友達に
「普通に、鳥が死んで庭に落ちてただけですよね?それを見て侍女がびっくりして悲鳴を上げた。スカーレット様はきっとお優しい方なので、悲鳴を聞きつけて心配で見に来たと……それだけの話では?」
あ、我ながらいい感じで話をまとめれそう。
「侍女が悲鳴を上げず、スカーレット様の目に触れる前に処分してしまえば、全然嫌がらせとして意味を成しませんでしたよね?本当に嫌がらせするのであれば、贈り物を装ってスカーレット様の手に確実にわたるようにしないと」
私の言葉に、その場にいた人間が一斉に青ざめた。
え?
あれ?なんで?
「あなたも……敵?」
スカーレット様が、悲鳴を上げた侍女をにらみつける。
あっ、私はなんということを。
悲鳴を上げた侍女が悪いと遠回しに言ったようなものではないか。
悲鳴を上げなければスカーレット様も気が付かなかったということは、悲鳴をわざと上げてスカーレット様に死体を見せたということになってしまう。
「いえ、決して……その……」
がくがくと震えだす侍女。
「彼女は、違いますっ、その、本当に思わず声が出てしまっただけですっ」
別の侍女が震える若い侍女の肩を抱いた。
スカーレット様は何も言わない。
どんな表情をしているのか知りたくて目を細めてみる。
怒っているのか……と思ったら、目は少し悲しそうだ。
「その言葉を、あなた方を、何をもって信じろと?」
スカーレット様の声が震えている。
ああ、そうか。
疑心暗鬼……。どうしてそんなにいろいろ疑ってばかりになってしまったのかはわからない。
でも、私は私が潔白だと知っているけれど、スカーレット様にとっては潔白だと信じられるだけの証拠がないのだ。
今までもしかしたら誰かを信じて裏切られてきたのかもしれない。
6年の間に何があったのかはわからない。
けれど……、これだけは分かった。
「スカーレット様、友達になりましょう!」
スカーレット様の手を両手で握る。
「は?何を?どういうつもり?」
スカーレット様が驚いて私を見る。
6年前。18歳のスカーレット様は一人で後宮に入って寂しかったに違いない。知らない人たちばかり。そしてわからないことだらけ。
金国の姫がスカーレット様の髪の色をなんといっていただろうか。
そう、私はきれいだと思った。だけれど、血の色みたいで不気味だと、そう言ったのではなかったか。
この鳥の死体は嫌がらせだとは思わないけれど……朱国にいた時には受けなかった悪意を身に浴びて、スカーレット様はとてもつらい思いをしたんじゃないのだろうか。
……私は、まぁ、呂国にいたころから妖怪だのなんだの言われてたから、ちょっとやそっとじゃへこまないメンタルはあるけど。




