土
「本当だ!スカーレット様すごい!目の付け所がすごい!」
私は、生えている植物がここを境にどう違うのか確かめようと顔をあげていたから、土のことなんて全く気が付かなかった。
しゃがみ込んで土を見る。
確かに、確かに!
「ほら、見てくださいスカーレット様!呂国の土は黒いでしょう?黒の国です。黒は不吉なんて馬鹿にする人もいますけれど、黒い土は栄養がたっぷりな肥沃な大地の証明なんです。肥沃な大地だからこそ、呂国では作物の生育もよく、食べるものが不足して民が飢えることもないんですよ。だから、まぁ、仙皇帝様の寵愛がうんぬんで、国がなんたらとかもどうでもいいんです」
と、土を手の平で彫り自慢げにスカーレット様に見せる。
スカーレット様がふんっと、鼻息荒く赤い土の上で両手を腰に当てた。
「確かに、魅力的ですが、朱国の土にもいい点はありますは。ここの土はさほど赤くはありませんが、もっと赤い土が取れる山があります。そこから取れた赤土は染料になりますし、赤粘土は、レンガや素焼きの焼き物に適しています。たくさん算出されますから、わが国ではレンガの生産が盛んで町と町をつなぐ街道はレンガ時期になていて馬車の移動にとても便利になっていますわ」
スカーレット様が胸を張る。
「スカーレット様……好き……」
思わず漏れた感想に、スカーレット様が顔を赤くした。
「な、何を突然っ!」
「だって、自分の国のことが好きで、自分の国のことを勉強してるんですよね?素敵ですっ!いや、でも、国が好きなら、国のために仙皇帝妃を目指そうとは思わないの?」
「同じよ。朱国も不吉だて言われるけれど、レンガを敷き詰めた赤い道のおかげで、交通が発達している。だから、国全体が大きな一つの町のように機能している。作物の育ちの良い土地で作物を作り国全体に行き渡らせることができますわ。それに、赤い宝石の産出量も多いですから、外貨を稼ぐ手段もありますわ」
すごい、すごい、すごい!
「赤の道と呼ばれる道があるというのは本で読んだことがありますわ!赤の道って言葉だけではちょっと想像がつかなかったのですが、赤い土で焼いたレンガが敷き詰められた道……それが国じゅうに張り巡らされているなんてすごいっ!朱国はすごいですね!国の端から端に移動するのも、呂国よりずっと楽なんでしょうね!」
と、そこまで口にして、はっとする。
国の端から端まで楽に移動できたら、本で読んだオイシイモノを食べにほいほいとあっちにふらふら、こっちにふらふらと出かけるつもりでしょう……と、長年私に仕えている人があきれた顔をすると思ったんだけど。
よく考えたらここにはいなかったんだ。
しゅんっと肩を落とすと、微笑んでいる苗子と目が合う。




