猫に小判のようなコロッケ
「何すっとぼけてんだ。さっき、仙皇帝宮を目指すって言ってたじゃねぇか。ったく。せっかく俺の嫁にしてやるってんのに」
いやいや、いろいろ突っ込みどころが満載のこと言ってますけど。
とりあえず順番に。
「仙皇帝宮を目指すと確かに言いましたが、それは仙皇帝宮で働けたらいいなぁって意味ですよ。そうだ、レンジュなら、どうすれば仙皇帝宮で働けるようになるか知りませんか?」
レンジュが苗子の顔を見た。
「おい、なんだ、この姫。なんで仙皇帝宮で働きたいとか言い出してるんだ?普通後宮にいるんだから仙皇帝妃目指すもんだろ?」
「私にも分かりません……。働きたいなんて私も今聞いたところです」
二人のやり取りももっともだ。
「私も、さっきそう思ったばかりなんで。妃になる姫の侍女にしてもらえばいいのかな?とすると、他の姫と仲良くなって、仙皇帝妃になったら侍女として連れてってとお願いできるような立場になっておけば……それとも、有能な人間として必要とされればいいのかなぁ。採用試験とかあれば絶対に受けるんだけど……ああ、でも試験内容がレンジュみたいな身体能力なら受かりそうもない……体を今から鍛えれば多少は合格する可能性が……」
ぶつぶつと独り言をつぶやきながら真剣に仙皇帝宮で働くための方法を考えてる私を、苗子とレンジュはかわいそうな子を見る目で見ている。
なんで?
うーん。やっぱり、一目置かれる人間になるべき?
ああ、それとも、呂国の姫という地位を利用して働かせてといえば何とかなる?いや、そんなことで仙皇帝が許すわけないか。
そもそも呂国とのつながりは切ったほうが働かせてもらえそうだよね?
呂国の者だけ働かせると不公平だと他の国が言い出しかねない。うーん。むつかしいぞ。
やっぱり、一番いい方法は……。
仲良くなった姫が仙皇帝妃になって、私はそれに侍女としてついていくということだよね。
よしっ!
「集合集合!使用人みんな集めて、会議を開きますっ!」
「は?会議ですか?」
苗子が首を傾げた。
「朝食を食べながら、まぁ話をするだけだから。全員の分の朝食を並べて……えーっと、皆は使用人用の食堂で食べてるんだっけ?私もそっちに行くから」
レンジュがぶはっと笑い出す。
「お、お前、正気か?使用人に交じってご飯食べるとかっ!あはははははっ」
「あれ?普通じゃないんだっけ?昔から本を読んでいて気になる食べ物があると、調理場にすっ飛んで行って作ってもらったり一緒に作ったりして、そのあとでみんなで味見したりしてたからなぁ……」
こてっと首をかしげる。
レンジュがああと、手を打った。
「そうだったな。昨日のコロッケもうまかったぞ。うちの猫も気に入ったようだ。また何か作ったら教えてくれ」
ぽふぽふとレンジュさんが私の頭を撫でた。
ん?
猫にコロッケ?
猫ってコロッケ食べたっけ?というか、食べさせてもよかったんだっけ?




