思ってたんと違う転生記 そういや転生とトレーディングカードな世界観って知る限りでは見たことねぇなと思いつきで書いたら一戦さえ書けなかった物語
一人の男が便所で死んだ様な目をしていた。
「いやさ、違うと思うんだよ。こう言うんじゃないじゃないの?普通なんかこう神様的ななんかアレがミスちゃったテヘペロ的なさ。そうじゃなくても権力者に呼ばれてーとか、じゃ無くてもトラック的ないかにも転生しますよ的な流れ無かったからなんコレ?」
スタイルは非常に良く髪は銀色で整った顔をしているが死んでいるどころか腐り果てた様な目がイケメンと言う評価にブレーンバスターをかまして死滅させている。
「いや正直さ、スローライフとかでも良いってかスローライフが良かったけどさ、なんかこうヒーロー的なさ、スーパーパワー持って好き勝手しながら時々気にいた相手の為に尽力出来るみたいなさ、なんかそう言うのないのマジで」
やたらと折り目の付いたシャツとダメージジーンズを2m強の八頭身な身体に纏っており当然だがトイレなのでジーンズは膝あたりまで下げていた。
「思うってたのと違う……」
男は転生していた。昨今流行りのなろう系、しっかりと説明すれば往来の昔話で地獄や黄泉の国へ行く物語から派生し、ゲーム的なファンタジー世界へと主人公が誘われる物語の様だ。
「だいたいこういうのって基本的にチートあるじゃん」
自身の肉体そのままの転移ではなく精神のみが移る転生という分類に相当する。
「能力もほぼデフォじゃん。身体能力とかまで肉体変わってんのにマジでデフォのままじゃん。何故か腐った目だけなんか引き継いで唯一の転生得点かっこハテナのイケメン要素が死滅してんじゃねーか。いらねぇよマジでフザケ晒せよ畜生」
幸い過酷な世界では無かった。トイレがある様に読むには良いが経験はしたく無いだろう近世以前程度の技術力の世界でも無い。
「ぶっちゃけ森の中で気が付いたときは魔法とか超期待したし、可愛い子にクソモテるのとか地味に期待したよね、うん。歩いたら公園だったけど」
ガンガンと扉が叩かれる。
「え?」
銀髪腐れ目男がビクッと。外から。
「あー、ちょっと良いかなー。なんかトイレでブツブツ言ってる変な人がいるって通報があったんだけど大丈夫?開けれる?」
大丈夫って聞いてるけど100%警戒の滲んだ問い。そりゃ便所で永遠とブツブツ言ってる奴とかヤベーもん。
「あ、ハイ大丈夫です」
慌てて立ち上がり水を流して扉を開ければ凄い不信感滲ませる警察官のお兄さん。
「あーお兄さん。公共の場所でね、あんまり大声でブツブツ言わない様にね」
「ハイ、スイマセン」
「あー、一応ね警察署に来てくれる?最近不審者情報があるから」
「スイマセンこれから面接なんで勘弁してくれませんか」
「あー、ちょっとノイローゼだったのかな。うーん……でもなぁ」
言外に怪しすぎるといった至極当然な感情を滲ませて警察官は足先から頭までジロジロと見てから目を見て。
「あー、やっぱり、ちょっと署まで来てくれる?」
「いや、こんな目してるけどそのリアクションは酷くないですか……。怪しいのは分かるけど」
「あー、そうだね。ごめんごめん。じゃ身分証で良いよ」
男は非常に困った。いや困ったってか焦ったのが正しいか。この世界特有のノリで今まで何とかなってるが、身分証の類はまだ持っていない。
「……あー、お兄さん。身分証は?」
「……今ちょっと持ってなくてぇ」
警察官の目がスっと鋭くなった。
「悪いんだけどね。身分証出してくれないなら決闘検挙させて貰うけど」
男は凄い汗を掻く。無いモンは無い。ベルトのホルスターからカードの束、デッキを抜き取った。
