遭遇
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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。
本作品は、作者の空想の世界です。
さて俺は、お腹が空いて隣で、「クーン」と鳴く狼の子(妹)に、お腹へと鼻を押し付けられながら、なぜこうなったかを考え始めた。うん、俺はオスだから乳は出ないぞ!!
俺は、実家からの仕送りを糧に、一人暮らしている学生である。
もっとも学校へは行かず、引きこもっている。やることと言えば、お約束、ラノベを読むか、オンラインゲーム(ネトゲー)で遊ぶかの日々を過ごしていた。
もちろん体が鈍らないように、アスレチックジムに行ったりしていた。
もちろん人気のない深夜時間に、ね。
ネトゲーは、いわゆる仮想世界に入り込むフルダイブ型バーチャルゲームだ。
頭にヘルメット型の機械を付け、ベッドで眠りながら楽しむゲーム名称は、亜人&動物。(通称 D&A)
多種多様な種族や職業や戦闘スタイル(クラス)が選択可能で、仲間と共に冒険者ギルド(職業紹介所:ハローワーク)から依頼を受けダンジョン攻略やお宝探しを行うのが、主な内容だ。
俺のD&Aでのアバターは、人型狼(狼男:ウルフマン)である。
普段は人(人族)の姿だが、モンスターとの戦闘になればウルフマンとなり、前衛で剣を振るい魔法を駆使し戦う、そんなスタイルだった。
仲間のパーティメンバーも、俺と同じような現実世界での生活を送り、やはりアバターも猫娘や虎男といった獣人で構成されていた。
リアルでは寝るか、ゲームか、毎日を過ごす日々は、天気を気にせず、ニュースを気にせず、ぼんやりと過ごしていた。
そんなある日、ネトゲー仲間とファミレスで、オフ会(実際に会うこと)をしているときに、窓の外が暗くなり次には赤く熱くなった。
まさか映画やアニメのように、俺たちが居たファミレスに隕石が衝突するとは、夢にも思わなかった。辺り一面、悲鳴と轟音が響き、壁のガラス窓に、車が飛んできた。そして目の前が暗くなり、体中に痛みを覚えて意識を手放した。
次に目覚めたとき一人、暗黒の中に浮かんでいた。しばらく浮かんでいると、目がなれたのか、暗黒の中に光の珠が浮かんでいるのに気がついた。
それもあちらこちらに複数ある。それらは、すべて同じ方向(温かい方)へ流れている。
その一つに手を伸ばし触ってみる。
光の珠は人型(女の子)となり俺の頭の中に話しかけてきた。
「何、あたしに用事?」
「えーと、女の子で良いよね。何ちゃん?」
「名前?わかんないよ忘れた。確かファミレスでバイトしていたんだよね。あっ!早く暖かい所へ行かないと駄目な気がする。」
「そっか、ごめんね。呼び止めちゃって。」
「うん大丈夫。ん〜死んじゃった☆。大きな柱が上から落ちてきてね。お金貯めてライブ見に行きたかったんだよね。」
「そっか、やはり死んだんだよね。」
それを聞いた俺は何とも言えない表情を女の子に向けた。
女の子は、少しだけ困り顔になり温かい方を見ながら光の珠となり暗黒の中を流れ始めた。
最後にお決まりの捨て台詞を言いながら、ウインクした。
「まぁ。生まれ変わり?転生?機会があったら、また会おう!おにーちゃん。」
(うーん何かのフラグか、確かに、またこの子とは会う気がする、いや、絶対に会う!)
別の光の珠に手を伸ばし触ってみると、今後も人型となり、俺の頭の中に話しかけてきた。
「なんだい。おにーちゃん、あたしに用事かい?」
「いえ、俺たちって、やはり死んだんですよね。」
「そうだね、ファミレスのキッチンでパフェ作ってたら、店の外で【隕石が・・・】と騒いでいたね。たぶんそれで、じゃないないかい。」
俺がおばさんにお礼を言うと、また光の珠となり俺から離れ温かい方へ流れ始めた。
別の光の珠に手を伸ばし触ってみると、今後も人型となり、俺の頭の中に話しかけてきた。
「なんだい、小僧。俺様は忙しいんだよ。こんな寒いところより、あの暖かそうな場所に早く行きたいのだが・・・。」
「ごめんなさい。(えっ寒い?)俺たち死んだんですかね。」
「そうみたいだな、俺様は、飛んできた車に押しつぶされたんだぞ。信じられるか、俺様をつぶすのに、大型トラックが必要だった!すごいだろう。」
「・・・。そうでしたか、呼び止めて、ごめんなさい。」
しばらくするとオジさんは、「がぁはぁはぁ」と笑い、また光の珠となり俺から離れ温かい方へ流れ始めた。
(うーん、ガサツそうだから、二度と会いたくない。)
もういいよな。これ以上、人と話すとコミュ力がゼロになり、過労死しそうだ。まとめよう。もうここは、俺の知る日常世界ではないようだ。マジ、俺は死んだみたいだ。どう死んだのか。
あたりの光の珠は触ると人型になる。言うなれば人魂?だよね。
俺も周りから見ると光の珠なのかな、それに温かい方へ向かわなければ、駄目な気がする。でも、一人だと寂しい。
あっ!そうだ。以前実家で飼っていたペットの犬。
この暗黒の中(死後の世界?)にいるかも知れない。呼んでみるか。
そう思い俺は犬の名前を思い出しながら呼び始めた。
「お華」
お華は、両親が俺の誕生と合わせて飼った犬だ。あまり長生きはできなかったが、
この世界に居るのならば、来てくれるかな?
