薬
「要約させていただきますと、スカーレット様のお話がとても興味深く、楽しくて続きが聞きたい……ということかと」
そうよ!それ!
苗子ならわかって貰えると思ったわ!
さすが苗子!しゅき!だいしゅきぃー!
「あら?そうなの?あまりにもじーっとお菓子を見ているものだから、話はいいから早く食べたいと思っているかと」
ふえええええっ?
「そりゃ、味も気になりますけど、話を聞くのは大事だと思うんです!大事っ!お菓子にまつわる話を聞いてから食べたら、絶対美味しさ倍増ですよ!お菓子の歴史に思いをはせながら味わうお菓子の味を想像すると……」
スカーレットさまがふいっと私の顔から眼をそらした。
苗子が慌てて、私にハンカチを手渡す。
あら、失礼。よだれでもたれてましたか?
「ふっふふふふっ。じゃぁ、続きを話ますわ。ふふふ、ふふ、挙句に、当時の国王がお触れを出したんですよ。この薬を美味しく食べられる方法を見つけた者に褒美を取らすと」
「ええー!国が?」
「まぁ、国王は切実だったんですわ。なんせ、滋養強壮のお薬と言われてもたらされたのに、苦いということが理由で飲めないのでは……その、世継ぎを作ることにかかわってきますからね」
「滋養強壮の薬?」
で、世継ぎって、ああ、夜のなんか元気になる……本にもなんか出てきた。媚薬とか精力剤とかいうのよね?
本に出てきた限り、なんか思いを遂げるために、こっそり相手に飲ますとかそういう場面でばかり出てくるから媚薬と呼ばれるものにはいいイメージがないんだけれど……。精力剤の方も、色ぼけじじぃが若い娘をいいようにするイメージが本では強くて。ああでも、そうか。世継ぎ問題が絡み必死になるとか……かぁ。切実だなぁ。
「それで、街の薬剤師が美味しく飲める方法を編み出しました。製法は、わが国の秘伝ですのでお教えすることはできませんが……。国王が早速出来上がった薬を口にしたところ……いくらでも飲めるようになったんですが、薬としての効果はほとんどありませんでした」
「え?そうなの?だったら、えーっと、怒り狂った国王が、このお菓子は国から消すとかしたりしないの?」
スカーレット様が少しもったいぶったように首を横に振った。
「いいえ。あまりにも美味しくて、薬ではなくお菓子として食べられ続けているんですよ」
「そんなに、美味しい……」
ごくりと唾を飲み込む。
「食べても、いいかしら?」
と、スカーレット様を見ると、スカーレット様がにっこりと笑う。
「あら?その後の国王がどうなったか知りたくはありませんの?」
ふえ?