「あー、成る程ね。デュエルね……」
男が転生したのはトレーディングカードゲームっぽい世界だった。カードを使った決闘、デュエルで全てが決まる世界。決闘裁判が世界の理として存在するとんでもワールドだ。
手を洗って公衆便所から出れば警察官がデッキを取り出す。
「デュエル開始!!」
カードが勝手に浮いて其々の手に7枚。どう言う事?とか聞いてはいけない。何だったら彼らの周りに8枚の長方形のガラスみたいなのが浮いてるから。
そう言う世界だ。銀髪の男の様に受け入れるしか無い。
「第一ターン。ドロー」
警察官の手にカードが増える。
そう言う世界なので慣れて貰うしか以下略。
「コスト1を使ってカードを伏せる」
警察官の手からカードが一枚消えて足元に半透明のガラスの様なものが浮かび上がる。
「第二ターン。ドロー。コスト2を使ってユニットカード起動機兵ライトガルウィング召喚」
銀髪男の前に二本の翼の様な推進器を持つ人型のロボットが着地する。
あと。
【起動機兵ライトガルウィング】
バトルロイド・マキナー
コスト2
戦闘力1
効果・このモンスターを出した際、相手のデッキの一番上を一枚見る。
〔敵発見!!—起動機兵ライトガルウィング—〕
ってクソ大量の情報が頭に入ってくる。そして銀髪男の前の警察官のデッキの一番上が見えた。銀髪の男が指差して。
「起動機兵ライトガルウィング攻撃」
「トラップカード発動、緊急封鎖!!」
【緊急封鎖】
コスト1
効果・このカードは場に伏せたターンは使えない。相手の攻撃宣言時発動できる。
コスト1以下のユニットを二体召喚できる。
「ユニットカード境界都市の衛兵獣人と境界都市の衛兵祖人を召喚!!」
コートを着て巨大な武器を持つ虎の顔の獣人と同じくコートを着た男が警察官の前に現れる。
【境界都市の衛兵獣人】
ビーストマン
コスト1
戦闘力2
効果・このカードは毎ターン攻撃する
〔私に続け!!—衛兵長バウバ—〕
【境界都市の衛兵祖人】
ルーツマン
コスト1
戦闘力1
〔全員傾注。—衛兵長バウバ—〕
「衛兵獣人で迎え撃つ」
警察官が言えば虎の顔の獣人がロボットを殴り砕いてガラスの様に消えた。
「第三ターン。あー、何も出来なさそうだねお兄さん。境界都市の衛兵獣人と境界都市の都の衛兵祖人をコストに。5コストで境界都市の白義手の魔道士ラキ召喚」
片腕が白い義手の長髪の男が出てくる。そして警察官の手札が一枚増えた。
【境界都市の白義手の魔道士ラキ】
ルーツマン
コスト5
戦闘力3
効果・このカードのコストは最大2まで場のユニットカード1枚につき1下げられる。
・このユニットを召喚した時、手札にバウバと名のつくカードを一枚加えても良い。
・このカードが場にある限り自身の使うアタックカードのコストを1下げる。
〔恩返しですよ。—境界都市の白義手の魔道士ラキ—〕
「ラキで攻撃」
警察官の宣言により魔法使いが白い義手を伸ばして手を広げれば縦に浮いていた5枚のガラスのうち一つが砕けて銀髪男の手札が一枚増える。
銀髪男は溜息を一つ。
「第四ターン。ドロー。4コスト使ってベースカード第一機兵工場を発動」
【第一機兵工場】
コスト4
効果・このカードは発動されると場にセットされる。このカードが場にある限り機兵と名のつくユニットの召喚コストは1下がる。
〔同胞ヨ。待ッテイタゾ。—重砲機兵ヘビィガンロック—〕
なんか重砲が並ぶ金属製の巨大要塞が銀髪男の背に。
「量産機兵スクラップラインを二体、古代機兵ブラウンラスト一体召喚」
ガラクタを掻き集めた様な丸みを帯びた人型ロボット二体と茶色く錆び付いた細い人型ロボットが一体現れる。
【量産機兵スクラップライン】
