなマズル!あと、強い打ち方はやめろ、腕がしびれちまう!」

「ははっ☆無理な相談です。……あなたはうちの剣闘士。格は落とさせない。」

激しい打ち合いを行う2人に観客が盛り上がる。

「凄まじい魔力操作ですね、2人とも」

老人はうなづく。

「元々剣闘士たちは、騎士たちと同じように魔身を身につけてる。だが、その使い方は騎士のように統制が取れてる訳ではなく、個性がよく出てる。プロインテはベテランらしく、防御に魔力を集中させて、攻撃の瞬間に魔力を移動させている。一方ジュニアの方は、今日は荒々しいな。攻撃に全魔力をのせている」

「魔力で防御してないなんて自殺行為では?」

ララさんが驚いている。たしかに村にいた時にララさんが言ってたことだ。

「ジュニアは戦いに関して天性の才能があるのだよ。プロインテの攻撃を全て避けているだろう。半端な攻撃は当たらないのだよ。殺気や軌道を読み、敵の懐に潜り込み、一撃で粉砕する。マズルは死んだが、ジュニアはその技術を継いでいる。」

観客の歓声がコロシアムに響き渡る。

「決着!!マズル選手!宣言通り2分25秒で決着!現在98連勝!!前人未到の100勝まであと二勝だぁ!」

「マズル!マズル!マズル!マズル!」

「君たちにお願いがある。マズルの100勝を阻止してくれ。あの天狗の鼻をへし折ってやってくれ」

老人はそう言った。


「げひひ。ぬるい、ぬるいなーコロシアム!!つまらねーぜ」

コロシアムのVIP席に坐する1人の少年は頬杖をつきながらそう呟いた。後ろにいるのはここの支配人の男。

「お、お気に召しませんでしたか?」

恐る恐る尋ねた。正直イライラしていた。普段なら王都の自室でゴロゴロと過ごせていたはずだったのに。あの女のせいだ。仕留め損ねたギルドも腹立たしい。

「期待はずれも甚だしいぜ。もっと死人がでると思ったのに。正直反吐が出るね。ストレス解消のためだったのに逆にストレスが溜まった」

「も、申し訳ございません!!」

彼が権力者の息子だから。それだけじゃない。彼自身も命を簡単に取ることのできる実力者だ。

「どっかに可愛い女の子でもいねーか、な」

双眼鏡で観客席を眺めていた彼の手が止まる。

あの金髪。片腕だけ。あの顔。忘れようがない。

「たしか、次のコロシアムが開かれるのは1週間後だったよな。この額の寄付をしてやる。」

提示されている額はとんでもない額だった。コロシアムが5年は運営できる。

「ありがとうございます!」

「だが、2つ条件がある。試合をサドンデス形式にしてこいつを放て。2つ目はあそこの女を参加させろ」

「はっ、な、なにを。こんなものを放ったら死人が出ます!」

「だからいいんじゃねーか」

神に感謝だ。仕留め損ねた獲物が目と鼻の先にいたとはな。楽しくなりそーだぜ

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