本選び
「寝てるだけ……か。びっくりした……でも、なぜこんなところで?」
楓の周りには数冊の本。そして、よく見れば本棚には不自然な形で横に入れられた本もある。
ああ、もしや!
仕分けと、五十音順に並べるという作業が終わらなくて、夜を徹して?
悪いことをしてしまった。ゆっくりでいいとか、急いでないとか、声をかけるべきだった。
私が本が好きっていうのはもうきっと、皆に伝わってるだろうから、なるべく早く整えなくちゃと思ったに違いない。
起こすのも申し訳ないので、このまま寝かせておこう。……というか、せっかくの早朝読書タイムだ。苗子とかほかに起きてバタバタしたら時間が……と、思ったりしてな……くはない。
もうすでに並べられた棚の前に移動する。足音を立てないように気を付けてね。
一番左側の棚はすでに並べられている。左から2番目も。右の2つはまだ作業途中のようだ。
むっふむっふ。
やばい、顔が、にやける。両手を広げても届かないような大きな棚。一番上の段など手を伸ばしても届かないくらいの高さもある。
つまり、でっかい本棚に……本がびっちり。
な、泣いてもいいかな。それがさらに4つもあるんだよ。と、泣いてる暇はないよ。上の方は背表紙の文字を読むのに梯子……いや脚立が必要そうだ。あれ?そういえば、昨日の脚立ってどうしたっけ?片づけた記憶が……ない……。
とりあえず立った状態で正面の高さの本、上から4段目から見る。右端から順にみるのが私流。
手に取って1冊ずつ読みたいのをぐっと我慢して、まずはタイトルを一通り見つつ特に気になった本を手に取る。
「朱国の宮廷料理」
あ、私食いしん坊じゃないですよ?
朱国は、ほ、ほら、赤の姫……スカーレット様に今日お会いするから、共通の話題を何かね?必要よね?
無難な話は、天気と食べ物だっていうじゃない?
そういえば、本のマークごとに棚分けしてと頼んだけれど、タイトルを眺めていて気が付いた。どうやら、この棚は朱国に関するものだとか、朱国の作家の作品だとかが集まっているようだ。と、いうことは……。
隣の棚に視線を移す。
「ああ、やっぱり、こちらの棚は金国関係」
目についた「金国食べ歩きガイド」という本を手に取る。
いや、だから、ほら、食いしん坊じゃないですって。たまたま目についたから。右手に「朱国の宮廷料理」左手に「金国食べ歩きガイド」……うっ。これ、間違いなく食いしん坊認定されるやつだ。レンジュに見られたらまた大爆笑されちゃうやつ。
ガタンと小さな音が聞こえ、慌てて背中に本を隠して振り返る。
うひ、思わず隠しちゃった。
音がした方を見ると、楓が目をこすりながら上体を起こしていた。
起きた。