バトルロイド・マキナー
コスト1
戦闘力1
効果・このカードは必ず負ける。
・このカードが墓地に行った際、デッキの一番上のカードを三枚見る。三枚の内ユニットカードを一枚墓地に置けば手札に戻しても良い。
〔私ガ死ノウトモ!兄弟ガ!同胞ガ!必ズ貴様ヲ倒スダロウ!!—量産機兵スクラップライン—〕
【古代機兵ブラウンラスト】
バトルロイド・マキナー
コスト1
戦闘力1
〔ナニ、闘志ハ錆ツイテオランヨ—古代機兵ブラウンラスト—〕
「第五ターン。ドロー。あー、雑魚を並べてコストにでもする気かな?4コストで境界都市の騎馬衛兵フッシャ召喚」
馬に跨り弓を握る猫の顔の女獣人が現れる。
【境界都市の騎馬衛兵フッシャ】
ビーストマン
コスト4
戦闘力4
効果・場にバウバが出ていればこのカードはコストを1下げて召喚できる。
・このカードが場に出ている間、バウバと名のつくユニットの召喚コストを1下げても良い。
〔バ、バウバ団長!!—境界都市の騎馬衛兵フッシャ—〕
「境界都市の騎馬衛兵フッシャで古代機兵ブラウンラストを攻撃」
猫顔の女獣人が矢を放って錆び付いたロボットを破壊。
「ラキで量産機兵スクラップラインを攻撃」
続いて魔法使いが丸い人型ロボットを破壊した。
「量産機兵スクラップライン効果発動!」
銀髪男がデッキを確認し、それを見せる。
「ユニットカードだ。手札に戻しますよ」
「あー、運が良いな。じゃあラキの効果でコストを1、カードの効果でさらに1下げてアタックカード発動。魔導爆炎弾」
【魔導爆炎弾】
コスト3
効果・コスト3以下のユニットを破壊する。
・場に魔道士・ラキと名につくユニットがあれば発動コストは1下がる。
〔オロロロロロロロ……!!—境界都市の白義手の魔道士ラキ—〕
「またユニットカードなんで手札に戻しますよ」
「本当に運が良いな」
「じゃあ第六ターン。ドロー。第一機兵工場の効果で量産機兵スクラップラインを二体無コストで召喚。その二体をコストに第一機兵工場の効果を重ねて3コスト下げて鉄拳機兵ラムダウン召喚」
巨大な鉄巨人が現れた。赤い装甲と巨大な六つの腕、握り拳はハンマーの様だ。その拳をカチ合わせて音を響かせ立ち上がる。
【鉄拳機兵ラムダスター】
バトルロイド・マキナー
コスト6
戦闘力9
効果・このカードのコストは最大2まで場のユニットカード1枚につき1下げられる。
・このユニットは相手のバリアを二枚破壊できる。
・このユニットは攻撃する際、戦闘力を3上げる。
〔兄弟、同胞ヨ!!待タセタ!!コノ私ガ殴リ切リ開ク!!—鉄拳機兵ラムダスター—〕
「更に3コストで第〇機兵工場発動」
巨大な球場の空飛ぶ要塞が現れる。
【第〇機兵工場】
コスト3
効果・このカードは発動されると場にセットされる。このカードが場にある限りドローしたカードに機兵・バトルロイド・マキナーのいずれかがあればもう一枚引いても良い。
〔ココデ我等ガ兄弟ト同胞ガ産マレタ。コココソガ我等ノ聖地ナノダ—不敗機兵ミリオントリガー—〕
「鉄拳機兵ラムダスターで境界都市の騎馬衛兵フッシャを攻撃」
銀髪男の宣言に従い赤い鉄巨人が拳を上げ女獣人を狙う。
「手札から境界都市の大警鐘を発動!効果で境界都市の義足巨人を召喚!!」
【境界都市の大警鐘】
コスト6
効果・このカードは相手の攻撃宣言時にも発動出来る。デッキからコスト3以下のディフェンサーを召喚しても良い。そのユニットは戦闘後破壊される。
巨大な鐘が出現し烈火の如くかき鳴らされれば紙束や本を抱えた義足の巨人が警察官の前に。
【境界都市の義足巨人ヤグドゥア】
ジャイアント
コスト3
戦闘力1
