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鈴華、黒の宮に降り立つ

「あなたが、新しい黒の姫でいらっしゃいますの?」

 綺麗。

 思わず目を覆う長い前髪の隙間から、目の前の女性の髪を見つめる。

 本を読み過ぎて視力が悪くなってからは、目を細めないとよく見えないことが多くて……。

 睨んでるって言われるから、前髪を伸ばして目を隠すようにしたんですよ。これで、目を細めてきれいな女性の髪をじっくり見られます。

「何かおっしゃいなさい」

 むっとした声が聞こえた。

「あ、ごめんなさい。あの、綺麗なので見とれてしまいました」

 と、素直に答えれば、目の前の女性は怒ったような表情を見せる。

「なんの嫌味かしら?」

 嫌味?

「嫌味でも何でもないのではありませんか?黒くて醜い国の姫が見れば、あなたのそのやたらと主張がうるさい真っ赤な髪も綺麗に見えるのかもしれませんわよ?」

 後ろから別の女性の声が聞こえてきた。

「はい。私の国……呂国では黒目黒髪の人間ばかりで……初めて赤い髪を見ました。とても綺麗です」

 赤い髪ということは、朱国の姫だろうか。

「あらぁ、それはよかったわね。血の色みたいで不気味だと言われる赤毛も、真っ黒で汚らしい黒の姫には美しく見えるようで。ふふふ」

 私の後ろから現れた女性が、朱国の姫の横に並んだ。

 なんと立派な髪をしているのだろう。

「まるで、日の光を受けてキラキラ輝く秋の稲のような素敵な色」

 金色でピカピカだ。

 私の言葉に、ぷっと、朱国の姫が噴き出した。

「稲の色ですって。稲。ふふふ、よかったわね。素敵な稲の色っ。ふふふふ」

 金の髪の女性……。金国の姫が振り返り、手に持っていたセンスを私につきつける。

「闇色、不吉色を持つあなたが、仙皇帝陛下のお目に留まることなんてありえないでしょうから、一つ忠告させていただきますわ」

 忠告?

 なんだか後宮の女性は競争心ばかりむき出しで、人のことを思いやるような人はいないと妹に聞いていたけど、親切な人もいるんじゃない。

「その汚い黒い髪で顔を隠しているということは、よほど醜い容姿をしていらっしゃるんでしょう。容姿に関しては仕方がないとは思いますわ。かわいそうですわね。同情いたします。ですが、なんでしょうね?その猫背。みっともない姿勢。姿勢くらいは直しようがあるでしょうに。どこまでも醜い」

 うっ。

 目が悪いため本を読むときに背中を丸めていたから、猫背になってしまったのは本当だ。そんなに見苦しいのかな?

「仮にも、仙皇帝陛下の妃候補が集うこの後宮にそのようなみっともない姫を送ったと知られれば、呂国は陛下の怒りを買うこと間違いないですわ」

 へ?

「あの、妹……ああ、1週間前までいた私の前任者の呂国第3王女に聞いた話なんですが、陛下は後宮には姿を現さないっていう話ですよね?」

 新しい仙皇帝陛下が即位して30年。妃選びのために、8つの国から平等に姫が一人ずつ後宮に入っている。

 寵愛を得られた国は栄え、怒りを買った国には災害がある。

 姫は、だいたい1~3年ほど後宮に滞在し、陛下の寵愛が受けられなければ別の姫と交代していく。

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