磨きたい
苗子→ミャオジー
鈴華→リンファ
楓→フェン
「あ、それから誰か、仙皇帝宮で働いている知り合いがいる人はいない?」
「もしかして、仙皇帝陛下がどんな人か知りたいの?私も知りたい。誰も知らないっていうんだよね」
と、楓が口を開いた。
「30年ほど前まで在位していらした前仙皇帝陛下の噂でしたら聞いたことがあります。鍛え上げられた肉体を持ち、凛々しく整った顔立ちをした方だったと」
庭師の言葉に思い出した。
「ああ、それなら私も本で読んだことがあるわ。在位50年で、一人も妻を持たなかった。ん?あれ?妻を持たなかった?もしかして、前仙皇帝在位の50年と、現仙皇帝陛下が即位してからの30年、合わせて80年間仙皇帝妃がいないってこと?え?あれ?私が後宮にいる間に、誰かが仙皇帝妃になる可能性って……めちゃ小さくない?」
こ、困る!
それじゃぁ。仙皇帝妃にくっついて皇帝宮で働く野望がっ!
「ねぇ、なんで仙皇帝陛下は結婚しないの?」
「うーん、気に入った姫がいないのでしょうね」
「ど、どういう姫が気に入るの?」
「どうでしょうか。容姿が優れた姫なら何人もいらっしゃいました」
「若くてかわいくてスタイルもよい姫様も何人もいましたね」
えー。
「そのうえお優しい姫様もいらっしゃいました」
はー……。
若くてかわいくてスタイルもよくて優しくてって……えーっと。
「鈴華様のような姫様は初めてですね」
苗子が言えば、使用人全員が私を見て頷いた。それも、深く何度も。
年増で、醜女で、スタイルも悪く、変わり者……。は、はい。ええ、まあ……。
普通はそんな姫を後宮に送り出そうなんて思いませんよねぇ……。
「案外、鈴華様みたいな女性が好みだったりして?」
と、苗子がぼそりとつぶやく。
使用人がぴたりと動きを止めた。
ふっ。苗子、その言葉の「私みたいな」ってのは、美しくなくって、若くなくって、優しくないって言ってるようなものじゃないかな。みんななんと反応していいのかわからなくて困ってるよ……。優しいよね?やさしさだけはあるよね!
誰かフォローしてっ!……あ、もしかして、初日の「辞めていいよ」が「なんて意地悪な」ってなってる?
そんなぁっ!
「鈴華様は、磨けば十分美しいと思いますっ!」
「そうです!歴代の姫様に負けないくらいの美しさを持っていますっ!」
と、湯あみ係の2人が立ち上がって主張し始めた。
え、フォローするのそこ?いやでも、フォローありがと。
まてよ?もしかして磨きたいだけじゃないかな、二人とも。
そうか。そんなに自分の仕事に誇りを持っていたんだね。私がめんどくさいからいらないとかわがまま言っちゃだめだったんだね。
そういえば、本にも書いてあったな。仕事を作るのも、上の者の役目だと。
自分の仕事にプライドを持っていますからね。磨かせてあげてっ!
そうだ、時々名前の読み方を書くと言っていたの忘れててごめん




