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【書籍化】八彩国の後宮物語 ~退屈仙皇帝と本好き姫~  作者: 富士とまと


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覚悟

 ここからは赤の宮だという主張か。

 白い漆喰の壁は黒の宮と同じだ。しかし、柱が、梁が、窓枠が、扉が、そのすべてが朱色だ。

 なんと、鮮やかで、華やかな控えの間だろう。

 そういえば、黒の宮の謁見の間は、呂国を代表する勝景が描かれていた。そればかりか、呂の美しさを最大限に表現した壁代もみごとだった。

 ああ、赤の宮の謁見の間はどのような素晴らしさなのだろう。

 ワクワク。ワクワク。早く見たくてソワソワしだすと、苗子がほかの人に聞こえない声でそっと耳打ちする。

「緊張しなくても大丈夫ですよ。何かあれば私もフォローしますし、姫様同士の出来事で処罰が下ることはありません。また、後宮で不処分であったことを国に持ち帰り国同士のいさかいの元とすることも禁止されています」」

 苗子がさらに声を低くする。

「たとえどのようなことが起きようとも……」

 どのようなことが?

 えーっと、本を思い出す。呂国には後宮がないから後宮関連の書物は少ない。さらに仙皇帝宮や仙皇帝後宮での出来事に関しての書物もほとんどない。後宮に勤めている人達に守秘義務があるのか、後宮にいたことのある姫たちは書き残すことに興味がなかったのかわからないけれど。

 数少ない後宮関連の書物を思い出す。

 低い身分ならら陛下の寵愛を受けた女性と、高い身分で将来の正妃だと言われ続けていた女性のやり取り。朱国の本だ。

高「まぁ、見事な朱色のドレスを召していらっしゃいますわね。緑に映えそうな朱色ですわね」

低「ありがとうございます。陛下にこれからお会いするのですわ」

訳高「何生意気に、赤いドレス来てるんだ。ってかさ、草だよ、草、草原に似合いそうだなwwww」

訳低「陛下の瞳は緑だとお忘れなのかしら。お似合いと言ってもらえてどうもありがとうwwwww」

 まったく、意味が分からない本だった。

 うん。なんとなくわかったのは、悪口は言っちゃダメってこと。直接的な言葉でいうと、侮辱罪だとか何かで処罰される。

 つまり、ここでは処罰されないから、分かりやすい言葉で言いたいこと言っていいよってことかな?

 よかった。私、遠回しな言葉のやり取り苦手というか、分からないんだよね。

 さすがに、自分に向けられる言葉の意味は、なんとなく察することができるようになったけれど。

 「大人の女性になられましたね」は「年増の行き遅れ」を現した皮肉。

 「ずいぶん博識だと伺っておりますわ」は「本ばっかり読んで頭でっかちって噂されてるぞ」という皮肉。

 「どのような本をお読みになられるの?」は「会話が続かない、とりあえず本の話題振っとけばいいだろう」という気遣い。

 ……。うっ。なんだか、唐突に、土下座したくなるのはなんでだろう。

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