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青に挑め  作者: ハイリ
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07 隣の友は小さく笑う

 薄暗い部屋の中。カーテン越しにも太陽が昇りつつあるのがわかるほど明るい日差しが差し込んでいる。ベッドには頭から布団をかぶった主がいるものの置きだす様子はない。すると・・・。


『 ジリリリリッ!』


 と目覚まし時計の音が鳴り続ける。ベッドの主はなかなか動き出さなかったがやっと動き出し目覚まし時計へ手を伸ばす。


 ベルを止めたかと思うと手を伸ばしたまままた動かなくなる。そして、数分後・・・。



 誰かが部屋に入ってくる。


「そーらー!早く起きないと遅刻するよ!」


 勢いよく布団をはがされ、カーテンを開けると部屋に明るい灯が入る、がベッドの主は動かない。


「新学期2日目なのに遅刻したって知らないからね!」


 そう言って布団をはがした人は部屋を出ていった。


 静かになった部屋でしばらくするとベッドの主人がもぞもぞと動き出す。目は開けきっておらず髪はボサボサ。体を起こしたとあとも動かずじっとしている。やがて、欠伸と伸びをして窓の外を向くとやっと目を開けて動き出す。




 「お母さん、行ってきまーす。」


 「気を付けていきなよー。」


 今日は2年に進級し2日目の登校日。お母さんに出かけのあいさつをして外へ出る。


 最近、春の陽気が心地よく布団の中を出るのがつらい。というか季節はそんなに関係なく起きるのは大変だったりする。今日も母さんに起こされてその後にやっと起きることが出来た。正直目覚まし時計は意味がない状態になっているような・・・。


 新学年になり新しいクラスは殆ど面識のないクラスメイトだった。


 でも、友達の彩が同じクラスでちょっと・・・結構嬉しかった。それに、昨日は春休みにあった如月くんともあったしなんだか「新生活!」って感じで心が弾む。


 如月くんが同じクラスになったときはビックリした。最初はなんか見たことある気がすると思っただけだったけど、近くでみてたらあったときみたいにちょっとおどおどして子犬みたいな雰囲気で思い出した。


 彼はこの春に引っ越してきたみたいでまだまだ慣れない環境で大変みたい。昨日学校の案内をしている時は少し打ち解けた気がしたけどいろいろ溶け込もうと一生懸命なようだった。



 少し歩くと前に知った背中姿が見えた。


「あーやっ、おはよ!」


 そう声をかけて振り向いた彼女は私の友達の須藤彩(すどうあや)。同じ中学出身でその当時はあんまり接点がなかったけど高校1年で同じクラスになり仲良くなった。


「おはよう、空。空にしては早い登校じゃない?」


 その通り。いつもは遅刻・・・とまではいかないものの遅刻ギリギリになることもあったり。でも、今日早く起きれたのは・・・。


「多分、新学期でワクワクしてるからじゃないかな。」


「確かにいつもイベントごとの時とかは少し早く集合するもんね。ほんと、落ち着かないよね。」


 そう言って彩が小さく笑う。珍しい彩の笑顔を見れた今日は運が良いのかもしれない。そう思いながら学校へ2人で向かう。



 教室に着くと自分の席に鞄を置き、彩の席まで行く。彩は本を読もうとしていたみたいだけど私が近づくと本を閉じた。話をする意思ありとみなして質問する。


「そう言えばまたクラス委員やるんだね。こっちは早くホームルームが終わったから良かったけどよくやるよね。」


「まあ、自分のさじ加減で決定できることもあるからちょっと楽しいし。他の面倒な役を振られるよりは仕切ったほうが楽だから。」


 そう淡々と話すが本当だろうか・・・。


「んー、わかんない。私はやるのはやだなぁー。」


「空はまとめるより輪を乱すほうが得意だもんね。」


 そう言われちょっとムッとする、がその通りなので反論はしない。というか彩に対して反論しても大体負ける。けど、なんとなく本音で話している彩を見てると楽しい。


 しばらく、話していると彩が。


「そろそろ、時間になるから席についたら?」


 時計を見るとチャイムが鳴るまであと数分。


「うん。それじゃ、またー。」


 彩にそう声をかけながら自分の席に向かうと如月くんが席にすわっている。すこし、猫背気味で小さく見える。


「如月くん、おはよー。」


 声をかけると返事をするが敬語で話しそうになったのを言い直す。それを見て笑ってしまった。


「無理しなくてもいいのに。」


 と言うと。


「でも、昨日決めたから気をつけることにしたんだ。」


 そう話す彼は頑張ろうと背伸びをしているようで微笑ましかった。それを見てちょっと応援したくなりエールを送る。



 今日の1限目はLHRの時間だ。恒例の席替えが始まり、先生が作ったであろうクジを引くことになった。ちなみにじゃんけんで負けて一番最後にクジを引くことになった。


 クジを引くと廊下側の方席のようだった。


 ちょっと如月くんが心配になり声をかける。


「どうだった?」


「この後ろの席になったみたい。」


 そう言ってクジを見せてくれる。番号は『12』で確かに少し後ろへ下がったところだった。席は離れたけれど仕方ないと思い、彼の事が心配になりながらも席を移動する。


 新しいに着くとちょうど左側に彩が移動してきた。


「あーやー!隣なんだ!」


「そうみたい、よろしく。」


「隣が彩でよかったー。これで心細くないよー。」


「空ならそんな気にならないでしょ。さっきも隣の席の人と話してたし。」


 如月くんのことを言われ彼の方を少し見る。すると、何かを拾って後ろの席の人へ渡していた。彩は私の見ている方を見て。


「彼と結構打ち解けてたみたいだけど?」


 と言ってまた私を見る。


「んー、なんというか構ってあげたくなるというか心配になっちゃうというか・・・そんな感じなんだよね。」


 そう答えた私に対して彩は「ふーん」と反応して私の目をジッと見る。少し居心地が悪くなり彼を見るとちょうど彼と視線が合う。すぐにまた視線を逸らす。


「転校して心細そうだし助けてあげなきゃ!」


 私の返しに満足したのか彩は。


「それじゃあ、ちゃんと気にしてあげないとね。」


 小さく笑いながら私をからかった。

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