みみず
何か言いたげな顔。
う、ふふ。ふふ。苗子はきっと私のことわかってくれてるわ。
嬉しくなってちょっと涙が出そうになった。……ああ、やっぱり、いくら本の妖怪といえども、孤独には弱いんだわ。
親兄弟だけでなく、周りにいたすべての人間がいなくなって一人。しかも、初めての場所……そりゃ、不安。他の姫様たちはどうしたんだろう。なれるまで。妹たちの話も、もっと聞いておけばよかったなぁ。
私は本に夢中で、話を聞くよりも本を読んでいたいと思っていたし、妹を初め周りの人間は、私が後宮に行くことはないからと話を聞かせても仕方がないと思っていて聞かせようとしなかったし。
……急に後宮行きは決まったし、迎えが来るまでの2日間は、私が行きたくならないようにと、後宮のいいところを妹たちが必死に教えてくれようとしただけで……。ドレスは3日に1度はたらしいものが欲しいと言えば、ちゃんと貰えるとか。宝石類は、3日に1度では侍女たちが眉を顰めるようになるので得策ではない。誕生日や、何かの記念日をでっち上げるといいとか。
いや、妹よ、記念日でっち上げって何?と聞いたら「後宮に入って1か月記念日」とか何でもいいと……。怖いわ、妹3。
「きゃぁっ!」
悲鳴が上がる。スカーレット様の侍女の一人だ。慌てて両手で口をふさいだ。
「どうしたの?」
声をかけると、青ざめた顔で、ハンカチを取り出し広げる。
「姫様のお目に触れるようなものではありませんので……」
と、先ほど私がちょこっと掘った地面にハンカチをかぶせようとした。
何?
目が悪いので、立ったままではさっぱり分からない。
しゃがんで、侍女が気を使った目隠しのハンカチを持ち上げる。
「あ!」
声をあげると、侍女が震えた声で声をあげる。
「だ、大丈夫です。見た目は、不気味ですが、その、毒を持っているとか、そのようなことはないと……」
「ミミズだぁ!」
そこにいたのはミミズだった。
にょろりん、うねりんとしている。
「うっ」
スカーレット様も侍女たちもあまりよい顔をしていない。
「えーっと、ミミズがいる土地は、作物がよく育ついい土なんですよ?だから、いたほうがいいんです。呂国は王宮の庭でもしょっちゅう顔を出してますよ?」
スカーレット様が顔をしかめたままミミズの姿を見る。
「……朱国の王宮は庭の大半はレンガが敷き詰められているから初めて見たわ……ミミズっていうのね?」
「本で読んだところによると、風邪薬の原料にもなっているんですって。だから、見たことはないけれど、口にしたことはあるかもしれませんよ?」
と、ミミズはそんなに特別な存在じゃなくて、身近な存在だと教えようとしたけれど、どうやら失敗。
「鈴華様っ!」
苗子が慌てて私の口をふさぎにかかる。服の上から、腕をつねられた。
ぎゃっ!
すごい、使える主の腕をつねるなんて……。
私の失態を止めようと、そこまでしてくれるなんて。
苗子、しゅき!だいしゅきー!




