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私の心臓(ハート)はスライムビート  作者: お花畑ラブ子
剣闘士の町マスルリア
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剣闘士の町マスルリア5

 翌朝、マズルさんを探すために町で聞きこみを開始する。意外に早く見つかった。町の中央コロシアムでは、マズル人形、マズルなりきりセット、マズルコーヒー、マズルグミ、マズルビール、マズル、マズル、マズル。若いハンサムな青年がポーズを決めている。親父の友人なのに随分若いな。

「マズルさんはコロシアムのヒーローだよ」

「マズルは最高の剣闘士さ。彼は負け無し!95連勝!」

「マズルに会いたい?もし、人だかりができてたら、そこかな」

「あの人神出鬼没だから、アポとっても会えないことも多いよ。」

 だが、会う方法は皆無だった。チケットは既に連日完売。唯一の手がかりは力自慢だから、コロシアムで結果を残せば会えるのではということだった。

「なかなか会えないもんだな」

「そ、そうだね。……わたしはちょっとこういう人苦手かも」

「戦い方には、興味がありますが、」

「やぁ、僕の話か、な☆旅人さん」

 不意にララさんに話かける人物がいた。高い身長に羽織っただけの服、均整のとれた筋肉。白い歯の笑顔も眩しい。サングラスと帽子をかけてはいるが、このあたりで散々みかけた男、この人がマズルだ。

「え?」

「ま、ま、マズルさん!あわわわわ」

「大丈夫だよ。ハニー、僕の活躍を見ればすぐに、僕の虜、さ☆」

 チュッとフィーネとララさんの手の甲にキスをした。とたんにフィーネの顔が真っ赤になる。

「へゃっ」「ホワッ」

 そいつはつかつかと俺の前に来て、手を差し出した。

「やぁ!少年!どうして、そんな怖い顔をしてるのか、な☆」

「いや、べつに、どうも」

 こいつの手を握りつぶさんと握手をしたかったが、カチカチの手で微動だにしなかった。少年ってあまり年は変わらないだろうにと。

「えっと、あなたに会いにいけと親父にいわれまして」

 手紙を差しだす。

「ふむ。ふむむむむ。ふむむむ、む☆なるほど、あいわかった☆」

 グイッと腕を引っ張ると、俺の腹に拳をぶち当てた。軽く身体が浮かぶ。

「が、はっ?!」

「な、なにを!マズル殿!」

 大剣に手をかけるララさんを片手で制す

「はい、ハニー☆僕の前で抜かないほうがいい☆手紙には鍛えてくれと書いてあった。実力を見たかったのだが、、、彼弱すぎるね☆ははははは!」

 彼は高笑いして、近づいてくる。コノヤロウ!

「起動!火玉弾!」

 吠え面かきやが、れ。だが、不発だった。マズルに手を押さえつけられてしまった。

「はははは☆弱い!弱すぎる!コロシアムで勝ち上がれるくらいになりたまえ!この札を見せれば、コロシアムに入れてもらえるから、ね☆ハニー達もまたね!」

 黒い札を俺の頭に乗せ、彼は去っていった。

「なんだあの野郎!!」

「す、凄かった」

 顔を真っ赤にしたフィーネになぜか腹がたった。

「おい!フィー!あんな奴がいいのか!おい!」


 しばらく滞在することになりそうだったので生活資金を確保するため商品を売りに向かう。武器の流通は制限されており、いくつかの武器商店をまわった。

「うん、立派な刀だね。これなら銀貨60まいで買い取らせてもらうよ。君たちの積荷の刀も買い取るからオマケしてくれたらうれしいな。」

「おぉ!そんな値段で売れるのか!親父の刀って」

「これなら、かなりの値段になりますよ」

 ララさんも俺もワクワクしている。

「すごい本数だね。わたくしたちも、王都の混乱の煽りをうけていてね。全て買い取っていいかい」

「いいです!いいです!」

「じゃあ、ここにサインして」

「はい!」

「ま、待って、こ、ここはまかせて。契約書はちゃんと読むこと。こ、これは鉄則。こほん、まずこれらの刀は。こちらの銘を見てください。龍鉱山の隠れ里で打たれたものです。それだけで銀貨70枚は下らないです。しかも、あの刀匠魔槌が打ったものです。彼は今後二度と刀鍛冶をするつもりはなく、さらに価値をあげるでしょう。近年はコレクターが……」

 村でおかみさんの手伝いをしていたこともあって、フィーは大活躍だった。まずは相場を調べ、最近のニュースを聞き、値段をつけ、交渉し、ララさんも俺も舌をまいた。想定よりもかなり高い値段で売ることができた。

「今日はパーッとご馳走でも食べるか?」

「いいですね!」

「だ、だめ。旅は、な、長いから。節約をする」

 自信がないだけでしっかりしてる。ただ、フィーも節約の鬼というわけではなく、三人でアイスを食べた。マスルリアのアイスはサトウクモと呼ばれる魔物の糸を混ぜ込んでいるらしく、チーズのようによく伸びた。

