めんといえば
「そちらの服は綿ですが、超長綿が使用されております」
私が手に取ってじっくり見ていたとおもったのか、苗子が説明してくれた。
「ちょーちょーめん……?」
音を聞いてピンと来なかったけれど、綿関係の本を思い出してハッとなる。
「ああ、もしかして、超長綿?初めて見たわ。本で読んで知ってはいたけれど、貴重な綿なのよね。綿なのに光沢もあってとても丈夫だと……へぇ、これが超長綿なんだ。うん、確かに私の知ってる綿よりも光沢がある。いいわね。綿は好きなの。シルクってなんかこう、つかみどころのないしゃららとしたところがなんかね、肌にまとわりつくような感じもなんかね……。
ふっと苗子が笑った。
「え?何かおかしなことを言った?」
「いえ。衣装のデザインを見て好きだとか気に入らないだとか感想を述べる姫様はいましたが、材質に関してそこまで関心を持ったのは鈴華様が初めてです」
んー、そうか。
「ほら、私猫背で醜女の年増でしょ?何着たって一緒だから」
へらっと笑うと、苗子がむっとした表情を私に向ける。
普通は使用人が主に対してこのような表情を向けることは不敬とも取られる。一応、こんな私でも呂国の王女だからね。
でも私は使用人との距離がある方が嫌なので、こうして感情を見せてくれるのは嬉しい。受け入れてくれたと思っていいのかなぁ。
へらり。
嬉しくて思わず顔がにやけてしまうと、さらに苗子はむっとした表情を向ける。
「鈴華様を馬鹿にする人は私が許しません。鈴華様も、猫背はもっと意識して直すようにしていただきます。年増年増と言いますが、私と1つ違いの26歳とはいえ、見た目は私よりも5つは若く見えるんですから、馬鹿にする方がどうかしています。それから、鈴華様は決して醜くはありませんわ!きちんと髪を整え肌や瞳や髪の色に合う衣装を身にまとい、目鼻立ちを際立たせるメイクを施せば……」
苗子が、私の肩をぐっと後ろに抑え、背筋をピンと伸ばさせ、それから前髪をさらりと上げて、目、鼻、口と指さしチェック。
「まずは、肌に合う色を探しましょう。黒はもちろん鈴華様に合うのは間違いありませんが、赤……は、どちらかといえば合わせにくい色ですね。それから」
と、苗子が箪笥から服を何着も取り出し私に合わせていく。
「ま、ま、待って、待って、えーっと、その、ごめんなさい、年増だからとかとかえっと、ただの言い訳で、本当はファッションとかおしゃれとかよくわからないというか、興味がないというか……」
「大丈夫です。分からなくても、私が……私たち黒の宮に努める人間はプロフェッショナルです!」
うひーっ。
苗子の勢いが止まらない。
「ご、ごめんなさい、いえ、あの、興味がないというのも嘘で、その……め、めんどくさいので、どうでもいいんですっ」
後ずさって後ろにあるベッドにけっつまづいてベッドに座り込んだ。
「め、めんどくさ……い?」
苗子がショックを受けた顔をする。
「せっかくの素材をお持ちなのに……磨き上げればどれほど素敵になるかと……私の楽しみを……」
は?
楽しみ?苗子の?
ごめんね。たぶんそんなに変わらないと思う。
いつもありがとうございます。
えーっと、ここ1週間ほど、体の調子が悪くて執筆進んでません。ストック消化したらどうなるかなーと、ひやひやしてます。早く体の調子が戻るといいな。はー。
さてと、ちょーちょーめんの服が家に一つだけありましてね。
これはちょーちょーめんという高級なと言われてもなぁ、作中では他の説明に会ったように光沢がとか書いてるけど、綿だぜ?どう見ても、綿。




