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「とても美味しいものをいただきましたから、こちらからもお礼のお菓子を一つ」
と、スカーレット様が、手に小さな籐で編まれたかわいい小箱を持って戻ってきた侍女に視線を向ける。
侍女は、恭しく小箱をテーブルの真ん中に置くと、蓋を開けた。
「こ、これは……」
目がまんまるになる。
小箱の中に入っていたのは、飴玉くらいの大きさの、黒くてまん丸な塊。
それが5つほど入っている。
「ふふっ。見事に黒いでしょう?これは、朱国でも一部の上流階級の物しか食べられない特別なお菓子」
これが、お菓子?
箱の中に入っているのはまん丸でかわいい形をしている。黒飴とも黒ゴマ団子とも違う。黒だ。
「その昔、薬として朱国に伝わった物が、苦くてとても口にするのが困難で」
まぁ、良薬口に苦しといいますし、苦い方が効果が高そうな気はしますよね。
「少し口にしたからと、目に見える効果もなく、大量に摂取すれば効果があるんじゃないかと思った者たちが、食べやすいように何とかしてくれと薬師に命じたの」
はぁ。
食べやすいようにか。
「薬師たちは困って料理に混ぜ込んで何とかならないかと料理人に相談して」
目は黒い謎のお菓子にくぎ付け。そして、耳はスカーレット様の話にくぎ付け。
知らないお菓子、知らない話、今まで読んだ本の中には書いてなかった。
どんな味だろう、どんな話だろう。ワクワク。
「ああ、ごめんなさい。こんな話つまらないわよね、毒味を」
ふえぇ?
ちょっと、まって、すかーれと様!途中で話を辞めないで!
なに、その拷問……。
「スカーレット様、これ、いやがらせでしょうか?ねぇ?ねぇ?違いますよね?」
スカーレット様がはぁ?と大きな口を開けた。
「いやがらせ?まさか、呂国の人間が、黒いお菓子を出されて嫌がらせされたと言うとは思いませんでしたわ」
「違う、違うよ、話の続きが聞きたいのに、話を途中でやめないでー!料理人に相談して、それからどうなったんですかっ!続きが気になってきっと夜も眠れません!途中まで読んで、続きは明日にしましょうって本を取り上げられたときの気持ちです!分かりますよね?気になって眠れないから、布団から抜け出してこっそり続きを読もうとして侍女につかまって布団に戻されるのを3回は繰り返してもあきらめられない、あの気持ち、わかりますよね?」
と、今の私の気持ちをわかって貰おうと必死に言葉を探した結果……。
「何を言っているのかさっぱり分かりませんわ」
と、スカーレットさまが苗子の顔を見た。
苗子がちょっと困った様子で口を開く。




