梯子、脚立
お昼ご飯……は、まずくはない。
でも、手を動かして食べ物を口の近くに持ってくるたびにバラの香り。
もう、何を食べているのかさっぱりわからない。これがベルガモットなら、紅茶の香りを楽しみながら食事をする雰囲気になったかもしれないのに……。泣。
「鈴華様、午後は何をなさいますか?」
苗子が分かり切ったことを聞いてきた。
「読書!」
ああ、違うか。呂国では私が時間があればすることは読書か、本を読んで知ったことを試してみるかのどちらかだったけれど。知らないんだよね。まだ、苗子は、私のこと。
「読書でございますか?残念ながら、まだ図書室は棚も入れてありませんし、本も並べ終わってませんので使うことはできないかと」
「図書室じゃなくても読書はどこでもできるから大丈夫よ」
苗子があまり良い顔をしない。
「お部屋のお掃除をさせていただきたいので、部屋でもむつかしいかと」
えー、何それ。
「サロンであれば、すでに午前中に部屋を整えてあるはずですので」
「苗子さん、図書室に運び入れる棚の組み立てのためにサロンは……」
「ああ、そうでした。サロンも今は使えないのでしたね。とすると……」
……ぐすっ。誰の邪魔にもならないように、廊下の片隅でもいいんだよぉ。本が読みたいんだ。
「えーっと、午後は特に予定がありませんから、皆さんはご自由に過ごしてください。えっと……」
具体的な指示だよね。
「4段くらいの軽くて丈夫な梯子を準備していただけるかしら?」
梯子というだけではだめなんだよね。
「梯子、ですか?」
怪訝な目を向けられる。
「ほ、ほら、本棚の高い位置の本のタイトルも見やすいように、私、目が悪いでしょう?」
「ああ、そうですね。……梯子なら、食糧庫に高い棚かに置かれたも野を取るためにいくつかあったかと思いますので、後ほど」
苗子の言葉が終わらないうちに、踵を返す。
「いくつかあるなら使いやすいの自分で選んでくるね!私のことは構わなくても平気だから。えーっと、頼むことがあればちゃんと頼見ます。今は特に何もないので、庭とか後宮の中をいろいろ楽しみます」
取っ捕まらないうちに、食糧庫に入り、軽くて丈夫で使いやそうな梯子……いや、脚立をゲット。
それから、図書室でさっき見つけた4冊の朱国に関する本を手に取る。
お、本の山が20から50くらいに増えてる。やった。レンジュがコツコツ運んでくれてるんだ。
後でまたどんな本が来たのか見てみようっと。
脚立を肩に担いで、反対の手に本を持って、ふふふふーんと鼻歌歌いながら中庭に出る。




