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す、すごい!それって、何百万冊もあると言っていた仙皇帝宮の地下の巨大書庫の本も……生きているうちに読破できちゃうんじゃない?
「いいなぁー、すごいなぁーうらやましいなぁ」
楓が首を横に振った。
「そんなに都合のいいものではないんです」
楓が1冊本を持って中央近くのページを開いてさかさまにした。
「例えればこんな感じでしょうか。鈴華様は、今見て本がさかさまだったという記憶は残るでしょう?私の場合は、さらに文字の細かい情報も記憶に残るんですが、それは読んだわけじゃなくてあくまでも画像なんです。だから内容は画像を思い出しながら読まないと内容は分からないんです」
へ?
「それって、目を閉じても読書ができるっていうことじゃない?すごい!」
うらやましくて仕方がない。
「ふふ、鈴華様ほど読書が好きなら役に立ったかもしれませんが、あまり役に立つと思ったことはないです。あ、というか、もしかして目を閉じたまま読書し始めたら、鈴華様起きてこないんじゃ……」
うっ。
ずっと目を閉じている自信はある。
「あれ?でもそもそも本を一ページ見える距離で文字は読めるんですか?」
はっ!そうだった!1ページまるっと視界に入る距離では文字は読めない……ということは、ぼんやりとした画像での記憶になって、結局読めない……。
「ううう、楓がうらやましい……」
恨めし気な目で楓を見る。
「あ、こっちの棚も1冊抜けているようですね。「金国食べ歩きガイド」……ですね」
ぐっ。忘れてた。
「2冊とも食べ物の本……誰でしょう。仙皇帝陛下からお借りしている本を盗むのは重罪だと分かっているでしょうが、ちょっと借りるだけなら大丈夫だと思っているんでしょうか……」
楓が首をかしげる。
「犯人は相当な食いしん坊でしょうね」
うひゃー。ごめんなさい、ごめんなさいっ。
「食いしん坊じゃないですよ。ほ、ほら、その2冊は私が持ってる。あの、今日の午後、赤の宮に行くでしょう?スカーレット様との話題作りにと。それからもしかして金国の姫とも顔を合わせるかもしれないし、えっと、共通の話題をと思っても何が好きなのかもわからないので、食べ物の話題ならば問題ないかと思って」
キラキラと楓の目が輝いた。




