笑い
ダンダンダンと、続けざまに机をたたき、体を折り曲げて、変な声を出している。
「ひぃーっひっひっひ、ひひひっ、ひひひひっ、ははははははっ、やばい、やばい、やばいって、まさか、パンとジャガイモに文句をつけるどころか……喜んで食べたかと思うと、それで自分で料理して、皆にふるまうとか……、ありえないっ、ひひ、ひひひっ、ははははっ」
えーっと。
どうやら、大笑いしているようです。
「それも、はーは、くくくっ」
息を整え、何とか笑いをおさめたレンジュが私を見た。
「美味しいんだからな。馬鹿みたいにうまい」
褒めてもらえるのは素直に嬉しい。
「はい。美味しいですよね。呂国では里芋を使ってコロッケを作るんですけど、ジャガイモを使うとまた別のおいしさがあって、いくつでも食べられそうです」
レンジュさんにもう一つどうかとコロッケを差し出すと、大きな手が私の頭にのった。
「もう、仙皇帝の妃なんて目指すのやめろよ。俺の嫁にしてやる」
ん?
「レンジュっ!何を言っているんですかっ!」
苗子が大慌てでレンジュさんを怒鳴りつけた。
首をかしげる。
「あの、レンジュさんって宦官ですよね?宦官も結婚できるんですか?」
本にはそんなこと書いてなかった。
「あ?ああ、宦官か。そうだった、そうだった」
なんか、すっかり忘れてたみたいな顔をしてニヤッと笑うレンジュ。
「じゃ、宦官辞めるわ。だから、お前もここ出て俺の嫁になれ」
「レンジュっ!あなた、なんてことをっ!」
苗子が血管が切れそうなくらい怒ってレンジュさんに詰め寄る。
「宦官って、やめることができるの?それって、どういうこと?本には書いてなかったんですが、まさか、その、また生えてくるんですか?それとも手術をしてもとに戻すとか?ああ、気になる。そのことが書いてある本はどこかにあるのかしら?ないなら、その、やめるときは教えてください。あの、どうなるのか、教えてほしいというか……あ、見せてくれとまでは言わないので」
と、詰め寄ると、レンジュさんがおびえて苗子の後ろに身を隠した。
「すまん、聞かなかったことにしてくれ、な?俺は宦官だった。宦官辞めるとかできなかったわ。あ、はは、これ、もらってく。じゃあな!用事がある時はこいつを鳴らしてくれ」
レンジュが、ぽーんと大きな鈴を一つ投げてよこした。
リーンと1回だけきれいな音を鳴らして私の手に収まる。
両手に収まった鈴から視線をあげると、レンジュの姿はすでになかった。天井裏?と、見上げる。
「ああ、コロッケがっ!」
苗子の悲鳴に視線をテーブルに戻すと、コロッケがすっかりなくなっていた。
「レンジュめ!全部持っていくことないのにっ!」
「ふふ、苗子、また作ればいいじゃない。パンとジャガイモなら、すぐに手にはいるのよね?」
調理場にいる人に尋ねる。
代表して一人の女性が首を縦に振った。
「仕事を中断させてしまってごめんなさいね。夕飯楽しみにしてるわ」
と、皆に挨拶をして調理場を出る。
メリークリスマス!
今日の夕飯にコロッケはいかが?




