毒味 毒見
後宮で、周りは敵ばかりだと片時も気を許すことができずに生活することを思う。
ああ、同情ではない。決して。かわいそうだとかつらかっただろうとか、だから私が友達になってあげるとかそういうことでもない。
ただ、ただ……。そうして生きてきたって想像したら……。
スカーレット様が愛おしくなった。赤く綺麗な髪の……スカーレット様と仲良くなりたくなった。「朱国の姫と友達になる」ではない。
スカーレット様という人物と……血の通った人と、親しくしたいと思ったのだ。
スカーレット様は黙ったままだ。
「あ!肝心なこと忘れてました!嫌ですよね?私みたいな人間と友達になるの!」
スカーレット様の気持ちを、すっかり、忘れてました。
「呂国って、不吉な色だって言われてる黒い国だし……それだけでもなんか近寄りたくないと思っている人がいるのは分かっているつもりだったんです。その、さらに、私……国では妖怪とか言われるくらい、あの、不気味がられていて、……そんな人間に友達になってとか言われても困りますよね?ご、ごめんなさい、あ、嫌がらせじゃなくて、えっと、友達になってくれっていう嫌がらせとかでは本当になくて、あの、目の前に巣があを現すだけでももしかして不快な思いをさせてます?ああ、どうしよう、苗子、えっと、ジョア、か、帰りましょう。帰るときって、どういうマナーがあるんだっけ?」
壁際に控えていた苗子に声をかけつつ慌てて立ち上がる。
「ぶっ」
ぶっ?
スカーレット様が口元を手で覆っている。
「ふふっ、分かりました」
へ?何が分かったの?
「あなたが、駆け引きがへたくそだということだけはよくわかりました」
ちょっと声が震えている。笑われてるのかな?
「あの、それって、私のこと信じてくれたってこと?」
嫌がらせをしようとしてなかったとか分かってくれた?
「すべてが演技だとすれば大したものですが、演技でなければ……。そのような考えなしの行き当たりばったりでとてもではありませんがタイミングを合わせた綿密な嫌がらせを計画できるとはとても思えませんわ」
ん?
褒められてる?それとも貶されてる?
「せっかくです。あなたの持ってきたお菓子をいただきましょう」
え?
「毒見を」
スカーレット様が庭で声を上げてしまった侍女に命じる。
毒見役に彼女を指名する意味って何だろう。
もし毒が入っていると疑っているなら、罰?
毒が入っていないと疑っていないなら、あなたを信用して大切な役割を任せますという、許し?
うーん、分からぬ、分からない。
よし、分からないなら聞いちゃえ。もうなんか、散々嫌がらせだとかどうだとか言われたし。今更一つくらい増えても問題ないよね……。




