眠い
「何も気に入らないことなんてないわよ?仙皇帝宮は目指すし、もし駄目だった時に呂国に帰ることになったらって話だし」
レンジュがはぁーと息を吐きだした。
「だから、もう俺の嫁になれって。仙皇帝宮には行けるし、呂国に帰りたいなら一緒に行ってやるし」
ん?
「だから、レンジュは宦官だから、えーっと……」
宦官と結婚しましたって、呂国に帰ったら帰ったで大問題な気がするんだけど……。
それに……いくら仙皇帝宮の地下書庫に行きたいからって、年増醜女本の妖怪を嫁にしろなんて言えるわけがない。そんなことして地下書庫に行ったら、きっと罰が当たる。本の神様に嫌われちゃうに違いない。
まてよ?
「レンジュ、もしかして宦官が男に戻ることができる……その、生やせるなら、女の私が宦官になる方法もあるんじゃない?」
「は?どうしてそうなる!お前が女じゃなくなったら結婚とかできないだろう!」
「知ってたら教えて!なんなら、私、いったん男になるわ!男になれば宦官にもなれるでしょ!ほら、なんか、秘術とか、ほかの人には黙ってるから、そっと教えて、ね?」
じりじりとレンジュに迫れば、いつものようにレンジュは……。
「苗子、怖い。なんでこんな日が昇ったばかりの早朝からこんな話になってるんだ?」
はぁーと苗子がため息をついた。
「レンジュ、図書室にはカギを付けた方がよさそうです。使用できる時間の制限を」
え?待って、待って、待って!
「なんでそんな話になってるの?苗子、ねぇ、苗子?」
苗子が額を抑えた。
「安全が確保できません」
何の安全?本?そうね、本の安全を確保するのは大事ね。鍵は必要かもしれない。あ、でも、なんなら私が図書室で寝泊まりして、本の安全は守るよ?
「だなー。睡眠時間が確保できないのはつらい」
いやいや、つらくないよ?本を読んで睡眠時間が削れるのは全然つらくないよ?でへ。あ、でも怒られるよね。ちゃんと寝てくださいとか、いつまで本を読んでいるんですかとか怒られるのは辛いというか、覚悟の上だから!
「こんな早朝に部屋を抜け出されて何かあってからでは遅いですから」
苗子の言葉に、はたと気が付く。
「あ、安全って、もしかして私の?」
レンジュがふわぁーあと大きなあくびをした。
「ったく、こんな早起きしたのは久しぶりだぜ。お前が血相を変えて苗子を探しているというから、何が起きたかと慌てて駆け付けたんだぞ」
睡眠時間というのは、レンジュの……いや、苗子の睡眠時間もってこと……だよね。
「ご、……ごめんなさ……い。あの、でも黒の宮からでなければ、安全じゃないの?」
レンジュが微妙は表情を見せる。




