金色
「あら、ということでしたら、逆にこちらの声も仙皇帝宮に届くのではなくて?例えば庭の奥で歌を歌えば仙皇帝様に美しい声の姫として見初められる可能性が……香りも届くのであれば、香油で磨き上げて庭の奥に……」
「あ、だめ!それはだめ!」
強い匂いは苦手って言ってたし。逆効果になっちゃう。
「あら?仙皇帝陛下に近づく姫が気に入らないのかしら?」
「違うよ、スカーレット様が妃になりたいならば全力で応援するから、ダメなの。なんか臭いの苦手だって。あ、臭いんじゃなくて、えーっと、強い香りの香油の匂いが、仙皇帝陛下は苦手だって……聞いたから、あの……」
本当かどうかは確かめてないというか、どうやって確かめればいいのか分からないので、レンジュやマオの言葉を信じるしかないんだけど。
「それはよかったわ……」
スカーレット様がほっとした顔を見せる。
「私、肌が弱くて……あまりいろいろ肌に塗りこむのが本当は辛くて……」
スカーレットさまが顔に手を当てる。
「顔だけじゃなく、体もひどいものよ……肌はボロボロ」
目を細めてスカーレット様の顔を見る。化粧はしているものの、肌の凸凹間は隠しようもない。
目を細めなければ見えないし、すごく美人だからいいじゃんと思っても、本人にとってはとても深刻な問題なんだろうな。
全身か……。何が原因なんだろう。
本に書いてあったのは、肌の乾燥が原因となるものがあるとか、何かに対してアレルギーがあるとか……。うーん。
原因が乾燥であれば、それを防ぐような手立てがあれば……。保湿。
「さぁ、無駄話はこれくらいにして、はっきりさせに行きましょう!」
スカーレット様が、ぶんぶんと大きく頭を振ってずんずんと金の宮の庭に向かって歩き出した。
ああ、ちょっと待ってください。
赤みかかった土が、黒の宮では黒味がかった土に変わり、金の宮の庭に入ったとたんに、金の土……いえ、金の砂。
手前は金の砂地が広がり、奥に行くに従い見たことのない木々が生い茂っている。
本で読んだだけではまるっきり想像がつかない世界が広がっている。
土が……いえ、砂……。地面がこんなに美しく金色に光っているなんて……。
「何をあんぐりしていらっしゃるよ?控えの間はこちらよ、いらっしゃい」
スカーレット様に手を取られて、金の宮の控えの間に入る。
「うわぁ」
金の宮の控えの間は……。金ぴかです。
なんというか、床がかろうじて板張りで板の色が見えてはいるんだけれど、壁も天井も金箔で覆われている。……金箔だよね?金でできてるわけじゃないよね?




