金国の姫
さすが金国。金の宮……。と、言いたいけれど、ぶっちゃけ目が疲れる。
金の宮の侍女が慌てて金国の姫の元へと走る。突然の訪問……に関しては、初日に金国の姫も私を訪ねてきたわけだから咎められることはないとは思うけれど。
待つこと5分。
思ったよりも早く金国の姫は現れた。
控えの間に。謁見の間に私たちを通さないというのは客人として歓迎はしないという意思の表れなのか。
顔色が若干すぐれないように見える。
表情を見るために、目つきを隠す布は装着した。
怒っていると誤解されないように。仲良くなるのが目的だし。いや、訪問の目的は嫌がらせの犯人探しだっけ?
「何しにいらしたの?二人そろって。しかも、不吉色の姫と不気味色の姫。闇と血が手を組んで何を企んでいらっしゃるのかしら?」
うん。
これは嫌がらせをしていると思われても仕方のない言動ですよね。
「一つおたずねしたいことがありますのよ」
スカーレット様が一歩前へ出て金の姫の正面に立つ。
「背が黒くて、胸が黄色い鳥をご存知?」
スカーレット様の顔色が変わった。
明らかに、動揺も見て取れる。
え?ちょっと、本当に嫌がらせの犯人?
「はっ。知っているわ……キビタキ。金国にならどこにでもいる鳥よ。それがどうかなさって?」
キビタキというのか。鳥の名前。
「それは、あなたの方がよくご存じなのではありませんか?」
スカーレット様の言葉に、金国の姫は、額に汗をにじませた。
「何を私が知っているというのかしら?キビタキのことなど知りたくもない。私がこの世で一番嫌いな鳥よ。見たくもないし、話もしたくないわっ!」
金国の姫がぐっと私とスカーレット様を睨み付ける。
「まさか、私が死ぬほど嫌っていると知っていて……嫌がらせのつもりで、あの忌まわしい鳥の話をしに来たの?」
はい?
なんか、嫌がらせの犯人探しに来たスカーレット様が逆に嫌がらせをしに来た人間にされかかっています。
「すいません、そんなつもりではなくて、えーっと、キビタキといいましたか?あの鳥が忌まわしいってどうしてですか?そこまで嫌うのって、半分黒いから?黒くて不吉な色をしているからという理由なら、えーっと……」
そこまで金国の人は黒色を嫌っているのかと思うと、少し悲しくなってきた。
落ち込みかけた私の様子を知ってか知らでか、スカーレット様がズバリと金国の姫に切り込んだ。
「あなたの言う忌まわしい鳥の死体が赤の宮で見つかりました。忌まわしいと思っている鳥であれば、嫌がらせに使うには最適ですわよね?」
スカーレット様の言葉に、金国の姫の息がひゅっと音を立てる。




