苺
「いや、そんなつもりじゃなくて」
「失礼いたしますわっ!」
スカーレット様はぎっと私を人にらみして踵を返した。
「ち、違うんです、私が悪かったんです。あの、ごめんなさい、えっと、あーっと、私が、私が悪かったので、明日お詫びしに伺いますっ!」
食堂の出口で立ち止まり、スカーレット様が振り返る。
「どこまでも嫌な人ね。詫びを受け入れなければ、私が狭量で怒りっぽい姫だと蔑むつもり?それとも、何度もお詫びに伺っても会ってすらもらえないと、仙皇帝陛下に書状でも送るつもりかしら?」
へ?
いや、いや。
目を細めてみれば、スカーレット様の顔は怒りに満ちている。
「そんなつもりでは……」
スカーレット様がふっと鼻で笑った。
「そんなつもりではないも、常とう文句よね。まるで私の方が加害者のように仕立て上げ泣きだすのよ。そして、そんなつもりではなかったという言葉とともに、嫌がらせを繰り返す……。後宮とはそういうところというのは6年もいれば嫌というほどわかっています」
いや、え?
……そういえば、確かに……。仙皇帝の後宮のことが書かれた書物は少なかったけれど、後宮を持つ王族について書かれた本はそれなりにあった。女たちの争いが激しく、精神を病む女性もいたとか。そればかりか、毒が入っていないかと安心して物を食べられない生活、常に身近に生き物を置き、毒見をさせてから食事をとるだとか……。毒ガスには鳥、毒入り液体には金魚、毒入りの食べ物には犬や猫……。もちろん、毒見係の侍女は置いていても、その侍女すら裏切ることもあるとかなんとか……。
「あの、本当にそんなつもりはなくて……」
「どうだか。とにかく、あなたの非礼は許します。ええ、もう許しました」
再び前を向いて歩きだしてしまった。
どうしよう。誤解された。
誤解されて、仲良くなるどころか……仲が悪くなってしまった……。どうしよう。3人しか姫がいないのに……できれば全員と仲良くなりたいのに!姫の侍女になって仙皇帝宮で働いて、地下の巨大書庫に住む夢が遠のいていく……。
あきらめちゃだめだ。本にも書いてあった。諦めたらそこで終わりですって。
「明日、お昼から遊びに行くから!えっと、おやつの時間、えっと、2時過ぎに行くね!行くからね!」
スカーレット様は振り替えりもせずにそのまま帰っていった。
「鈴華様……その、赤の宮の侍女にはきちんと説明しておきますから……。黒ゴマ団子は嫌がらせの意図は全くなく、本当においしいものを食べてもらいたいという気持ちで鈴華様が用意しようとしていたと……」
苗子が顔を青くしている。
「ありがとう。お願いするわね。でも、やっぱり私が直接会ってちゃんとスカーレット様と話がしたい。そもそも私が考えなしだったのよね。いくらおいしいからって黒い食べ物は駄目だっていうのがすっかり抜けてた。今度はちゃんと食べやすい色の……赤がいいかしらね?赤くておいしい食べ物……うーんと、何があったかしら?……あ!そうだ!イチゴ大福!あ、だめだ。よく考えるとあんこが黒い。んー、あれもおいしいんだけどなぁ。イチゴの酸味とあんこの甘さ。それからそれらを包み込むもちもち。あ、そうだ、白あんで作れば……。いや、そもそも材料が手に入るのかな?」
頭に思い浮かんだことをぶつぶつとつぶやいていたようで、料理人二人が私の言葉を聞き取ろうと必死に耳をこちらに向けていた。
「仙山では大抵のものは手に入ると思います」
「私たちが必ずおいしく作り上げて見せますからっ」
と、こぶしを握り締めている。
苺大福……人生で1度しか食べたことがないんですよね。
なんか、苺大福って、高級品だよなーと思うのと(やや思い込み)
苺がそもそもそれほど好きじゃないっていうのと、
こし餡の入ったまんじゅうが好きなので、こし餡を堪能させてくれよというのと
まぁ、つまり、苺大福よりこし餡のまんじゅうのが好きっていう話なんだけど。
(*´▽`*)
ちなみに、ケーキの上のイチゴとかもあんまりこう、魅力を感じない。
でも、時々イチゴは買って食べたくなるんだけど、それでもやっぱり「バナナの方がおいしいなぁ」とバナナに回帰するタイプです。
だけど、チョコレートはストロベリーチョコレートが好きです(*'ω'*)




