食べる?
「鈴華の瞳に僕の目が映ってる……鈴華の目にも小さな星が見える」
マオの言葉に思わず、マオを抱きしめる。
ごめん。私こそ闇色だなんて偏見持ってたのかもしれない。
呂国の人は言わないけれど、本にはいろいろと書いてあった。不吉な色。暗闇。地獄。苦しみ。不幸。黒はよくないと……。
そんなことはないって思っていたけれど、呂国を離れ、黒色の少ないこの場所ではやっぱり自分がちょっと異質な気がして……。
「ありがとう!私の目に星の輝きをくれてっ!」
そうだよ。マオの言う通り。黒はいろいろなものを映し出すことができるんだもん。
星も手に入れることだってできる素敵な色だよっ!
「ちょっ、鈴華っ」
焦ったマオの声に、慌てるレンジュの声が聞こえる。
「ばか、何してるんだ、抱き着くなら俺にしろ」
首根っこをつかまれた。
ちょっと、レンジュ、猫じゃないんだから、その扱いはひどくない?
「ほい、いいぞ」
両手を広げて抱き着けというレンジュ。
いや、抱き着かないし。
「鈴華さまぁー、どこにいらっしゃいますかぁー、お菓子の材料が届きましたよー」
あ、苗子が呼んでる。もう材料揃ったんだ。
「菓子の材料?また何か作るのか?」
レンジュが首をかしげる。
「私が作るというか、作り方を教えるから、料理人に作ってもらうの。呂国の西方の特別な特に食べるお菓子」
私の言葉を聞いて、レンジュが目を輝かせた。
「どういうお菓子だ?俺の知ってるやつか?あの、コロッケうまかったぞ。そのお菓子もうまいんだろ?」
マオが私の手を取った。
「コロッケ、本当においしかったです。僕にも今から作るお菓子を分けていただけませんか?」
コロッケがおいしかった?マオの嬉しそうな顔を見てから、レンジュの顔を見る。
レンジュはがコロッケを持ち去ってしまったのは、何も一人で食べようとしたわけじゃなくて、弟に食べさせてあげたかったからなのね。
「たぶん、二人とも知らないお菓子で、食べたことがないお菓子だと思う……」
呂国の中でもほんの狭い地域でしか食べられていなかったのだ。しかも、特別の日にしか作られない。まぁ、手間がかかるというのと、お菓子は高価な物。甘いものがそもそも高価だから砂糖を使う限りそうなる。
「でも、本当に食べる?」
一応聞いておかないと。二人とも悪い人ではないから出されたものを無下に扱うことはないとは思うけど。
「おお、食べる食べる。男は甘いものが苦手だと心配してるのか?それなら大丈夫だ。俺は、すっぱすぎる物と苦すぎる物以外は何でもおいしく食べるぞ。甘すぎる物も平気だ」




