ちょこ
まだ、話には続きが?というか、この話はどこまで続くの?そりゃ、話も聞きたいけれど、味も気になって。もし、これ、ずっと終わらない話ならどうしよう。でも、話を聞いてから味わいたいと言ったのは私だし。
「国王が、王妃に薬を飲ませたところ、たいそう王妃はその薬……まぁお菓子ですけれども、お菓子に感激し国王との仲がむつまじくなりお世継ぎに結ばれましたわ」
おお!ハッピーエンドだ!
「そのときつけられたこのお菓子の名前が……と、毒味がまだですわよ?」
つい、話は終わったとばかりにお菓子に手を伸ばしたらスカーレット様ににらまれた。
うひー、ごめんなさい。
「苗子、苗子」
「はい。毒味をさせていただきます」
と、苗子がお菓子を一つ口に入れた。
みるみる表情が恍惚としたものに変わる。
「こ……これ……は、今までに……食べたことのない味で……」
「苗子ぉ」
美味しいのね、美味しいんでしょう!味わってる、堪能してる、そうじゃないよ、忘れてる、忘れてるっ!
「あ、はい。鈴華様、特に問題はありません」
オッケーが出た。
「いただきますっ!」
飴玉サイズの黒いお菓子を手に取り口の中に入れる。
「!!!!!なぁ、何これ!な、何これ!」
語彙崩壊。
「薬の名は、血寄濃霊杜……血を濃く一点に寄せる霊薬……という意味で名づけられましたが」
「とろぉーりと口の中で解けて、まろやかに広がる。甘さと苦みが何とも言えないおいしさで……苦いのがこんなにおいしくなるなんて……ああ鼻に抜ける独特の香りも素晴らしく……初めての、本当に初めての体験です……なんと、言いましたか、えーっと、血寄……」
「お菓子の名は、チョコレートですわ。略してチョコと言いますわ」
チョコ……。
「チョコのおいしさにあらがえず、黒い食べ物は不吉なんて言う者などチョコが食べられる立場にあるものは言いませんし、チョコを食べたことがない者も朱国の王家の血筋を絶やさなかった血寄濃霊杜の話は知っていますから、不吉だとは言いませんわね」
「美味しいよぉ、これ、あの、もう一ついいかしら?」
小箱の中に残っているチョコはあと3つ。
「ふふふ。チョコ、美味しいでしょう?」
「はい!とても美味しいです!」
「このチョコを使った他のお菓子も美味しいのよ」
スカーレット様n言葉に、思わずたれそうになったよだれを隠すようにハンカチで口元を隠す。
「ねぇ、これ、一国の姫としてどうなの?」
スカーレット様が、苗子の顔を見た。
「はい、教育中でございます」
苗子が同意の代わりにそう答えた。
う、苗子の方から冷気が。これ、帰ったらビシバシ鍛えますからってこと?




