ひどい……ことはない
「おおすごい!すごい!」
どんどんと作業が進んでいる。太陽の光は本を傷めるため、窓は分厚い布で覆われている。本棚が組み立てられ、3つ並んだ。ほかの本棚は今も組み立て途中のようだ。楓と庭師で組み立てている。といっても棚板を溝に沿ってはめ込んでいるだけだけれど。
「ああ、鈴華様、届いた本ですけど、どのように並べていけばよろしいですか?」
楓が私に気が付いてにこっと笑っている。
「えーっと、どのように……か」
本を見回す。大きさ別か、太さ別か、ジャンル別にするには内容が確認しないとわからないものもあるだろう。作者別はむつかしそうだ。
タイトルのあいうえお順?
と、背表紙を眺めながら考えていると、呂国で見ていた本にはないマークが背表紙についていることに気が付いた。
「これ、何だろう?」
花びらのようなマーク。印鑑かな。まったく同じマークが背表紙に並んでいる。
「あ、種類がある」
どうやら印鑑には何種類かあるみたいだ。
何種類あるのかな?
「ねぇ、楓、このマークごとに分けて並べてもらっていい?えっと、マークに分けて、あとはタイトルを五十音順で」
「はい。分かりました」
楓が頷き、すぐに実行し始めた。
私も手伝おうかな、もちろんタイトル眺めるのも楽しみにしながらと思ったけど、その前にしなくちゃいけないことを思い出す。
庭師に明日の夕方、庭で料理をすることを話して、適した場所教えてもらい、下準備をしてもらわないと。
それから紙に必要なものをかいて。あ、あとは、食糧庫言って肉以外の食材を物色しよう。
まてよ?焼き肉作るんじゃなかったよね?だんだんおかしくなってきた。まぁいいか。焼き肉もすれば。
……てなわけで、あっという間に就寝時間になりましたが……。
おかしい、ほとんど本を読む時間がなかった。
ベッドの中に入って、がさがさと本を1冊枕の下から取り出……せない!
ええ?
慌ててベッドの上に起き上がって、枕を持ち上げる。
ない!寝る前に読もうとして枕の下に置いておいた本が!
布団をめくってもない。
ない!ない!ない!
ど、どういうことなの?
ううう、ううう。
あきらめて枕をもとに戻すと、かさりと音がした。枕カバーの中に紙?
取り出して読む。
「寝る前の読書は、睡眠時間を削り肌や体調に悪いばかりでなく、薄暗い灯りでは目もさらに悪くなってしまいます。おやめくださるようお願いいたします。――苗子」
うぐぅーーーーっ!な、な、な、苗子めぇ!
枕の下に隠しておいたのに、見つけるなんて!なんとするどい!私のこと、2日目にして理解しすぎじゃないのかな?!
……ふっ、でも、2日目にして、私のことこんなに心配してくれるなんて。
苗子、しゅき。




