火
「スカーレット様は、どのような方なの?」
ジョアがちょっと間をおいて口を開く。
「火のような方です」
言葉を選んだのだろう。
「確かに、燃える炎のように真っ赤な髪をしていたわね。とてもきれいでした」
スカーレット姫の赤い髪を思い出す。素敵な色だった。そういえば、口紅も真っ赤だった気がする。とても赤が似合う人なんだ。
「いえ、そういうことでは……」
ん?違うの?
「火のように、熱い方というか……その……」
ああ、性格が火のようだということね。本にも出てきたことがあったわね。
「情熱的ということかしら?明るい人という意味かしら?」
ジョアが困ったように眉をはの字にする。違ったのかな?
「まぁいいわ。人によって感じることは違うでしょうし。こういう人だと決めつけて接するのもよくないと本に書いてあったものね。で、えーっと、スカーレット様に会いに行こうと思うんだけど、どうすればいいの?行きます、いつ暇ですかって聞いてきてもらえばいいの?それとも手紙を届けてもらった方がいい?さすがに突然の訪問は駄目だよね?あと、仲良くなりたいから手土産を持っていきたいんだけれど、何がいいかしら?」
苗子がすぐに答えを返してくれた。
「侍女を通してあちらの都合をお伺いいたします。手紙でのやり取りが必要な場合は、侍女には聞かれたくない内容であったり、会を催すさいの招待状だったりしたときですね。手土産は、後宮では不要です。欲しいものはすべて支給されます。どの姫様も、手に入らないものはありませんので。いつがよろしいでしょうか?すぐに連絡を取りますが」
手土産は不要?
そうなの?
「あー、でも、手ぶらで行くのもちょっと。一緒に食べましょうってお菓子とか持って行った方がその、食べながら話ができるんじゃないかな?やっぱり甘いものがいいよね。うん、そうだ!あれを作ろう。時間がかかるし作るの大変だから、めったに食べられない特別なお菓子!」
と、ぽんっと手を打つと、料理人が心配そうな顔で私を見た。
「あー、そうね、食事の用意もあるし、時間がかかるものを作ってもらうのは……あ、そうだ!あなたたちにお願いしてもいい?ちょと大変だけど……」
昨日は庭掃除をしていた料理人2人がすくっと立ち上がった。
「はいっ、もちろんです!」
「おいしいものを作るためならば、大変だとは思いませんっ」
「ありがとう。お願いするわね。手土産にするから失敗は許されないと……いうつもりはなくて、私もおいしいもの食べたいし、みんなもおいしいもの食べたいよね。みんなでおいしいお菓子食べるために頑張って。作り方は教えるから。あーっと、材料は、胡麻と、あ、胡麻はもちろん黒ゴマね。呂国っぽい方がいいわよね、それから……」
慌ててメモをしようとする料理人と苗子。ああ、食事中にメモはないか。
火、まあ、赤だし。……単純でしょ