それともすでに転生し新たに生まれ変わったか。
ん。小さな光る珠が俺の周りにいくつか集まり始め、それが一つの大きな光る珠となった。
その珠に触れると大きな犬となった。
顔には見覚えのある花びらの模様(牡丹)があり、お華に間違いない。
俺は思わず抱きしめて、会えた嬉しさで泣きたくなった。ぐすん。
「会えなくて寂しかったよ、ダーリン。」
お華も「くーん」との鳴き声をあげ、同時に頭の中へと声が聞こえてきた。
お華の横には、小さな光る珠も浮かんでいた。
そっと触って見ると小さな犬になった。
「ダーリン、その子はダーリンと私の子供なのよ。名前がまだ無いからお願い付けて欲しいよ。」
「えっ、お華の子供・・・。(俺との子供っていったい・・・。)」
「そうだな。(花に因んだ名前で、小さくも儚げなイメージで)さくらは、どうかな。」
恥ずかしげに、「くーん」との鳴き声と同時に頭の中に「ありがとう、パパ」と、聞こえてきた。
パパ?え?なぜ?パパと言われ混乱している俺。
そんな俺に突然、黒き珠が俺に触れてきた。
しかも、お華と同じように大きな漆黒の犬の姿となった。
お華とさくらは、漆黒の犬に怯えるように距離を取った。
そのとき、俺の頭の中に話しかけてきた。
「人族の戦士よ、我は、相方を探している。共に探しては、もらえないかな。」
「えーと、あなたの名前と相方の名前を教えてもらえませんか。」
「我には名前がない。ただ勇者や相方は、我を混沌と呼ぶ。」
「はい、混沌さんですね。了解です。で、相方は?」
「相方も、名前がない、勇者は、虚無と呼ぶ。」
「相方は、虚無さんですか。了解であります。」
うーん?名前が無いとは、そう言えば、最初の光の珠、あの女の子も名前が判らない、と言っていた。
ここに居ると名前が思い出せないのかも知れない。
って、俺も自分の名前が思い出せない。あと周りは光の珠なのに、この漆黒の犬は黒き珠だった。それと勇者とか言っていたな、あー、色々つっこみたい。むぅきー。
「そうですね。では、呼んでみますね。」
俺は伝えられた名前を、虚無と頭の中で呼び始めた。虚無さんではなく、虚無で良いよね。
すると、どうだろう。暗黒の中なのに黒き珠が、はっきりと判るほどに、ふらふらと漂い近づいてくる。そして、黒き珠は、同じように大きな漆黒の犬の姿となり、俺の頭の中に話しかけてきた。
「我を呼ぶのは、人族の戦士、お前か。」
「ええ、そうです。そちらにいる混沌が探してほしいとのことで、呼んでみました。」
「そう、ありがとう。人族の戦士よ、勇者やその眷属もここには居ないようだな。」
「久しいな混沌、我は勇者に屠られたが、やはりそなたも屠られたか。」
虚無と呼ばれる漆黒の犬、混沌と呼ばれる漆黒の犬とが、何やら語り始めた。
(ひとまず、長くなりそうだし、話す言語が理解できないため、スルー。)
俺は、お華に話しかけられた。
「そろそろ、温かい方に行かないと、ダーリンの体が透けてきている。不味いよ。」
確かに、お華へと伸ばす俺の腕は透けて、お華の顔が見える。
「うん、パパ、一緒に行ってあげるから、温かい方に、行こう、ね。」
(なんか、【パパ、温かいことしょ】とか、【パパ活】を連想させるが気のせいだろう)
飼っていた犬たちは、俺を温かい方に誘い、動き出す。
混沌と虚無の姿の犬もなぜか共にである。あたりに漂う数多の光の珠を追い越し、掻き分け暗黒を抜けた、その先へと、手をのばす。
(気分的にです。実際は光の珠なので、手はありません。)
誤記は、気にしない。