宦官だもの
「あたなも、呂国の人なの?」
懐かしい髪の色を見て、心がふわりと温かくなる。
懐かしいと言っても、まだ呂国をでてから3日なんだけど。生まれてからずっと黒い髪の人の中で育ってきたから、3日も黒髪を見なかったのですごく懐かしい気がする。
「あ?ああ、そうかお前、黒の姫だったな。黒髪なんて見慣れてるか。不吉だと言うはずもないな」
「不吉どころかラッキーだわ。仙山に来て初めて見たもの。嬉しい」
私の言葉に、かさりと葉が揺れて、木々の間から黒い髪の顔が現れた。
木に上っている。5mくらいの高さだろうか。私からの距離は7,8mほどあるので顔はよく見えない。
「ちょっと元気になったみたいだな。僕の髪の毛の色が役に立つことがあるとは思わなかった」
ああそういえば……。
「あの、別にいじめられて泣いたわけじゃないので、えっと、心配してくれてありがとう」
「ん?いじめられたわけじゃないのか?黒目黒髪というだけで、心無い言葉を言うやつや、お前のことを見下したような目をする人間がいるだろう?」
ああ、もしかしてそういう思いをしてきたのかなぁ。
私はずっと呂国だったから、そんなこともあるというのは本の中の知識としては知っている。
彼は黒髪の少ないこの仙山で、そんな人たちに嫌な目にあわされ続けてきたのだろうか。
「お前じゃなくて、私の名前は鈴華よ」
「俺は……豹……いや、マ、猫龍、マオとでも呼んでくれ」
マオか。
木の上にいるあたり、本当に猫みたい。ふふふ。
「いじめられたんじゃないなら、何で泣いたんだ?辛いことがあれば改善するように言うぞ、その……お前にはまだ後宮にいてもらいたいからな」
後宮にいてもらいたい?
そうね。黒髪がいないと寂しくなるよね。って、まぁ私がいなくなっても次の黒の姫が選出されるだけだけど……。
庭に出てく物好きとは限らないか。毛虫が~とかミミズが~とか言って妹たちもあんまり外に出るのが好きじゃなかったもんね。
「改善するように言うって誰に?」
がさりと葉が揺れる。マオが体を動かしたようだ。
「そ、いや、あーっと、ほら、あれだ」
ん?何か焦ったような物言い。表情は見えないけど、焦ってるの?言葉が出てこない?
あ、もしかして。
「マオも宦官なのね?」
「へ?」
「だから、仙皇帝陛下にお目通りできる立場ってことでしょ?」
マオがあーっと声を上げた。
「そうか。ああ、そうだな。うん。宦官……ということにしておけばいいのか」
は?
(´・ω・`)はい。慰め感想ありががとうございます。
てなわけで、本日2本目となってしまったのですが、ぐぬぬぅ……




