つやっつや
レンジュがどや顔をした。はー、うん。なんか、好き嫌いなさそうな感じそのままですね。
「僕は、鈴華が特別というものが知りたい。もちろん、食べて味も……鈴華と同じように味わいたい」
マオが私の瞳を覗き込む。
目の中に映る自分の金の瞳が見たいのかな?まっすぐ見てくる。
「えーっと、本当?二人とも……大丈夫かな?」
私の問いに、レンジュとマオがちょっと声を荒げた。
「俺の胃袋を疑うのか?」
「毒が入っているなんて疑ったりしませんよ」
あー、疑ってもいないし、疑われているとも思ってませんが。
困った顔をして笑う。
「見た目、真っ黒だけど……大丈夫?」
ほかの国では黒は忌避されがち。つまり、黒い食べ物を口にするなんて、闇を不幸を悪を体に取り入れるという人もいる。
「ぶはっ、そりゃ、楽しみだ。真っ黒な食べ物、はははは、そりゃいい。確かに食べたことないな」
レンジュが嬉しそうに笑った。
「鈴華に会ってから、僕は黒は好きですよ。この自分の髪色さえも愛しくなった」
マオが照れたように笑う。
……会う前は嫌いだったってこと……だよね。
「マオ、前に本の知識が何に役に立つかって聞いたよね?私が今から作るお菓子も、もとは本で読んだの。呂国を旅して各地の風土をまとめた本。その土地土地独特の食べ物も紹介されてたんだ。ね?本は役にたつでしょ?」
「鈴華さまぁー、鈴華さまぁー」
苗子の声が次第に近づく。
「おっと、その本を俺は運ぶ途中だった。マオ、お前も仕事に戻らないとだめだろ?」
レンジュの言葉にマオが小さく頷いて、あっという間に木々の間に姿を消す。まるで、猫みたいに、木に登って、木から木へと移動しちゃった。
「じゃぁ、お菓子楽しみにしてるぞ!」
手を振ってレンジュが仙皇帝宮に向かって姿を消した。
「鈴華様……なんか、見た目がすごいですね」
出来上がりましたと料理人からの連絡を受け、食堂に苗子と向かう。
お菓子を見た苗子の第一声がこれである。
「おいしそう!」
私の第一声がこちら。よだれは垂らしていません。
「早速味見してもいい?」
真っ黒なつやっつやの餡に包まれた、一口大の団子を串にさして口に運ぶ。
「うっ、おいしい!すごい、完璧っ!」
もぐもぐ。
飲み込む前にはしたないと思いつつ思わず感想を述べる。
料理人に二人が顔を見合わせて小さく頷く。
「ほら、苗子も食べてみてよ。あ、黒い色の正体は、黒ゴマと黒糖だから。大丈夫大丈夫」
黒ゴマを2時間すりつぶし続けると、練りごまになる。油が浮いてきてつやつや担ってきたところで、黒糖を入れて混ぜる。するとトロトロつやつやの黒ゴマ餡ができるのだ。




