ほい
「暑い季節にははっか湯にしたり、寒い時期にはゆず湯にしたり……」
ああと、シャンシャンがポンと手を打つ。
「バラの花びらを浮かべて入ることがございます。お望みでした?次回はバラをご用意いたします」
うっ。
思わず息を止める。
オイルマッサージにはバラの香油も使われていて、今の私はバラのきついにおいに包まれている。いい香りを通り越して、これは臭いと思う。匂いが強すぎる。というか、もうすでに鼻がバカになっていて自分が無臭のような気さえしている……いや、動くと臭いんだけど。
できればこれ以上んバラ投入はご遠慮したい。
「いえ、その、バラよりは、ほかのものが……えーっと、できれば香油も……バラじゃない方が……」
シャンシャンが首をかしげてほかの湯あみ係を見た。
ほかの湯あみ係も首をかしげる。
「バラじゃない香油?」
えー、まさか、ないの?
ないのか、それとも知らないのか……!
「ベルガモットとか……」
シャンシャンが首をかしげる。
「紅茶ですね。マッサージ中に紅茶をご所望でしたか?次からご用意いたします」
ち、違うよ、ベルガモットの香油は、フルーティーで少し甘い感じでバラよりはすっきりとした香りなんだよ……。
「サンダルウッドとか……」
シャンシャンが首をかしげる。
「香木……確か白檀でしたか。良い香りがするので扇子にも使われております。ああ、サウナから出たときに白檀の扇子で扇いでほしかったのですね。分かりました」
違う、違うって。
サンダルウッドからも香油が作れるんだよぉぉ。その良い香りがいいんだよ。バラじゃなくてっ。
ここでは大抵のものは手に入るって言っていたけど、知らないものはどうなんだろう?呂国には確かにあった。けれど、あまり普及はしていなかった。そもそも香油が一部の上流階級しか使わなかったので、高価だったし。それぞれ好みの香りの香油を香油士に作らせて市販していない香りもたくさんあったしなぁ……。
作る?香油ってどうやって作るのかな?なんか本に作り方書いてあったよね。
物じゃなくて、香油士を連れてきてもらう?いや、でも私の知ってる香油士は男性だから後宮には入れないか。女性は、月の物の関係でにおいを強く感じる時期や、臭く感じる時期があって、安定した香油が作れないから男性だと本で読んだ気がする。
うーん……。
これは、あれだ。本を見つけて読んで作るか、どこかから香油をいろいろ持ってきてもらうか……。持ってきてもらうにしても作り置きじゃなくて作ってもらって持ってきてもらうことになるだろうから、すぐにというわけにはいかないかな。とりあえず後で知ってる限り頼んでみようか。 ……もちろん、私の好みで。ラベンダーの香油も用意してもらおう。それから何がいいかな。
ああ、せっかくだから知らない香りも楽しみたいな。まずは本を探さないと。




