せっかくです
「ねぇ、鈴華様、お時間はあるかしら?」
「え?はい。もちろんです!」
ちらりと3粒のまま数が変わらないチョコレートを見る。
「そちらは持ち帰って宮でゆっくりお召し上がりになって」
え?いいんですか?
「スカーレット様、ありがとうございます!」
しゅき!スカーレット様しゅき!
餌付けされたわけじゃないですよ。私のことを思って、そう声をかけてくれた優しがが好きなんですっ!
餌付けされたわけじゃないですから、決して……ええ、違うってば!ちょ、かわいそうな子を見るような目を向けないでって!
「それよりも、少し付き合っていただけるかしら?」
「へ?どちらに?」
スカーレット様がにこりと微笑む。
「友達を増やしたいのでしょう?でしたら、一緒に金の宮と紫の宮へ行きませんこと?」
スカーレット様の発言に急いで立ち上がる。
「それは、えっと、スカーレット様も、皆とお友達になりたいということですか?」
みんなで仲良く!
素敵!
スカーレット様が微妙な顔をした。
ん?
スカーレット様は確か6年、後宮の先輩だった。ってことは……。
「もしかして、スカーレット様は、すでに金国の姫とも藤国の姫とも友達で、私を紹介してくれるっていうことですか?」
すごい!
それって、友達になるハードルが下がるんじゃない?スカーレット様、優しい!
「いいえ、残念ながら、私たちは友達ではありませんわ。……後宮の姫たちは、張り合うものであり、仲良くするものではない」
「そんなっ!」
「時としては相手を妨害し、嫌がらせをして後宮から追い出すもの……」
「ひどいっ!」
「……と、思っておりましたから。お互いになるべく接触もせず過ごしてきました。今の金国の姫が来たのが3年前。藤国の姫は4年だったかしら」
過去形で話をしたわよね?
「私が後宮に入ったときにいらした方はそういえばもう誰もいないんですよね……あの時の方々はそれはもう……誰がこの後宮で一番であるかと、そればかりで……」
お?
何があったんだろう。気になるけど、さすがに思い出してつらそうな顔をしているのに、何があったのか根掘り葉掘り聞くほど鬼畜ではない。いくら、いろんなことが知りたく手たまらないと思っても、そこはね、わきまえてます。
「どの姫も同じようなものだと思って知ろうともしりませんでしたが、もしかすると、鈴華のように……嫌がらせをしたり人を蹴落としたりすることに興味のない方かもしれない」
え?それって?
「せっかくなので、はっきりさせましょう。あの鳥の死体を赤の宮に放り込んだ犯人が誰なのか」
「スカーレット様、ちょ、友達になりに行くんじゃないんですか?」
犯人探し?




