いざ出陣
「勝負……ではない……そ、そうですわね……」
「でも、絶対勝ってる」
「仲良くなるためならばやりすぎたか」
「だけど、つい……」
と、ぶつぶつ言い始めた。
あ、もしかして、勝負って、私とスカーレット様ではなく、スカーレット様の湯あみ係と、彼女たちの勝負?……なのかな?
だとすると、えっと……。
私がスカーレット様よりも美しくなったとかでなく、妖怪と言われた私を一応人並みレベルまで引き上げた湯あみ係の腕前がすごいってことか。
「不吉な黒と言われているのに、黒の宮に来てくれてありがとう。あなたたちが他の宮の使用人に馬鹿にされないように、頑張ってくるわ」
にこっとほほ笑む。
うわっと湯あみ係4人が私の周りを取り囲んで膝をついた。
「私、鈴華様についていきます!」
「どうぞ、これからも精進いたしますので私もお連れください」
「10年でも20年でも、鈴華様のおそばに」
「鈴華様にお仕えさせてください」
えーっと、いや。
「だ、大丈夫よ。もう首にするなんて言わないし、えーっと」
うーんと……苗子を助けを求めるように見ると、苗子が小さく頷いた。
そうか。湯あみ係も大丈夫ってことかな。
「妃に頼めるように私、頑張るからね。優秀だから、連れて行ってあげてって、私が侍女になったらあなたたちのことも頼んであげるから!」
というと、苗子が大きな声を出した。
「そうじゃないっ!」
は?え?
私、何か間違えました?
「赤の宮には今しがた先ぶれを出しました。準備が整いましたでしょうか」
ノックの音とともに、赤の宮でのお勤め経験もある侍女のジョアが現れた。
「はい。準備は整ったので、行きましょう」
ジョアがさげていた頭を上げて私を見て息をのんだ。
「ん?何かおかしいかしら?失礼があってはいけないから、正直に言ってもらえる?」
自分の姿は鏡に映しても視力の関係であまりよく見えない。湯あみ係はきっと正直な感想は言いにくいだろう。
「とても、お綺麗でございます」
ジョアが再び頭を下げる。
……うーん、クビへの恐怖で本心が言えないのかな。
知らなかっただけだからね?さすがに仙山からいね!というようなことになるようなこと言わないから。それより、本が好きで、仙皇帝宮に行きたいんだよね?仲間なんだよね?仲良くなろう?打ち解けよう?ああ、なんて話しかけたらわかってもらえるのかなぁ。
「じゃぁ、待たせてはいけませんし、行きましょうか」
私、苗子、ジョアと3人で向かう。ジョアが手土産の菓子を持って行き、苗子が赤の宮の侍女とのやり取りを受け持つ。
まずは、謁見控えの間に足を運ぶ。ここまでは許可なく入ることができる。
「うわぁっ!」
思わず控えの間に入ったとたんに声が出た。