効果・他の味方ユニットが攻撃された際このユニットが代わりに戦闘を行なっても良い。
・このユニットが代わりに戦闘を行う際、ユニットの名前に境界都市とあれば、戦闘時に戦闘力を4上げる。
〔おう、クーウンの姉御—境界都市の義足巨人ヤグドゥア—〕
「境界都市の義足巨人ヤグドゥアで防御」
猫顔の女獣人に殴りかかった六腕ロボットの前に巨人が躍り出る。巨人は攻撃を受けてガラスの様に砕けて散った。
「まぁじかよ」
「あぁー、大人しく署に来てくれれば良かったんだ。お兄さんに後ろめたい事が無ければね。さて第七ターンドロー」
警察官が笑う。
「あぁー、さて切り札だ。随分と面倒な手札が増える前に潰さなきゃな」
手札を掲げる。煌々と輝いたソレ。
「境界都市の傭兵王バウバ召喚!!」
黒い騎馬に跨る犬顔の獣人が現れた。四肢を鎧に包みコート着ている。その手には身の丈を超えるサーベルが握られていた。
【境界都市の傭兵王バウバ】
ビーストマン
コスト8
戦闘力15
効果・他の味方ユニットが攻撃された際このユニットが代わりに戦闘を行なっても良い。
・このユニットが代わりに戦闘を行った場合、ユニットの名前に境界都市とあればもう一度防御できる。
・場にある境界都市と名のつくユニットの数分だけ戦闘力を1増やす。
〔戦況は—境界都市の傭兵王バウバ—〕
「境界都市の傭兵王バウバで鉄拳機兵ラムダスターに攻撃!!」
巨大なサーベルが六腕の巨大なロボット真っ二つにした。
「さぁターンコスト8以上のユニットカードなんて一般人は持ってないだろう。コスト5以下がいくら並んでも意味は無いし署に同行願おうかお兄さん」
「いやぁ、サレンダーはちょっと。第八ターン。ドロー、第〇機兵工場の効果でもう一枚ドロー」
「強過でしょそのカード」
「同感、それと俺も切り札だ。コスト8を使って重砲機兵ヘビィガンロック召喚!!」
【重砲機兵ヘビィガンロック】
バトルロイド・マキナー
コスト9
戦闘力10
効果・相手がターンの始めにドローする際、カード名か、コストか、種類を宣言する。カード名を宣言して正解すれば相手はドローしたカードを墓地に置く。コストを宣言して正解すれば相手のユニット一体の戦闘力を5下げる。種類を宣言して正解すればこのカードの戦闘力は次の自分のターンの最後まで戦闘力を5上げる。
・このユニットは攻撃する際、戦闘力を3上げる。
〔起動ノ同胞ガ居テクレレバ、我等ハ戦場ノ機神トナレルノダ—重砲機兵ヘビィガンロック—〕
青黒い鋼の装甲、巨大な重砲を両肩から四門生やす巨大ロボットが現れる。
「バッ、馬鹿な!!9コストだと!?だがバウバには勝てない!!」
「第一機兵工場の事、忘れてない?」
「あ!」
「軽盾機兵シングルブロックを三体召喚」
盾を持つちゃちなブリキ人形じみたロボットが三体現れた。
【軽盾機兵シングルブロック】
バトルロイド・マキナー
コスト1
戦闘力1
効果・他の味方ユニットが攻撃された際このユニットが代わりに戦闘を行なっても良い。
・このユニットは戦闘後破壊される。
〔恐ルナ兄弟達ヨ!同胞ノ勝利コソ我等ノ誉ダゾ!!—軽盾機兵シングルブロック—〕
「やってくれるじゃないお兄さん。しかも次のターンからは起動機兵ライトガルウィングでデッキを確認してくる訳か」
警察官がニヤっと笑う。
この後、ドロー補助系のカード設置されて3ターンに渡って動きを阻害したが銀髪男は普通に戦闘力で勝てなくてモンスターを破壊されて負けた。
普通に取り調べくらって牢屋に入れられたって事だ。
そして何だかんだを経て身分証を手に入れ、なんかの間違いかポケ◯ンで言うところのジムリーダー的な何かになった。
銀髪の男は言う。
「……やっぱ思ってたのと違くね?」