善行に満足
「大丈夫ですよ。皆さま自由に発言してくださってここでは私が一番の新参者ですから、いろいろ教えていただかないと」
苗子さんが小さく頷いて頭を下げていた楓と楓ママに頭を上げさせた。
それから、一人の年かさの女性は庭師として紹介される。
「最後に、彼女たち3名が鈴華様の侍女となります」
うん。黒の宮の侍女になりたくないと言っていたのはこの3人かな。まぁどちらでもいいや。
「苗子、あなたも私の身の回りの世話をしてくださるのよね?」
「はい、もちろんでございます」
さて。では解放してあげましょう。
黒の宮で働きたくないという人たちを。ここから。
「では、必要ありません。苗子一人で結構です。その3名、それから湯あみも一人で結構ですから、そちらの4名も必要ありません」
私の言葉に、この場の全員が息をのんだ。
そりゃそうだろう。一国の姫の世話をする人数としては、20名でも少ないくらいだというのに。7名必要ないと言ったのだ。
「いや、あの……必要ないって……」
侍女の一人が口をパクパクしている。
素直に喜べばいいのに。
黒の宮で働きたくなかったって言ってたよね?
ちょいと首をかしげる。
ああ、私の表情が読めなくて真意がつかめないのかな。
目元を覆っている長い前髪をかきあげ横に流す。
これで私の目元は見えるだろう。もう、目を細めることはできないので、皆の顔は焦点が合わなくてぼんやりとしか見えなくなった。
もう、表情までは分からない。
動きだけを見ると、なんか全員固まってしまっている。
あれ?
目を細めて怒っているような表情はしてないつもりだけど。眉根でも寄ったままになってました?
笑っておこう。
にこっと。
「言葉通りですよ。あなた方は、ここには必要がありませんので、黒の宮を辞めてくださって結構です」
小さな悲鳴のような声が上がる。
ん?表情が見えないから、喜んでいるのか怒っているのかもわからない。
「苗子、料理場は6人と言っていましたが、人数が減ると作る量も減りますよね?それだけ必要ですか?」
私の言葉に、苗子がすぐに頷いた。
「4人もいれば十分かと」
調理担当と紹介された人から声が上がった。
「ま、ま、待ってくださいっ、お願いです、辞めさせないでくださいっ!」
「私も、料理の腕は確かなんです、決して黒の宮だからと手を抜いた料理をしませんから!」
ん?
黒の宮だからと手を抜いた料理をする人がいるみたいな言い方ですね?
「今声を上げた二人に辞めていただきましょう。残りの4人は黒の宮で5年以上勤めている者です」
なるほど。
声を上げた二人は、黒の宮で新しく働く人で、ちょっと不満だか不安だかがあった人ってことかな。
だったらちょうどいいですね。
「では、今言った9名はどうぞお帰りください」
あー、いいことした。
ここで働きたくないという人を、ここから解放してあげたんだもん。半年も我慢させるなんてかわいそうだし。
読んでくださりありがとうございます。
鈴華、さっそくいいことしました(本人談)
苗子「……、……、……、」
使用人「Σ( ̄ロ ̄lll)」
鈴華「もっと素直に喜んでいいのよ?」
さて。どうなることやら?
(´・ω・`)……。ん。
今日の更新はここまででーす。また明日よろしくお願いします。
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