「すっげーのびるー」

「言われないと分からないよねー」

「美味しいです!」

 メモ帳を取り出し、書き込んでいく。人と動物の関係と同じように魔物と人間も様々な関係がある。故郷の洞窟は、ドラゴン、スライムが食した後だったため、硬い組織しか残っていなかった。だけど、もっと色々なものが作れるんじゃないか?めもを書いていると肩に衝撃があり尻もちをつく。自分が老人とぶつかってしまったことに気づく。彼は杖をついていた。

「すみません!」

「いやいやこちらこそ」

 老紳士は手を差し伸べて、力強く起こしてくれた。

「君かいマズルを探しているという商人は。随分若いね。どんな用事かな」

「父に紹介されて、戦い方をおしえてもらうようにと言われたんですが」

 ギリギリと歯ぎしりをしてしまった。

「あははは、ちょっと一悶着ありまして」

「ほっほっほ!なるほど、殴り飛ばされたと。奴らしい。父君のお名前は」

「ボリング=アルフレッドです。」

「ほぅ。あの大戦鎚の英雄ボリング卿のご子息か。」

「大戦鎚?」

「お父上の2つ名です。王国騎士団元2番隊隊長として広く名を知られていますよ。巨大な槌を振り回して、魔法騎士として、戦歴もとても素晴らしい騎士でした。」

 ララさんが答える。

「ん?知らなかったのですかな?」

「俺の知る親父はずっと小屋にこもって刀鍛冶をしていて、その勇者の仲間だった時のことは一切知らないんですよ」

「あの大戦鎚が、刀鍛冶を?ははっ!にわかには信じられないが…、本当の様ですな。お時間ありますかな。ついてきていただけますか?」


 老人についていくと町のはずれの墓地についた。墓の前にはボロボロの剣や盾が突き立てられている物も多く、剣闘士たちの墓となっているようだった。

「英雄マズルここに眠る」

 石碑が墓地にあった。掘られてる日付けは5年ほど前だった。たくさんの花がそえてあり、今もなお人が訪れているようだった。

「え、でもさっき」

「彼は2代目なんですよ」

「2代目……」

「えぇ、彼はマズルの息子なんですよ」



 ところ変わってある冒険者ギルド。冒険者チーム「三竦み」は報告を行なっていた。応接間の机にどんと置かれたそれは、紫色の布で包まれており、一部赤く染まっていた。

「ギルド長。ほれ、ターゲットの腕だ。一応魔法で保存してるが、鑑定は早めにな。腐っちまう」

「お前たちがさっさと帰還しないからだろうが。依頼の途中に別の依頼受けちまうとか。初心者チームじゃねーんだぞ、てめぇら」

「うるせぇ!あんなに強いなんて!早く教えろよ!死にかけたぞ!こっちは!特別手当があってもいいくらいだぜ」

「まぁまぁ、姉御おちついて」

「うっせぇわ不良娘!てめぇがナルシ家の依頼なんか持ってくるからだろうが!あそこの依頼はA級チームも手を出さねぇ厄介なもんも多いんだ」

「はっ!てめぇで始末つけられねぇ奴ぁ!怖かねーよ!」

「アホ!」

 ギルド長はポンのあたまをぶん殴り、小声で言った。

「今この町にナルシ家の方がいらしているんだぞ。んなこと聞かれてみろ!うちのようなちっちゃなギルド。あっという間におとり潰しだ!」


「まぁ、そうだな。ギヒヒ」


 部屋の中で異質な声がした。他人を馬鹿にしたような鼻につくような声。

「てめぇ、いつのまに!」

「ば、ばか!この方は」

 ギルド長は衣服についた家紋ですぐに気がつく。

「不出来な妹の処分ご苦労だったな。言葉遣いは今後改めな。」

「すんません。ぼっちゃん。なに分スラム街出身の下賎な身。礼儀作法をわきまえておらず」

「ふむ」

 普段の彼女なら威勢よく食ってかかっていただろう。だが、彼女らを押しつぶさんとする魔力がその男の強さを表していた。

「頭をたれて謝罪しな」

 さらに魔力の圧力が増す。

「あ、が、」

「ぐ、ぎ、」

 ジャンもケンも魔力に打ち負け、地面に無理やり押し付けられている。

「す、すまなかった。」

「よろしい。」

 魔力が軽くなる。だが、

「ガッ!」

 彼女を思いっきりなぐり、男はテーブルに置かれた腕を持つ。

「ギルドマスター。並はずれて魔力の高い角の生えた小娘と竜の力を使うガキを探せ。このギルドを潰されたくなければな。ギヒヒ」

 そういうと現れた時と同じように男は立ち所に消えた。


更新頻度は週に1度を目安にしています。

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