被害妄想
苗子に聞いたのに、答えはスカーレット様の口からもたらされる。
「鈴虫と毛虫を一緒にするなっ!」
「そうよね!全然違うわよね!鈴虫は耳で楽しむものだけれど、毛虫は、目で楽しむもの、成長を楽しむものですもの。小さな体でぐんぐん葉っぱを食べていく姿の愛らしいこと!そして、さなぎになり、美しい蝶へと変貌していくのは、もう感動ものですわ!どの毛虫がどんな蝶になるのか、本当にワクワクドキドキで、寝ずにさなぎを眺めていたら、家族から毛虫禁止令が出た時のあの悲しみと言ったら……」
スカーレット様が私の言葉を静止した。
「もういいわっ!それ以上毛虫の話はやめて頂戴っ!」
スカーレット様を見れば、少し青ざめた顔をしている。
あれ?私、何か悪いことした?
首をかしげると、スカーレット様が小さく息を吐きだす。
「よぉくわかりましたわ。不吉色の呂国の姫」
何が分かったのだろう?
「あなたが決して虫を送り付けるような真似はしないというのが分かりました」
「いえ、スカーレット様が望むのであれば、頑張って捕まえてきますよ?」
「いらないわよっ!」
即答されました。
「そうですか?ここなら、もしかしてすごく珍しい虫もいるかもしれませんし……一緒に捕まえに行きますか?」
「行きませんっ!っていうか、何しに来たのよっ!虫の話をしに来たわけじゃないでしょう?」
あ、そうだった。
「私、スカーレット様とお友達になりたくて」
ずいっと1っ歩歩み寄ると、スカーレット様が後ろに一歩下がった。
「あの、鈴華様、それを何とかして手を清めませんと……」
それ?
ああ、そうだった。
「ごめんなさい、私からきておいてなんだけど、この鳥の埋葬を先にしてもいい?その前にスケッチもしたいし、あ、鳥の名前わからないんだよね?あ、半分黄色いし、この鳥、金国の鳥かなぁ?金の姫なら知ってるかな?」
スカーレット様が小さな声でつぶやいた。
「嫌がらせの犯人が、金国の姫だと言いたいの?自分は無実だと」
「いや、だから、私は嫌がらせなんてしませんし、金国の姫を嫌がらせの犯人だなんて思ってませんよ?だって、こんなかわいい鳥を使って嫌がらせなんてすると思いますか?定番は、えーっと、ネズミとカラスですよね?あれ、違ったかな。なんかそういうの本に書いてあったと思うんです」
スカーレット様がぐっと唇を引き結ぶ。
「嫌がらせを受けているというのは、私の被害妄想だと……言いたいのですか?」
「そんなことは言っていませんが……えーっと……」
なんで、そう、誰かが悪意を持っていると思うのかなぁ?




