レンジュ混乱
「えーっと、鈴華様、話がちょっと理解できませんが……気に入ったのになぜ辞めさせたいのでしょうか?」
「それはもちろん、下働きはやめてもらって、私の専属司書になってもらうためよ!司書よ、司書。本の管理人といえばいいかしら。ああでも、私専属、専属ってとこがポイント!」
苗子がポカーンと口を開けている。
「は?」
「だってね、1000冊の本は返さなくちゃいけないの。読んで返してしまった後にそういえばなんて書いてあったかなと読み返そうと思っても読み返せないのよ?」
「また、同じ本を貸していただけばよろしいのでは?」
ぶんぶんと首を横に振る。
「すぐ読み返したいの!その時読み返したいの!気になった時に読みたいの!分かるよね?」
苗子が一歩後ろに下がった。
う、この反応は、分からないのか!
そうだ、侍女。仙皇帝宮に行きたいと言っていた侍女。彼女はきっと仲間。仙皇帝宮の書庫に行きたい仲間。彼女たちなら、この気持ちを分かってくれるはず!
「侍女を、侍女の3人を読んで頂戴!」
苗子がはっとする。
「まさか、そういうことですか?」
そういうというのはどういうことですか!
「楓に下働きを辞めさせ、代わりに侍女の誰かに下働きになってもらうという。そうですね、このまま侍女として働かないというのであればそれも致し方ないとは思いますが」
何を言っているの。
「わかりました。しばらく様子を見て決めさせてください。3人のうち、だれに下働きをしてもらうのか。変わりが決まるまでは、楓には下働きを続けてもらいましょう。鈴華様専用の司書にという話は、そのあとでよろしいでしょうか」
「ミャ、苗子?あとって、あとって……だって、楓には……」
1000冊は1か月で入れ替わっちゃうんだよ。本を覚えてもらわないといけないんだから、あんまり後だと困るし……侍女さんたちは本好き仲間なんだよね?下働きになったら一緒に仙皇帝宮を目指せなくなっちゃうよ?
いや、まてよ、下働きとしてついていくこともできるのかな?
ついていくといえば……。
「ねぇ、苗子、私が黒の宮から呂国に帰るときに――」
もちろん第一希望は仙皇帝宮で働くこと。でもそれがかなわなければ呂国へ帰るでしょ。帰るときに楓って連れて行ってもいいのかな?
仙山を下りると穢れがどうのって話もあったからむつかしい?そうすると、私が仙山に残る……えーっと、黒の宮で侍女でもする?うーん。
「おいおい、どういうことだ?里帰りか?呂国に帰るってどういうことだ?」
しゅたっと天井裏からレンジュが下りてきた。
「おはようレンジュ。里帰りの話じゃなくて」
レンジュが私の手を取った。怒ったような顔をしている。
「おはようじゃねぇ。何が気に入らねぇんだ?昨日は仙皇帝宮を目指すと言い出したかと思えば、今日は呂国に帰るだ?」
気に入らない?




