実食
ジャガイモだとどんな味になるのか。本当は山椒を使うんだけれど、山椒の代わりに風味の弱いイヌザンショウを使ったので、どんな味になったのか。
「ほぐっ」
口に入れた瞬間、頬っぺたが落ちそうになった。
里芋コロッケも美味しいけれど、ジャガイモで作ったコロッケ……。甘味があって、ほこほこで、外のパンを削って作ったパン粉がサクサクで。イヌザンショウの風味は強すぎずジャガイモの甘味を引き立て。
「美味しい。苗子も食べて。故郷では里芋料理なんだけど、ジャガイモで作っても美味しい」
進められるままに、苗子もコロッケを口に入れた。
「こ……これは……」
苗子の目が細められる。
「美味しいです。鈴華様……なんと、美味しい……」
うっとりという表情。うん、だよね、美味しいよね。ジャガイモで作ったコロッケ、すごいっ!
いつの間にか、興味を持った料理人4人に囲まれていた。
「あ、皆さんもどうぞ」
と声をかけると、一斉にコロッケに手を伸ばす料理人。
「はぁっ」
「ほぉっ」
「ふぅっ」
「へぇっ」
と、それぞれが目を見開いて口の中に入ったコロッケを味わっている。
「な、なんと美味しい……」
「コロッケ……という名前でしたか?初めて食べました」
「素晴らしい味……まさか、ジャガイモとパンでこれほどのおいしいものができるとは」
と、料理人たちが口々にコロッケの味をほめている。
ですよね。コロッケ美味しいですよね。里芋コロッケも美味しいんですよ。あと、世の中にはサツマイモという芋もあるそうですが、サツマイモでもコロッケを作ってみたいなぁ。どんな味になるのか。
「パンとジャガイモを持ってきてくれたレンジュに感謝ね!」
ニコニコと笑ってそういうと、後ろからレンジュのあきれた声が聞こえる。
「は?俺に感謝?いやいや、パンとジャガイモを持っていって感謝される意味が分からないんだが……」
レンジュは銀のドーム型の蓋が乗ったお盆を持って現れた。
「レンジュもどうぞ」
と、揚げたてのコロッケを差し出す。
「は?なんだこりゃ?」
レンジュは、皆がコロッケをおいしそうにほおばっているのを見て、口に入れても大丈夫と判断したのかぱくりと一口で半分食べてしまった。
「むっ」
レンジュが顔をしかめる。
熱すぎたかな?揚げたてコロッケをあんなにたくさん口に一度に入れたら……。
「むむむっ」
レンジュはうなったまま、残りのコロッケを口に入れた。
「うはー、おい、これなんだ?」
「コロッケですよ。レンジュの持ってきてくれたジャガイモとパンで作ったんです。美味しいでしょ?だから、持ってきてくれてありがとう」
レンジュが唖然とした表情で私を見た。
「いや、パンとジャガイモの味じゃないぞ?」
「ああ、味つけに庭に生えていたイヌザンショウの実を使いました。あと、灯り用の菜種油で揚げたので、油の味もしみてますよね。だけど、ほぼパンとジャガイモですよ?」
レンジュさんがダンッと大きな音を立てて机をたたく。
ちょっと、何するんですかっ!
ご覧いただきありがとうございます。
イヌザンショウっていう木が実際にあるそうです。山椒の弱らしいですが、残念ながら実物を見たことがなくて。ご存知の方教えてください。
さて、コロッケ。里芋コロッケは食べたことがありますが、あれ、形はコロッケだけど、ジャガイモサツマイモ南瓜とは別のジャンルでした。
レンジュの笑い上戸キャラは、別作品短編の「貧乏国の~」のドーンを書いてて「ああ、こういうただただひたすら笑うキャラもいいなぁ」と思ったので出してみた。
引き続きよろしくお願いします(*'ω'*)




