謝罪
使用人までが敵だと……味方じゃないと疑わなければいけない孤独ってどれほどつらいのだろう。
「ごめんなさい……スカーレット様……」
スカーレット様が私の手を振り払おうとする力に抗い、ぐっと強く手を握り締める。
「私、スカーレット様が仙皇帝妃になった時に、侍女として連れて行ってもらえたらいいなぁと思って、だから、スカーレット様と仲良くなろうと思ってたんです」
スカーレット様が毒気を抜かれたように、振り払おうとしていた手から力が抜ける。
「はぁ?ちょっと意味が分からないんだけど……?」
「あ、正確に言えば、ほかの姫とも仲良くなって、えーっと、たとえ誰が仙皇帝妃になっても、侍女として連れて行ってもらいたいなぁと思っていたんですが……」
「だから、なぜ、そんなことを考えているのか分からないんだけど?自分が妃になろうとしてるんじゃないの?」
スカーレット様の言葉に首をかしげる。
「あー、知りません?呂国の姫って、仙皇帝妃に選ばれないらしいんで。過去一度もないって。とりあえず国も妃にするつもりなんてさらさらなくて……あ、なんか、一度も妃を輩出してないけど、国はそこそこ安定して豊なんで、寵愛を受けると国が栄えるとかも必要ないから」
スカーレット様がぽかーんと口を開いた。
「確かに、呂国……黒い不吉な姫が仙皇帝妃になるとは、誰も思っていないかもしれませんが……それでも、後宮に姫を送るからには、いつかは妃を輩出しようと……いうわけで……は?」
「んー、ここにいれば好きなものが手に入るから、2~3年いろんなものもらって自由を楽しんで帰りたいって……あ、妹とかその口なんですけど、やたらとたくさん衣装を作ってもらって、里帰りするたびに綺麗でしょと見せびらかしてたんですが……。それ目的で行く人がほとんどですよ。父……呂国の王としては、次に送る姫がいないとわざわざ養子をとったりめんどくさいからやめたいと……」
スカーレット様がふぅっと大きくため息を一つ出した。
「他国の姫を接待もせずに帰したとなれば我が国の名折れとなります。さぁ、準備を進めなさい」
青ざめて震えていた侍女にスカーレット様が声をかけた。
「は、はい。失礼いたしました。すぐに!」
クビを言い渡されずに仕事を与えられた侍女たちが、急いで仕事を始める。
「で、ごめんなさいってどういうこと?」
スカーレット様が私の顔を見た。
「あ、そうでした。ごめんなさい。私、自分の欲望のために、スカーレット様に近づこうとしました」




