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20.(おまけ)侯爵邸での結婚披露パーティ

予告通り、微エロです。苦手な方はブラウザbackをお願いします

今月に入ってから侯爵領の街道を走る馬車が増えたが、ここ数日は貴族のそれが圧倒的に多くなった。

それもそのはず、今日はラグランジュ侯爵邸での結婚披露パーティがあり、その招待客が続々と押し寄せているのだ。

本来ならこういった催しは王都の屋敷で開かれるのだが、デュナン領とクレール領を結ぶ街道の開通式も兼ねることになり、領地での開催となった。

多くの招待客のために、たくさんの食材やもてなしの品を運ぶ荷馬車は、新設された街道を軽快に駆け抜けていき、今はそれが貴族を乗せた馬車に変わっている。何十台という馬車が行きかっても耐えられるよう、石畳を敷かれたその道は、後にクレール・デュナン線と呼ばれ、人々の暮らしを長く支える重要な街道となった。

エリアーヌの助力を得たロバートは無事、この街道事業をやり遂げたのだ。

これによりデュナン伯爵の名誉は回復され、再び姿を現した彼を社交界は歓迎した。

特に、正妻不在の彼は独身女性に人気があり、集まりに出るたびにたくさんの夫人に言い寄られているようだった。それはリオネルとエリアーヌの結婚披露宴でも同じことで、彼の周りには幾人かの女性がへばりついている。もっともロバート自身は再婚する気はなく、辟易している様子が見て取れた。


「君の父君はモテモテだね」

その様子を片目で見てクスクスと笑うリオネルにエリアーヌは、

「おうらやましいのではなくて?」

と意地悪く言ってみせた。

今日のエリアーヌは淡いブルーグレーのドレスを身に着けていて、それが新郎(リオネル)の色であることは明らかだった。

ネックレスとイヤリングには大粒のサファイヤがはめ込まれており、これもリオネルを表している。

リオネルは可愛い新妻(エリアーヌ)の耳元に唇を寄せ、

「わたしの色を身に着けた女神に言われても、説得力はないな」

と甘くささやき、ふたりはそっと見つめあうと、どちらからともなく触れるだけの口づけを交わした。


エリアーヌと結婚した直後、リオネルは決して閨を共にすることはしなかった。それはシリル曰く『リオネルがヘタレだよ』というのが理由であったが、一応弁明しておくと、彼はエリアーヌの気持ちが自分に向くまで待っていたのだ。

ジョアンヌの暗躍により拗れていたふたりの関係が修復したところで、リオネルは晴れてエリアーヌを妻とし、それからは猛烈な勢いで彼女を自分色に染めていった。

リオネルは、初心でなにも知らないエリアーヌに、こうして人前で口づけすることは、愛し合う者の間では当然のことで恥ずかしがる必要はない、と若干偏り気味の教育を施している。そのかいあって、エリアーヌはリオネルからの口付けを公衆の面前でも受け取るまでに成長していた。


「まぁ、エリアーヌ様。お熱いこと」

そう言って揶揄うのは社交界で知り合った彼女の友人のひとりだ。

「遠いところをありがとうございます」

エリアーヌは彼女に歓迎の言葉を述べると、リオネルもうなずいた。

「いつも妻と親しくしてくれて、ありがとう」

わざわざエリアーヌを妻と称する当たり、リオネルの惚気も相当なものであったが、そんなことは慣れっこになっている彼女は微笑んで、

「こちらこそ、夫ともども、エリアーヌ様のお茶会にご招待頂きまして、ありがとうございます」

と言った。


リオネルがエリアーヌに語ったようにデュナン領の経営術は、社交界の人間なら誰もが知りたがる内容のひとつであった。そこでエリアーヌは親しい人たちを呼んで、ちょっとした講習会を開くことにしたのだ。

そこには女性だけでなく、彼女のように夫を伴って参加するカップルも多くいた。領地経営は主に男性の仕事であるため、夫に学びの機会をあげたい、というのが彼女らの言い分だった。もちろん彼女ら自身も経営を学び、夫の支えになろうと努力している。

ラグランジュ侯爵としてのリオネルは、国家経営を視野に置く立場であるため、各地の産業が盛んとなり、国全体が豊かになっていくことは願ったりかなったりである。

もっともその準備に忙殺され、夫の存在を忘れがちになるエリアーヌには閉口していたが、そこは年上らしく上手く彼女をリードし、気が付いたら一日中ベッドで過ごしていた、なんてことにも成功していた。


「またご相談したいことがありますの、こちらで滞在している間にお時間を作って頂けると助かりますわ」

そう願い出た彼女にエリアーヌは、

「もちろんですわ。後ほど、スケジュールをお知らせします」

と請け負った。彼女と別れたあとでリオネルはエリアーヌをぐいっと引き寄せた。

「相談に乗るのはいいけど、新郎を一人寝させる気ではないだろうね?」

「ふふ。彼女の相談事は想像がついてますから、もう準備もできています」

あのご夫人の領地は港に近く、貿易が盛んだ。彼女に招待状を送ると決めたとき、たぶん相談されるだろうとエリアーヌは予め資料の用意を済ませておいたのだ。

「さすがはデュナンのエリアーヌだね」

リオネルはそう言って少し深い口づけを与えた。たったそれだけでエリアーヌは頬を染め、しっとりと潤んだ瞳は危険なほどの色香を漂わせ始める。

純粋無垢なエリアーヌをこんな風にしたのは他でもないリオネルで、彼はその仕上がり具合にうっそりと満足げな笑みを浮かべると、

「そろそろ行こうか」

と彼女を抱き上げ、主役のふたりは早々に寝室へと引き上げていった。


「おはよう、エリアーヌ」

翌朝、エリアーヌが目を覚ますと、リオネルが自分を見ている。

「おはようございます、リオネル様」

そう答えた自身の声がかすれていることに気づいたエリアーヌは、昨晩、夫に散々啼かされたことを思い出し、顔を赤らめた。

しかし、そんなエリアーヌを放っておくリオネルではない。

「なぁに?可愛い顔をして。誘ってるの?」

「違っ」

エリアーヌの返事を待たずにリオネルはその唇を奪い、再び、彼女を快楽の果てに導いた。


結局その日は一日中ベッドの上で過ごすこととなり、エリアーヌは友人の相談に乗ることができなかった。

「もう。リオネル様は酷いわ」

軽くぶつ真似をするエリアーヌにリオネルはしれっと言い放つ。

「なにが酷いの?せがまれても焦らしたこと?それとも一晩中、啼かせたことかな?」

その発言にエリアーヌは顔を真っ赤にし、もう知りません、と怒ったが、長年、彼女に恋をしてきたリオネルは、この程度ではへこたれない。

逃げようとするエリアーヌをあっさりと捕まえ、その耳元に、

「わからないから、教えてよ」

と甘く囁けば、エリアーヌはあっさり陥落してしまう。

エリアーヌはリオネルの熱に溶かされながら、

「彼女の相談は王都に戻ってからにします」

と、うわごとのように呟く。

それに対しリオネルは、

「それがいいね」

と賛成し、新妻への甘く蕩けるようなレッスンを再開した。

お読みいただきありがとうございました。これで本当に終わりです。


次作は短いですが、ほぼ書き終えておりますので、近々投稿します。どこかで作品を見かけられましたら、お読みくださいますと嬉しいです。

ありがとうございました。

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