客人
中の団子にも練りごまを混ぜてもらい、灰色になっている。色はこんにゃくみたいな感じ?まぁ、一口で食べちゃうと色までは見えないんだけどね。
胡麻の香ばしさと、黒糖の甘味。団子のもちっとした感じと、とろりとした餡と、もう絶妙。
「どうぞ、皆さんも召し上がれ」
私が味見するのをじーっと見て動かない料理係2人と苗子に声をかける。
「はー、おいしい」
手を伸ばして団子に串を指す。うまうま。もぐもぐ。
「で、では、いただきます……」
ゴクリと唾を飲み込んで料理人の一人が串を手に取り、団子にぶっさす。
パクリと一口で口に入れる。両目はつむっている。
何、覚悟して食べるみたいな表情してるけど……それとも、2時間以上胡麻を擦り続けた自分をほめてあげたいですみたいな顔?
「お、おいしいですっ!」
その言葉に、苗子と料理人も黒ゴマ団子を食べる。
「ああ、あれだけの手間をかけてまでも、これは食べたい味ですね!」
料理人が満足げにうっとりと目を閉じた。はい。感動しますよね。
胡麻って、こんなにおいしかったんだって、改めて思いますよね。しょっぱい系の料理にはよく胡麻は登場するけれど。甘いお菓子とも相性いいんですよ。
「リ、リ、リ……」
苗子が鈴虫になった。
「鈴華様っ!」
そして、唐突に私の両手をつかむ。その表情は真剣そのものだ。
「私、侍女として未熟でした。お仕えする鈴華様が、おいしいと言っていらっしゃるのに……。見た目で食べることを躊躇してしまいました。なんて愚かだったのでしょう……。こんなに、この世のものとも思えないほど素晴らしいお菓子を……惜しげもなく私共使用人にまでお与えくださるというのに……」
「ちょ、苗子、大げさ大げさ。っていうか、むしろありがとうね。呂国では黒ってそんなに気にならない色だけど、苗子たちは黒い食べ物怖いでしょ?それなのに食べてくれて……」
ん?
あれ?ちょっと待てよ?
……いくらおいしくて、私のおすすめって言っても……。
これ、スカーレット様に手土産で持っていくわけにいかないわよね?
黒くない食べ物にした方がよくない?
「ねぇ、苗子、スカーレット様と会う日って、決まった?」
手土産の準備をし直さなければいけない。
「失礼いたしますっ!」
食堂に、侍女の一人が慌てて入ってきた。侍女は訓練されているので決してみっともなく走ってきたりはしないが、慌てているのはその動きでわかる。
苗子にごにょごにょと何かを伝えている。
何だろう?
「鈴華様、赤の姫、スカーレット様が謁見控室でお待ちだとのこと。会いたいならすぐにあってあげるわと、そのままこちらへ来たそうです」
え?
マジで?




