使用人たち
「はい。まずは調理場担当の者たちです。6名」
紹介された6名が順に名乗って頭を下げる。
「よろしくお願いいたしますわ。万が一毒や異物などが混入していた場合、すぐに死刑になってしまうことも考えられますから……大変な仕事だと思いますが、好き嫌いはありませんので自由に調理してくださいませ」
はい。
いやがらせでわざと変な味にしたりしないでね。と、遠回しに念を押しておく。
毒や異物入ってたら即死刑と脅しをかけておいたので、慎重に調理してくれますよね……。と、願いたい。
「彼女たちは湯あみ担当となります」
4人が紹介された。
「湯あみ、お湯を沸かすのはどなた?」
4人が顔を見合わせる。
「湯あみの担当の者は、それぞれ姫様のお体を清めさせていただいたり、マッサージをさせていただいたりする者です」
ああ、周りを取り囲んで体洗ったり頭洗ったり、そのあとオイルでマッサージしたりってあれね。
嫌いなんだよね。
体は自分で洗ってのんびり読んだ本のこと思い出しながらお湯に浸かるのが好きなのに。まるで大根や人参のようにごしごしやられるのも、肌が皺皺になる前に湯船から出るように指示されるのも嫌いだし。そのあとのマッサージもなぁ……てらてらオイル塗り付けられるのも好きじゃない。せっかくお風呂でさっぱりしたのになんでわざわざオイルまみれにするのか。しかも匂いがきつい。マッサージが終わった後も自分がオイルなんじゃないかってくらい匂いがしみついて、食事がまずいこと、まずいこと。
「お湯を沸かしたり、掃除をするのはこちらの下働きの者たちになります」
5名の手荒れの酷い女性が紹介される。
「苗子、この方たちはどのように選んだのですか?」
私の言葉に、ぎくりと何人かが首をすくめる。くじ引きで選ばれた者たちだろうか。
「彼女たち2人は、20年ほどずっとこちらで働いて、何もかもよく知っている者です」
へー。20年も!嫌ならやめてるよね?好きで黒の宮で働いてると思っていいんだよね?
40代半ばの二人。ベテランなんだ。次に、20代と思われる女性二人を紹介される。
「彼女たちは3年ほどやはりこちらの仕事をしていまして」
3年か。彼女たちも不満があるわけじゃないのかな。
最後に、15歳前後の若い娘を苗子さんが紹介する。
「彼女は成人して後宮の仕事は初めてなのですが」
薄茶色のおさげ髪の少女が頭をぺこんと下げた。
「楓と申します。あの、いつも母に後宮の話を聞いていて、ずっと働きたいと思っていたんですっ!一生懸命働きます。よろしくお願いしますっ」
とっても元気に自己紹介を始めた。
「楓、許可もないのに姫様に話しかけてはダメだとっ」
はじめに紹介された下働きの女性が慌てて楓の横に立ち頭を下げさせた。
「申し訳ございません。私の教育不足で……お許しください」
なるほど。20年以上勤めている女性の娘さんなんだ。娘さんも働きたくなるっていうことは、黒の宮に不満なんてないってことね。
心の中でニンマリする。
苗子さんナイス人選です。
使用人にも色々いまして。
さて、不満を漏らしていた使用人はどうしましょうね、鈴華さん。