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作為的正解


目が覚めて、ふと昨日の事を思い出すと恥ずかしくなった。

昨日の夜に彼と電話で喧嘩をしてしまったのだ。


内容も毎回のごとく、とても下らない。

彼が私のメッセージに既読をつけないくせに、ゲームにはログインしていたから、電話越しに泣いて「死ねよ!死ねよ!」と言いまくってしまったのだ。


私は一階の台所から包丁を取り出し、自分を真っ二つにカットした。

恥ずかしい失敗はなかった事にしなくては。



そして。


新しい私は、彼との出会いから始める。

前の私は彼の後輩だったけど、今の私は彼の同級生。

彼にまた告白させるのは造作もない。

だって私は、彼の趣味も、家族も、携帯の暗証番号も、お気に入りのケーキ屋さんも、電車の時間帯もぜんぶわかっている。彼の好みの出会い方も、彼が何を言えば喜ぶのかも、流れ作業のようにわかっている。


彼はまた私に「好きだよ」と言う。

私は彼の恋人になった。


今度は前と同じ失敗はしないようにしようとした。


けれど、私はついカッとなってしまい、また彼と喧嘩をしてしまった。

今度は未読スルーの問題ではない。

私は反省したから、未読スルーくらいどうでもいいし、彼も今の私には一緒にゲームをしようと誘うようになった。


ただ今回は些細な事でお互いに口論がヒートアップし、そして駅の改札で泣きじゃくってしまった。

しかも、履いていたヒールを彼に投げつけ、持っていた鞄も彼に投げつけ、スマホもその場で床に叩きつけた。


ほんとに些細な事だったのだ。

私はたださよならのぎゅーをして欲しくて、でも彼は外では難しいという、ちょっとした若さと理性の熱の差だ。


家に帰ってから恥ずかしくなった私は、灯油を頭からかぶり、ライターで自分を燃やし尽くした。



次の私は高校生だった。

高校生の私は、大学生の彼とは出会いが難しい。

私はSNSを使い、彼と同じ趣味を装い、オフ会を得て彼とまた恋人になった。

高校生の私から見た彼は今までより大人でかっこよかった。

彼は私と一緒にゲームをしてくれ、デートの終わりには必ずぎゅーをしてくれた。


けれど、私は不安になった。


私は彼だけなのに、彼は私じゃなくてもいいのだ。

だって、彼は今までに、前の私や、その前の私にも愛を囁いた浮気者なのだから。


私はどうしようもない怒りと悲しみを彼に暴力でぶつけながら泣きじゃくった。「浮気者!死ね!死ねよ!」と私が殴っても、彼は何のことなのか理解できない。


私が、元カノがいたと言う事実が許せないと伝えると、彼は「彼女たちのことは忘れる」と言う。

彼は、前の私やその前の私を忘れようとすると言ったのだ。私は彼を覚えてるのに、彼が忘れていいわけがない。

一生、前の私のこともその前の私のことも覚えて、傷ついていてほしい。

でも、だからといって今の私は今の私以外と彼が付き合っていた事実が許せない。


彼からしたら私の怒り方はきっと理不尽かもしれない。

私も、翌日になって、恥ずかしくなった。


次はもっとうまくやらなくては。


私は線路に飛び込み、電車で挽肉になった。



今度の私は社会人だった。


社会人の私は今までの私よりお金がある。

私は彼とまた上手く繋がり、惚れさせ、恋人になった。


私は今までの私では行けなかったデート場所に彼を連れて行けることが楽しかった。

年上の私から見た彼は今まで知らなかったかわいい面もある。


彼は、私のメッセージには必ず返事を1時間以内にして、毎日電話をかけ、元カノのかつての私たちの話をせず、デート帰りにハグをせがむ。


そして、私は彼が鬱陶しいなと思った。


私は毎日働いているのだから、毎日電話する時間はないし、メッセージも、返事をしないと連投で来るのも負担だ。

外でハグだって、私は学生じゃないのだから、年齢を考えてほしい。


私は、彼のメッセージを未読スルーするようになった。


二週間ほどして、彼が死んだ。


部屋で首を吊ったらしい。



後悔で溢れる涙を拭う私に、男性が「あなたのせいじゃないですよ」と優しく微笑む。


彼は最近出会ったばかりの人なのに、私とすごく趣味が合い、好きなケーキ屋さんも同じなのだ。


私のことをまるで昔から知ってるみたいに、何が嫌で、何が好きかをわかってくれる。



私は、この人となら上手くいくかもしれない。



End.

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