必殺食っちゃ寝
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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。
本作品は、作者の空想の世界です。
庭にある大きな木で小鳥たちが歌を奏でるように鳴いている。廊下に涼しい風と陽の光が入るのは、獣人侍女が窓をすべて開けたためだ。シルフとウンディーネの精霊たちが楽しげにワルツを踊っている。
子供部屋を出た双子のエルフは、おはようと、廊下ですれ違った獣人侍女に挨拶した。
レイは、洗面所へと向かうが、玄関ドアから出ていくドアンを目ざとく見つけた。
レンは、リビングに向かった。
ソファーの上には、ライラとシャーゼが座り、何やら雑談をしている。二匹の狼の子が居ない。
獣人侍女の手には、毛布が入った小さな木箱がある。二振りのモフモフな尻尾が、はみ出ている。
一振りの尻尾は、小刻みにフリフリと動き、ごきげんな感じである。すでに朝食も済ませているからだろうか。もう一振りの尻尾は、動かない。まだ夢の中のようだ。
「二匹を洗うのに浴室を使う。ね。」
レンは、獣人侍女から木箱を受け取り、浴槽へ向かう。
獣人侍女は、桶とタオルを持って追いかけ、ついでに身に付けていたエプロンを脱ぎ、レンに着せた。
浴室は、石畳の壁に囲まれ、木の床と湯船がヒノキの匂いを漂わせる。昨晩に沸かしたお湯は、ほどよくぬるかった。湯船からお湯を桶に汲み、ごきげんな狼の子を捕まえ桶に突っ込んだ。湯気の立ち込める中で、キョトンとしてされるがままである。
頭に触った瞬間に「うー。」と嫌がるように鳴いたが、胴体や手足に石鹸を泡立てたタオルで撫でて、お湯をかけた。胴体や手足を乾いたタオルで拭いて、木箱へと戻した。
風呂上がりの狼の子は、もへーんとしている。疲れたのか寝始めた。
寝ていた俺も、お湯の入り桶に突っ込まれた。驚いて、「うがぁー」と、一声唸った。
「どうしたの大丈夫。レン?」
唸り声に驚き、シャーゼが浴室に飛んできた。ラウも毛布を咥えて、トテトテと、こちらに歩いてきた。
「大丈夫だよ。あっ!でも、この子が浴室から飛び出ていかないよう、見ていてよ。」
「そうしましょ。」
シャーゼは獣人侍女と伴に、ラウの咥えた毛布を洗面所に広げ、狼の子を移動し寝かせた。ラウも狼の子の横に行き、体を舐める。
うーん。体を舐められると、すごく落ち着くんだよね。って、ラウって、オスだけど子育て経験あるのかな?
胴体や手足に、石鹸を泡立てたタオルで撫でて、お湯をかけらた。
「うがぁー」と、もう一声唸った。お湯というか、水はそもそも嫌いなんだよね、俺。
乾いたタオルで拭いてもらうが、俺はお腹が空いたzzz。
「レン。レイと一緒に朝食を取って、この子たちは、ラウが面倒を見ているから。」
シャーゼと獣人侍女は、キッチンに向かった。ラウは、「くぅーん」と鳴き、シャーゼに応えた。
「はーい、今朝の朝食は、何かな。」
キッチンからは、肉・魚、いやどちらの匂いも漂ってきている。
リビングでは、すでに、テーブル席にレイが座っていた。横顔を伺いながらエプロンを外し、獣人侍女に返した。
「レンありがとう、あれだけの時間をもらったのだから、楽に取ってこれたわ。」
レイは、【隷属の首輪】が入った革袋を腰に下げている。
「そう、その間、ライラは、どうだった?」
レンは、呟くように話しかけた。
「ライラは、ソファで瞑想していたわ。」
言われなければ、そこに存在しているのかさえ判らないほど静かだが、確かにライラだ。
テーブルには、すでに大きなパンとバターが置いてある。
獣人侍女は、魚料理(一匹を丸ごと)をレイの前に、肉料理(大きく分厚いステーキを一枚)をレンの前にそれぞれ置き、フォークとナイフを手渡した。
レンもレイも、フォークで刺し、ガブガブ、ガブ着いた・・・。それを見たシャーゼは。
「レン、レイ、ちゃんと、ナイフも使い、一口サイズに切り分けてから食べなさい、ね。」
双子のエルフは、こくりと頷きながらも、ガブと果実水を飲んで胃の奥へと流し込んだ。
獣人侍女は、料理に合わせたソースを持って来たが、時すでに遅かった。皿の上は、空となっており渡しそびれた。
(レイが食べた皿の魚には、頭も骨も残らない。)
「デザートは、何かな?」
レンは、パンを千切り、バターナイフでバターをべちゃべちゃと塗った。必殺食っちゃ寝である。
獣人侍女は、水差しに入った果実水をコップに注いだあと、キッチンへと向い、ティーカートに乗せた、焼き立てのパンケーキと蜂蜜を持ってきた。
「えーと、お母様に相談がありますわ。」
レンをちらっと見ながら椅子から立ち上がり、瞑想するライラの横に、シャーゼと伴にソファに座った。
「先日、お母様が外界から来たハーフ・エルフについて情報を集めてと言っていたが、私達も協力して良いかしら。」
「レンとレイで?そうね、酒場や兵士の詰め所は、ドアンに頼むとして、狼の子を連れて、東の森に散歩に行くといいでしょ。」
口元に手をやり、考えるような仕草をとった。
二人で何か考えているようだが、いまのところ内容が不明である。それならば、自由に行動させて様子を見てみようと考えた。監視役に、ライラを付ければ安心である。レイは、熱くなりやすいが冷めやすい性格であり、暴走するレンを止めてくれるであろう。何よりライラと共に行動させることで、何かしら成長を期待した。
「ライラの瞑想が終わり、狼の子たちが起きたあと、三人と二匹で行って来なさい。」
シャーゼは、レイとの会話が終わったとばかりに、蜂蜜でべとべとになったレンの口をタオルで拭いた。
「お母様、狼の子に、ごはんあげてもよい?」
「じゃぁ。レンの狼の子、オスに与えてね。」
「はーい、ラウ、オスの狼の子を連れてきて欲しいよ。」
ラウは、「ウォ〜ン」と、一声鳴き返事し、オスの狼の子を咥えて、レンに渡した。
獣人侍女は、お湯でふやかした減塩の干し肉を木皿に入れレンの前に置いた。
ライラは、メスの狼の子を抱き上げながら、レンの横に座った。
「狼の子たちと散歩に行くのだけど、一緒にどう?、ついでに、お母様の言われていたハーフ・エルフを探しに行くよ。」
「そうですね。行きましょう。準備してきます。」
ライラは、受けた神託がそうするよう、促していると感じずには、居られなかった。
誤記は、気にしない。
レンとレイの名前が、逆があり、変更。